第3回ジャパンアクションアワード2015

今年もお手伝いしてきました。
本当に毎年ですが・・・最初7分巻きだったのに気がつけば15分押しってどういうこと?って感じです。舞台でのインタビューがたくさんありお話をうかがってるうちに押してしまうという。ヤキモキしていらしただろう裏方の皆さん、毎度毎度すみません。

アワードの受賞結果はこちらから。このたくさんの受賞から見事MVPに選ばれたのは、『るろうに剣心 京都大火編伝説の最後編』。

受賞されたみなさん、本当におめでとうございます!

追記:この日、受賞された方のコメントで非常に印象に残ったのはベストスタントマン賞を受賞した日野由佳さん。
「自分は特に運動神経がいいとか思っていないし、どちらかというと度胸だけでやってきたようなものです。自分にはできないなんて思わず、もし興味があるなら是非覗いてみて欲しいです」というようなことを仰っていました。
後から聞いたら実は佐久間さんも同じような事を言おうと考えていたそうです。香港もそうですが、日本も人材不足だそうで。色々な団体でワークショップのような事は行われているし、見学もさせてくれると思います。興味のある方は一度ネットで検索してみてください。

ところで10時に会場入りして、17時50分からの本番まで結構な時間があるはずですが、それまでにやること一杯で(リハーサルをしっかりやってその上に変更が直前なのでそれに対処、登壇者への質問事項その他の整理など。自分の要領が悪いんでしょうなきっと)女性陣は同じ控室なのでともかく、ほかの受賞者やゲストは入り時間がバラバラなのもあってご挨拶する暇も実はないという。着替えるのが精一杯。
そんななか、一緒に司会をしてくださった高瀬道場の高瀬将嗣さんにいつも助けて頂いてばかりで。ありがとうございました。

でも最後は、凄いもの見られましたからね。驚きました。
ラストを締めくくったのは「1分勝負、連続階段落ち」
しかも登壇(?)したのは、全員トップクラスのスタントマンプラス、バリバリのアクション監督殺陣師。わははははは。谷垣健治さんとか辻井啓伺さんとか横山誠さんとか森聖二さんとか、もう現場ではスタントをすることも滅多にない人達。しかもパッドなしで階段落ち。あなた達、頭おかしいです(笑)

谷垣さんは顔に数か所怪我を負い、血が出てました・・・・。

↓その世界でも類を見ないすごい階段落ちはこちら

ちなみに、落ちたのは
谷垣健治アクション監督
富田稔アクション監督、スタントマン
矢部大(株)ワーサル代表取締役
森聖二アクション監督、俳優
佐久間一禎スタントマン
荒川真スーツアクター、プロレスラー
横山誠アクション監督
加賀谷圭殺陣師、俳優
佐藤健司スタントマン
辻井啓伺アクション監督
の、みなさん。記録は1分間に34人でした。
心からお疲れさまでした!本当にすごい、というかやっぱヘンです!みなさん!

終了後は、打ち上げに参加させていただき、2次会にもズーズーしく入れて頂き最後はもう酔っぱらってなにがなにやら。どうやって帰ったのか、帰宅直前なぜか自宅から少し離れたコンビニで買い物していることしか断片的に記憶にない。これで50すぎの大人ですよ、いいのかそれで??
ひょっとしてどなたかが送って下さったのか、すんごいご迷惑かけたのではなかろうかと翌日恐る恐る谷垣さんにうかがったら「バルト9の前でタクシーに乗って帰りましたよ!」というご返事。ああ、よかった。
そのグズグズな酔っぱらいはこんな感じ。
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辻井啓伺大先生と

第3回ジャパンアクションアワード2015
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実はこの日の階段は高瀬道場の劇場公演『激闘新撰組 男涙の階段落ち』で使っている物。
この公演は2015年5月5日(火・祝)15時から江東区文化センターホールにてあります。チケット発売中。
激闘新撰組 男涙の階段落ち

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妻への家路(2014年、中国)

純愛はかくも厳しくそして強い

素敵な映画でした。以下はとてもネタバレ。好きだからブログに書いてますが自分は中国映画はおろか香港映画のことも実はよく知らないので主演の1人、チェン・ダオミンさんのことは『インファナル・アフェアIII 終極無間』の印象がまったくない・・・すびばせん(いきなり枝雀)。なので実質『HERO』で観て以来となります(これは名優と謳われるにふさわしい演技だった、めちゃ男前だし)。コン・リー(鞏俐)さんは何作か観ています。彼女を初めて観たのは『紅夢』、1991年のチャン・イーモウ(張芸謀)監督作でした。

この映画に関する個人的最大の印象としては、不思議な事にタイトルがまったく覚えられなかったこと。原題は「帰来」。邦題は『妻への家路』
妻への旅路→妻への帰路→妻への帰還→妻への帰途。これ全部私が検索したワードです、ぶっちゃけピンポイントで「家路」だけ何故か全然思い出せなかった、まるでドツボにはまったクイズ番組のようでしたよ(しょっちゅうある)、いや、ほんと、まじヤバいっすよ・・・。

そんな事実があったせいでしょうか、コン・リーが夫の名前をプラカードに書こうとして漢字を思い出せないシークエンスでは異常に反応してしまいましたわ。

監督チャン・イーモウはゲリン・ヤン(厳歌苓)の小説『陸犯焉識(The Criminal Lu Yanshi)』からエピローグの部分を抜き取って映画にしました。自分は未読なのですが、この原作実はチェン・ダオミン演じるルー・イエンシー(陸焉識)が文化大革命で糾弾され逮捕される前から物語は始まるそうです。何故、そこからエピローグだけを抜き取ったかはこちらのインタビューで監督が語っています

文化大革命、通称「文革」のことは真っただ中当時何ひとつ分りませんでしたが、恐らく中華人民共和国を多分最初に意識したのはBBCのテレビシリーズ『空飛ぶモンティ・パイソン』の1976年日本初回放送でしょうか。そのなかで毛沢東を比喩したテリー・ギリアムのアニメが何度も流れたので意味は分らなくとも、ただならぬことになっている国なんだろうということは子供ながら薄っすらと感じていました。

当時はまだ竹のカーテンなどと言われ中国の実際の様子は日本でほとんど伝えられなかった時代。それからすぐに江青、張春橋、姚文元、王洪文の四人組が逮捕され、そんなことも忘れかけた頃、毛沢東の妻江青が死刑判決を受けたニュース映像で彼女が、日本で言うところの廷吏に引きずられながら「私に過ちはない。もしあるとすれば、ただひとつ、それは権力闘争において、おまえたちに破れたことだ!」(この言葉は後から補填)と叫び続けた姿を強烈に覚えています。

その後徐々に文革のことが日本でも報道され、自分も1984年にドキュメンタリーの仕事で中国の雲南省昆明、西双版納タイ族自治州と北京、上海、大理、広州と1か月間にわたって滞在していたことがありました。その時の通訳兼ガイドとして一緒だった2人のうち男性は元教師で、この映画の主人公ルー・イエンシーと同じように弾圧され後に釈放されたお1人だったのでしょう。その時の心の傷はまだ癒えずに生々しく残っていたはずで、まして外国人相手です、1か月ご一緒でしたがご自身のこと特に過去については話したがりませんでした。

もう1人は女性で、今思えば年齢的に、都市の青少年を地方農村に送り込み肉体労働を義務付け思想改造を実践した文革時代の過剰な政策「上山下郷運動」(じょうさんかきょううんどう)によって「下放」された経験を持つ人だったのだと思います。私が日本から持ってきた猫がプリントされたTシャツ(当時は人民服を着た人達が北京や上海にもたくさんいて、なるべく地味な物を選んだつもりだった)を渡すと「外では着られないので自宅で着ます」とおっしゃり、それに不思議そうな顔をしたんでしょうね、「ただでさえ外国人と一緒にいる仕事なので、あまり目立つ事をすると“精神汚染”されているとすぐ言われてしまうんです」と付け加えました。同じ女性同士だったので彼女とは様々な話をしましたが、その最初の軽いパンチでなんとなく経歴を聞いては迷惑なのかもと感じたことを思い出します。

映画の話に戻ります。

監督はルー・イエンシーという当時の知識人が、文化大革命というとてつもない荒波にさらされ長い時を経てやっと家路につくまでを描いた大河小説の最後の部分に絞って映画化。理由はいくつかあるようですが、結果それで共感されやすい美しい純愛の物語として昇華されました。

文革とは家族が物理的に離れ離れになるだけではない、全ての文化精神を破壊し尽くし、それだけでなく社会にとって根幹を支える信頼のすべてを崩壊させ、事実だろうと嫉妬ややっかみからくる事実無根だろうと構わず隣人を密告し同僚を密告し友人を密告し生徒が先生を密告し子が親を密告するという底知れぬ恐怖の世界を産み出したのです。

自分が泣いたのは娘丹丹の「わたしが父さんを密告したの」という告白に「知ってるよ」となにげなく父が答えた言葉に娘が涙するシーン。彼女が赦されたこの場面はこの映画の1つのハイライトでありました。

しかし同時に妻は夫のことだけを思い出せず、彼は昔よく弾いた曲をピアノで演奏することで妻の記憶を呼び戻そうとする。次第に蘇る妻の記憶。しかし顔を見合わせ涙をこぼす夫婦の表情に次の瞬間浮かぶ拒絶とそれに対する絶望。名演技すぎ。

あろうことか彼女が勘違いしているのはかつて権力を楯に暴力と性的に虐待した党の幹部だった「方さん」という男。中盤明らかになるこの設定には胸が詰まります。結局彼女は最後まで赦しを得ることも癒されることもなく、ひたすら夫の帰りを待つという哀しみの時間を繰り返すしかないのです。

夫はその方という男に復讐しようとおたまを持って自宅まで訪ねてゆきます。しかし、男は文革後の揺れ戻しですでに粛清され逮捕されている身でした。

救いは夫が、決して方ではなく「手紙を読む人」としてでもいいから彼女のそばに寄り添い続けようとする姿です。涙ぐましいまでの努力の行きついた先にあるラストシーンは静かながら圧巻。

チェン・ダオミン、コン・リー、そして娘を演じたチャン・ホエウェン(張慧雯)この3人の演技を見るだけでも自分にはお金を払う価値は充分にありました。この文革という時代を見事な純愛の物語として紡いだチャン・イーモウ。すべては結果オーライ。次作はマット・デイモン主演の超大作らしいですがまたコン・リーと小作で組む時がくるのを楽しみにしています。

妻への家路公式サイト

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罪のてざわり(2013年、中国・日本)

実は・・・現実の方がもっと恐ろしかった・・・

前々から観たいなと思っていたジャ・ジャンクー(賈樟柯)監督のこの作品。やっと観ました。
監督の事はよく知りませんでしたが、43歳にして既に3大国際映画祭の受賞歴を持ち、本作ではカンヌ映画祭の脚本賞をはじめ各国で受賞。(監督プロフィール
実際の事件を元に山西、重慶、湖北、広東省と異なる地域を舞台に中国社会の急激な変化の流れにもがく人々の姿を描いた作品です。
監督によると英題A Touch of Sinが示す通りキン・フー監督の名作武侠映画『侠女(A Touch of Zen)』にオマージュを捧げたのだとか。ごめんなさい気がつかなかった・・・。

エピローグ、街頭で演じられる『玉堂春』のことも当然知りません、後から調べてふむふむなるほど、と。「自分の罪を認めるか?お前は自分の罪を認めるか?」と主人公玉堂春を詰問する声とそれを観ている観客の感情のない顔がすごいコントラスト。
あの中に札束で何度もはたかれレイプしようとした役人を刺殺してしまった小玉の姿を捜したのですがありませんでした。最後の最後あそこに彼女を置かなかったのが監督の意図するところなのでしょう。

俳優たちの演技はどれもみな素晴らしかった。が、それ以上に目を瞠ったのが監督のカット割りのうまさ。特にチアン・ウー(姜武)が猟銃をぶっ放す場面は「うお!」と感心するほどでした。タイミング、構図、完璧。変な感想ですがあのエピソードを最後に持ってくればまた違った印象になった気もします。けれど「いや、そうじゃないから」と監督はそんな気はサラサラなかったのでしょうねぇ。

本作は中華人民共和国の現実を描いた問題作ながら当局が公開許可を出して話題になったりもしたんですが、結局は現在も公開延期のままで、あろうことか先にネット上に流出。中国大陸の人はみんな無料で公開前にネットで観てしまいました。当然監督は投資者達に顔向けできないと嘆いたそうです。どころかその後、勝手に地方テレビ局で放映されたことも明らかに。ひぃ~。

中文Wikipediaを覗いたら外部リンクにあった「时光网」「豆瓣」といった映画サイトや凄い数の評が掲載されていたらしい映画評サイトの作品ページもすでに閉鎖され、ユーザーが「なんで削除されちゃったわけ?」と知恵袋みたいなところで質問してるのを見つけましたよ。
当局の怒りに触れ、上映はおろか3年間にわたり制作禁止処分を受けたリー・ヤン(李楊)監督の『盲井(原題)』(2003年ベルリン国際映画祭銀熊賞)ですら堂々とページがあるというのに、です。

『罪のてざわり』映画の内容もさることながら、これを取り巻く現実の方が遥かにずっとずっと恐ろしい。ジャ・ジャンクー監督の心中を察すると心がとても痛みます。

『罪のてざわり』公式サイト

『映画「罪の手ざわり」- 流血のバイオレンスの底で響く大地の鼓動に耳を澄ます(劉燕子:著)
「中国イヤな話」のパッチワーク、映画「罪の手ざわり」を喜ぶのは誰か?(高口康太:著)
中国のリアル社会を描く日中合作映画「罪の手ざわり」=当局が公開禁止に?―中国
問題作の日中合作映画「罪の手ざわり」、公開前にネット流出=監督が謝罪、“操作”疑う声も―中国
中国で公開されない話題作「罪の手ざわり」、こっそりテレビ放映でジャ監督ら困惑―中国

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ザ・トライブ(2014年、ウクライナ)

すんごいものを観ちゃったよ!!

監督、脚本
ミロスラヴ・スラボシュピツキー

制作、撮影、編集
ヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチ

出演
グレゴリー・フェセンコ
ヤナ・ノヴィコヴァ
ロザ・バビィ
オレクサンダー・ドジャデヴィチ
イワン・ティシコ

はわわわわわ。すごいすごいすごい。ぶったまげた。いきなりそんな頭悪そうな言葉しか出てこないけど、ほんと面白かった。

映画って表現は本来無限なんでしょうけど、そこは色々お約束があったりご贔屓さんには甘めに見ちゃったり、溺愛しすぎたりするともう制作秘話とかにまで反応しまくっちゃって(特に自分はそういう傾向は大いにあり)実は受け取る側の心構えも手伝ってやっと成立することも多い。

が、そんなものを軽く凌駕する、というか全身全霊をかけて画面を凝視せざるをえない映画がこの世に誕生したということに驚きです。
2014年公開のこのウクライナ映画は、すべての登場人物がろうあ者で字幕なし吹き替えなし全編手話で語られる作品。それだけでなく、音楽もなければ信じられないほどの長回しで綴られるこれは132分という尺でカット数わずかに34。こんな映画観たことない。

ストーリーはセルゲイという少年がろうあ者専門の寄宿学校に入学するところから始まります。心優しそうな学長がいて可愛らしい年少の少年少女も寄宿するこの学園の学生の間では、暴力と犯罪が支配する階層構造が存在しその悪のグループは強盗売春というシノギで金を稼ぎ他者を従属させる。そのトライヴ(族)の一員になった主人公が見た現実と愛と果てしない絶望。

自分は正直登場人物の誰にも共感はできませんでした。けれどもファーストショットから延々続く長回しと字幕がないゆえに必死に画面から物語を読み取ろうとさせる手法に、あっという間に絡み取られてしまいましたよ。

透明人間になってみたい、そんな願望を持ったことはないでしょうか。
この作品はまさに、自分が透明人間になって彼らの過酷な日常を見ている、そんな奇妙な気分にさせてくれます。しかもこの映画では透明人間である自分にもどこか立ち位置を与えるような余白が残っている。共感できないのにその感想も不思議だけれど、恐らくは気の遠くなるようなワンシーンワンカットというヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチの執念深いカメラワークによるところが大きいのかもしれません。
そしてこの奇妙さに衝撃を加えるのが、言葉を喋らない彼らが激昂したときやセックスをした際に発する喘ぎや息遣い、そして彼らには決して聞こえていない生活音。音楽を一切排除したために彼らの感情を代弁するかのような音が常に響いていて、特に闇医者で堕胎する少女の苦しみの呼吸音とラストでのあの音はエンドロールで遠ざかる足音とともに長く重く心に尾を引きます。

2014年のカンヌ映画祭批評家週間グランプリをはじめ数々の映画祭で受賞した殺伐としながらも美しく壮絶なこの作品は、2015年4月18日より渋谷ユーロスペース、新宿シネマカリテ他全国順次公開。

ザ・トライブ公式サイト
公式Facebook

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スペシャルID 特殊身分 初日舞台挨拶@新宿武蔵野館

世界初かも?スタントチーム7人登壇の初日舞台挨拶
 
2015年2月21日。東京と名古屋で初日をむかえました。私も及ばずながら司会として東京の初日舞台あいさつのお手伝いをしてまいりました。
登壇したのは、スペシャルIDでのドニーアクションチームの日本人スタッフ。スタントコーディネーターを務めた谷垣健治さん、アシスタントスタントコーディネーターの大内貴仁さん、スタントの佐久間一禎さん、日野由佳さん、富田稔さん、柴田洋助さん、佐藤健司さん。

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(後ろ左から柴田、大内、富田、飯星、(ドニーさん)日野、前方左より佐藤、谷垣、佐久間)

んんんー、映画の初日舞台挨拶にスタントチームが登場するなんて多分世界でも類を見ないかも。おもしろすぎる。とにかく控室から賑やか、そして人の話をみんな見事に聞いてない(笑)。登壇5分前にトイレに行く人あり気が付けば1人姿がないなど、宣伝担当や配給のみなさんが他の作品の初日挨拶とは違う雰囲気に驚いておりました。終了後「舞台裏の段階で飯星さんまるで引率の先生みたいだった」と言われてしまいましたよ(笑)。

さて、その舞台挨拶の内容と、舞台裏で聞いたお話、また終了後谷垣大内日野さんたちとご飯を食べつつうかがったことなどをまとめて記しておきたいと思います。

まず、ドニーさんの現場と日本または他の香港映画との違い。
アクション映画なんだから当然だけどアクションが最優先。上から人がバスに飛び降りるシーンを撮る時は道路を一時ストップして行われました。そういった姿勢環境がまず違う。
そのうえでアクション監督兼主演(おまけに本作ではプロデューサーも兼任)のドニーさんの意見は重い。例えばロケハンが終わった場所でいざ撮影となっても彼が「ココはダメ」と言えば撮影どころか即、スタッフは別の場所捜しのロケハンに出発。

火鍋屋の階段落ちシークエンス、「あれって階段になにか敷いてあります?」と大内さんに聞いたら「全部ウレタンを敷いてあります。そういうところには絶対にお金をケチらない。だからこそ思いきったスタントが皆できるんです」とのこと。

その階段落ちをしたのはスタントマンの佐藤健司さん。
「多分、僕が一番ドニーに怒られたと思います」階段から落ちる直前、パンチ&キックのリアクションに何度やってもドニーさんはOKを出さない。
「もう何がよくて悪いんだかパニックになってしまって」最終的には殴られて思わず手で顔を守ったらOKになったそうです。

谷垣さんいわく「そういう偶然の一瞬を撮るために何度もやるようなもんなんですよ。段取りじゃない瞬間。その積み重ねです」

続いてはその蹴られた直後に階段から落ちるシーン。前のカットで怒られてしまったスタントマンは次で挽回しようといつも以上に頑張ってしまう。「ひょっとしてコイツ無茶な落ち方するかも」と心配したドニーさんが谷垣さんに「大丈夫か」と言ってきたそうです。
そこで谷垣さんが佐藤さんに「靴ひも緩めとけ」と耳打ち。すると見事落ちながら靴が脱げるという合わせ技が完成。彼のスタントのすごさに加え、無茶しなくても視覚効果でOKがもぎ取れるという経験に基づくアドバイスだったわけです。

「ドニーの言うことを聞きすぎるのも考えものでね、たとえば右足を踏み出すのにNGが何度も出て注意されたとする、するとやる方は右足にばかり気がいってしまったりするんですよね。敵よりも右足に意識がいってるっておかしいでしょ(笑)それではOKは絶対に出ない。だったらいきなり右足じゃなく左足を出してみたりするんですよ、するとすぐOKになったりする。それと同じです。僕も慣れてるからドニーの隣で一緒にモニターを見ながら“うわぁすっご!(という多分意味の広東語)”とか援護射撃で言うわけですよ。するとドニーも“おーいいな(という意味の・・・略)”となる(笑)」

このNG地獄はドニー映画初参加の柴田洋助さんもハマったらしく、「何言ってるかまず言葉がわからないし、もうニュアンスで理解するくらいしかなくて」やはり怒られまくって頭が真っ白になってしまうのだそう。
それを乗り越えて出来上がったのが、火鍋屋の厨房でナイフを持った腕をタオルで封じられたと思ったらぐるっとタオルで身体を返されパンチと膝蹴りをドニーさんからくらったうえに、最後は白菜の上で追い打ちに殴られる顔のアップ(これかなり真に迫っててちょっと怖いくらい)という迫力のシークエンス。

そういえば控室で谷垣さんが「(スペシャルIDのポスターを指さしながら)俺らにはこの顔なのに、(ドニー夫妻の写真を見せつつ)嫁にはこの顔ですからね、この人」。

また劇中アンディ・オンのスタントダブルを担当した佐久間一禎さんは、いわばドニーさんとあのラストタイマンファイトを演じたお一人ということになるわけで。

「相手はドニーだし、それだけでもかなり気を遣いますよ」とお話していました。一番NGが出たのは残念ながら本編ではデリートされてしまった五手ぐらいのカット。「最初はドニーからもっと強く殴れとNGが出て、何度か繰り返してその後思い切りやったら“強すぎて次の芝居がすぐできない”と言われ、もうどうしろと。たくさんリテイクしました。20回近くかなぁ」

またNG地獄に陥った際の心境を「撮影現場が建設中の高速道路、後ろは崖っぷち、前方にはたくさんのスタッフ。そして目の前には、あのドニー。ダメだしばかりで落ち込んで、最後はいっそ、こっから飛び降りちゃおうかな、と(笑)」

一方、ヒロイン景甜(ジン・ティエン)のスタントダブルを担当したのは「え?この人が?」と驚いてしまうほど可愛くてちっちゃい日野由佳さん。

「これほど大掛かりなカースタントをしたのは初めてだったんですが、その頃すでに別班で撮影が行われてて、私はカースタント監督のブルース・ロウ班。谷垣さんも大内さんもおらず、イム・ワーさん(ドニースタントチームの古参。本作ではアンディ・オンの部下役で内トラ。あの火鍋屋で大声出す人)とトミー(富田稔さん)だけ。でもドニーさんはいないので和やかな現場でした、怒号もないし(笑)」
バスに飛び移るシーンはブルース・ロウが「危ないなと思ったら跳ばなくていいから」と言ってくれたけれど「いざ走り出したら、やめるわけにはいかないよなぁと思いながら跳びました」

その日野さんとカースタント現場にいた富田稔さん。彼は「落っこち」をはじめとするスタント系が得意で過去ドニー作品では『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』での暗殺隊長に撃たれたシチュでのバルコニーから石段への落っこちや、クラブカサブランカで射殺されたイギリス人としてバルコニーから人力車への落っこちなどがあり、その彼が今度は窓を突き破って車の上に落ちるというスタントをしています。

本来強化ガラスを割って人が飛び出すという撮影ではガラスに弾着を仕込んで人が突っ込むと同時に爆発させてヒビを入れ衝撃をゼロにします。ガラスの硬さに左右されていてはスタントマンは落下点が計算できないから。
最初のテイクではその弾着のタイミングがずれてしまいガラスが割れませんでした。(ここから富田さんに後に確認して訂正したものを再アップいたします)2度目も少しタイミングが合わずに車のウィンドウに上半身が突っ込んでしまったそう。「本当は半回転して背中で車の屋根に着地するはずだったのが、それだと勢いで車から落ちてしまう。慌てて半回転をやめ、そのままなんとか屋根の上に落ちたんですが、実は背中にしかパッドを入れてなくてモロに胸を打って痛くって」

そのテイクは成功したものの、カメラマンであるピーター・パウがもう1カット、アングルを変えてピックアップショットを撮りたいということになり、今度は背中から落ちたものの、その上にガラスが降ってきて顔を数針縫うアクシデント。その後の火鍋屋のシーンでは絆創膏も貼れず、セットに吊り下げられた明らかに腐りかけの肉の塊を前に「変な菌が入らなきゃいいなぁ」とずっと思っていたそうです。

その撮影監督ピーター・パウさん、『グリーン・デスティニー』でハリウッドのアカデミー撮影賞を受賞したお人ではありますが、本作では当然自身でカメラを回し谷垣さんによると「どんな激しいアクションをしても一度も外さなかった(アクション撮影は難しく、動きにカメラがついて行けなくてフレームに収まらないことがあるそう)、さすが慣れてる!」

この作品は撮影開始どころか撮影場所さえ二転三転し、その待機時間にアクション構築に関して様々なアプローチをしたそうです。

たとえばビデオコンテの前の実験的段階として、逃げる人間を大勢で襲い、そのアドリブ的な動きを動画に納め、なかから段取りではなく一瞬の判断で繰り出された「お!」という動きをピックアップ。それを今度は芝居として映画に落とし込めるよう整理してゆく(谷垣さんの言葉だと「フィルム・ランゲージ」)、そんなこともしたようです。

大内さんによると、どんなに考えて準備してもそれでも変更はしょっちゅうで、しかもいきなり。
捜査官X』 では朝衣装を着たら(大内さんはドニーさんのダブルもしていました)唐突に腕を後ろに縛り付けられて「それでやっと片腕になるって知ったくらいですからね(笑)」

本作に関しては最初バスに飛び移るのは女性刑事ではなくドニーさんが(しかも)自転車で跳ぶというアイディアもあったらしい。

スタントマンによるその実験映像は残してあって翌22日から新宿武蔵野館のロビーにて流される『スペシャルID 特殊身分、メイキング映像』には入っているはず!これは谷垣さん所蔵映像で、すでに発売されている香港版台湾版アメリカ版はじめ世界中のどのディスクにも収録されていないまさにお宝映像。これから新宿武蔵野館に行かれる方は是非そちらの方も見る時間を計算に入れて劇場においでください。全部で20分ほどはあるそうです。

上映の合間の挨拶ということで短い時間でのトークでは、それぞれの皆さんがこの映画でどんなシーンを演じたかということを中心にうかがうことしか出来ませんでしたが、スタントコーディネーターのみならずスタントマンとはいえそれらは彼らの仕事のほんのわずかな部分。
本当はもっと多くのお仕事、準備段階でのアクションのためのアイディア出し(その一端はメイキング映像にも現れていると思います)、現場でのワイヤーや安全確認のセッティング、機材の管理、ビデオコンテでは撮影後編集したものに効果音をつけるなど、アクションに関するすべてのことを手分けして担当します。ただ現場で危ないことをするお仕事なだけじゃない、というわけなんですね。

そして谷垣さんが言い忘れた!と後から口惜しがってたのがるろ剣とこのスペシャルIDとの関連性。るろ剣1→スペシャルID→るろ剣2,3という順番で撮影が続いたので、このふたつは互いに非常に影響しあってる部分があるということでした。
「るろ剣で考えたことをこっちで取り入れたところもあるし、またこっちでやらなかった事をその後のるろ剣でやったりとか。自分達にとっては1つの流れがあるんです」と仰っていました。

追記:そういえば以前うかがった話で
ドニーさんが火鍋屋に行く前、車を裏に停め傘を差して裏路地を行くカットがありますよね。あれはドニーさんのアイディアで「ああやって主人公は有事の際の逃げ道を確認してるんだ」というのが理由。
あとデリートされてしまいましたが、雨の乱闘シーンでファン・ジン刑事が到着するや、実はチンピラの1人が仲間達の手にしたパイプや武器をこっそり回収する場面があったそうです。そうすることで彼らの喧嘩慣れしてる部分や自分らの不利にならないように立ち回る姿勢を表現したかったとか。「細かいけど、そういうとこがドニーなんだよね」

そうだ、このスペシャルID 特殊身分のパンフレットに私が寄稿しました原稿が載っています。機会があったら読んでみてください。

PS:京都ヒストリカ国際映画祭で、ウォン・ジンポー監督とご一緒にお目にかかった方のお一人がわざわざその時のお写真を持ってきてくださいました。ありがとうございました!皆さまにもよろしく!

バクサカ関連テキスト
特殊身分 予告篇 ― ドニー・イェン 甄子丹
2013年10月18日『特殊身分』公開決定-ドニー・イェン 甄子丹
続々予告登場『特殊身分』 -ドニー・イェン 甄子丹
特殊身分(特殊身份):SPECIAL ID 2013年・中国)@香港 – ドニー・イェン 甄子丹
・・・と、言ってるそばから特殊身分(特殊身份)
特殊身分・西遊記之大鬧天宮-ドニー・イェン 甄子丹
特殊身分(特殊身份)香港版が届いた。ネタバレ- ドニー・イェン 甄子丹
スペシャルID 特殊身分 日本公開決定 試写に行きました - ドニー・イェン 甄子丹

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おひなさま

お雛様、あなたは男雛をどっちに置く?
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我が家のお雛様。母方の祖母が私の幼少の頃買ってくれたものです。
本当は何段も飾りや人形があったのですが、さすがに全部を毎年出すのは大変なので、ほかは人形供養に出しました。

最近のお雛様ってカワイイお顔したのが主流みたいです。こちらは昭和40年代のシロモノなので結構しゅっとしております。

ところでこのお雛様、男雛(おびな)を左右どちらに置くか知ってます?
売り場に行くとほとんどが向って左に置いてあると思うのですが、それは昭和天皇の即位礼に従ったのだと何かで読んだことがあります。
子供の頃は我が家でもそうしていた記憶ですが、京都でよく仕事をしている頃に、実は古来逆だったと聞き(今でも関西ではそうする家は珍しくない)それから、自分も古い置き方にしております。
刀は左に差してありますからね、なんとなくその方がしっくりくるような。すわ、敵の強襲!なんてときに嫁の方にひらり刀を抜くのはちょっと危ない(ものすごいアクション映画脳)

ところでこれを書くために男雛のつもりで「お内裏様」というワードを検索したら、あの皆が知ってる「うれしいひなまつり」(1936年、昭和11年レコード発売)という歌にある「お内裏さまとおひなさま」という表現は間違いなんだという記事をみつけてビックリ。
本当は男雛女雛の人形一対を指して内裏雛(だいりびな)と言うんだって。また、赤い顔は右大臣でなく左大臣の方。

この歌の作詞家はかの有名なサトーハチローさん。当のサトー先生はこの間違いを相当気にしていたそうで、最後まで「この歌を捨ててしまいたい」と悔やんだそうです。

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KANO 1931海の向こうの甲子園(2014年・台湾)

いらっしゃいませー!!近藤監督、私たちを1931年の甲子園に連れて来てくれてありがとうございました

プロデューサー:
魏徳聖(ウェイ・ダーション)、黄志明(ジミー・ファン)

監督:
馬志翔(マー・ジーシアン)

脚本:
陳嘉蔚、魏徳聖、馬志翔

音楽:
佐藤直紀

キャスト:
永瀬正敏
曹佑寧(ツァオ・ヨウニン)
青木健
坂井真紀
伊川東吾
吉岡そんれい
大沢たかお
謝竣晟(シェ・ジュンチャン)
大倉裕真
飯田のえる
陳勁宏(チェン・ジンホン)
謝竣倢(シェ・ジュンジエ)
鐘硯誠(ジョン・ヤンチェン)
張弘邑(チャン・ホンイー)
山室光太朗
魏祈安(ウェイ・チーアン)
陳永欣(チェン・ヨンシン)
周竣豪(チョウ・シュンハオ)
蔡佑梵(ツァイ・ヨウフォン)
鄭秉宏(チェン・ビンホン)
許亜琦(シュー・ヤーチー)
于卉喬(喬喬/チャオチャオ)
小市慢太郎
斉藤一美
水上善雄
石塚義高
渋谷天馬

KANOを観ました。劇場ではなんというか静かな感情がずっとダダ溢れてきてすごくよかったと思ったのですが、おもしろいことに劇場で観た時より数日たって色々関連動画を見たりエピソードを知ったり、メイキングなどでチーム敵味方関係なくもう一度彼らの顔を眺めていると、もっともっと好きになりました。こんなの初めてです。
台湾で大ヒットしたのも納得だし、日本でも少ない公開館上映回数でありながら満員御礼なのも頷けます。

自分は野球が好きで子供のころからプロ野球高校野球と見てきましたし、甲子園にも数えきれないほど通っています。野球をこれほどまで上手に描写した映画であることにまず驚きました。プレーのひとつひとつに違和感がない。CGってこういうことのためにあるんだよな!と喝采を送りたい。
が、野球を全く知らなくても楽しめると聞いて驚くとともに、誠実な映画作りとこの作品のスピリッツが伝わっているんだなぁと我が事のように嬉しいです。

もう・・・全然うまく言えないけど、素晴らしい映画でした。そして1人で見に行ってこれほど寂しかったこともありません。上映後、とりとめもないことを誰かと語り倒したかった。

こんなにたくさんの登場する人物ひとりひとりに愛着が湧く映画は初めてです、あの田んぼで働くオジサンにも愛着がありますよ!できたら選手の笑った顔やプレーをずっと見ていたかったし、ラスト札幌商業の錠者投手が嘉農のグラウンドのプレートに自らのラッキーボールを置く場面は清々しさを感じると同時に心が抉られるかと思うほど悲しかった。だって彼は軍服に身を包んでいたんだもの。

ありがとうねKANO、近藤監督、監督は選手たちに甲子園に連れて来てくれてありがとうと言いましたね、その言葉はそのままあなたに送ります。映画を観た私たちを1931年の甲子園に連れて行ってくれてありがとうございました。

KANO 1931海の向こうの甲子園公式サイト(情報多し)

関連動画やメイキングがいっぱいyoutubeにあがっています。
ARSFILMPRODUCTION プレイリスト:KANO幕後花絮
このプレイリストでも取りこぼしてる動画たくさんあるなぁ、めんどうだからこの会社の動画全部や!
ARSFILMPRODUCTIONアップロード済み動画

もうね、この曲聴くだけでヤバいです。
【KANO 電影主題曲】/ 勇者的浪漫 (官方全曲MV) -中孝介、Rake、范逸臣、舒米恩、羅美玲演唱

最後に。出演した役者さんはみな素晴らしかったけど、特に伊川東吾さんがよかった。存在感と品ある佇まい目が覚めるようでした。隅々にいたるまでキャスティング最高。

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SHERRY Hong Kong Boys 浮華宴(2015)MV

しぇええええりぃいいい、しぇりっべいべぇぇぇぇぇ♪

レイモンド・ウォン(黄百鳴)の今年の旧正月コメディは、ハーマン・ヤウ監督、ルイス・クー主演『浮華宴』(大陸タイトル:神探驾到)。他にもラム・カートン、エリック・ツァン、テレサ・モウ、チャン・ハン(張翰)クリッシー・チャウ(周秀娜)カリーナ・ン(吳千語)らオールスターズ出演。

前々から、どうやらドニーさんがカメオ出演するらしいという話は聞いてましたが、先日そのキャラクターが発表されました。なななーんと劇中、あのSherryを1人4役で歌っとるじゃありませんか。
《浮華宴》片段 – 甄子丹華麗獻唱 Donnie Yen’s MV “Sherry”

わはははは、ドニーさんに関してはいつもこちらの予想をはるかに上回る現実が待ってる。
心底おもしろいわこの人。

この元ネタはご存知の通り昨年公開されたクリント・イーストウッド監督『ジャージー・ボーイズ』。

60年代から現在まで活動を続けるアメリカのボーカルグループThe Four Seasonsの、結成から成功、その後を描いたブロードウェイ発同名ジュークボックス・ミュージカルの映画化作品。フォー・シーズンズを知らなくても映画ジャージー・ボーイズを知らなくても、この曲は絶対に聴いたことがあるはず、それくらいのスタンダードナンバー。

ドニーさんは1週間の稽古で低音からファルセットまで全部1人で録音して撮影に臨んだそう。

いやー元気出るわ、かなりヘビーローテしておりますよドニーさんのSherry、寿命が延びますなぁ。ヘタってる時に見るべきものがまた一つ増えましたよ、感謝。

ところでフォー・シーズンズのメインボーカル、フランキー・ヴァリといえば超有名曲に『君の瞳に恋してる(Can’t Take My Eyes Off You )』があります。
映画の中でも重要なエピソードを持つ曲として、鳥肌モノのシチュで歌われていましたが、この曲すんごい沢山カヴァーされていて、昔モータウンばっか聴いてた自分はTHE TEMPTATIONS & THE SUPREMESがオリジナルなのかとばかり思っておりました。が、1982年にBoys Town Gangがカヴァーして大ヒット。その時にオリジナルがフランキー・ヴァリと知った次第。いやぁほんと名曲。

80年代世界を席巻したUKポップの人気グループのひとつPet Shop Boysも何気にU2のWhere The Streets Have No Nameとメドレーカヴァーしてるし。が、なんといってもエンゲルベルト・フンパーディンクですよ奥さん!

といいつつも、ご本家フランキー・ヴァリには誰もかなうまい、てか。
Frankie Valli – Can’t Take My Eyes Off You Live (1975)

神探驾到予告feat.甄子丹
ドニーさん練習とSherry完全版
その元ネタ、舞台のロンドンパフォーマンス(メドレー)
映画『ジャージー・ボーイズ』予告
元歌 The Four Seasons Sherry
Can’t Take My Off You – Supremes & Temptations
Boys Town Gang – Can’t take my eyes off you
Pet Shop Boys – Where The Streets Have No Name (I Can’t Take My Eyes Off You)
Engelbert Humperdinck Cant Take My Eyes
↑これ好きなんすよねぇ、ベイベッ↗となるとこが(笑)

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ライズ・オブ・ザ・レジェンド 炎虎乱舞(黄飛鴻之英雄有夢:2014年、香港・中国)

超ネタバレ:その手があったか!黒社会モノ

監督    
周顯揚(ロイ・チョウ)

音楽
梅林茂

動作導演
元奎(ユン・ケイ)

出演
晏彭于(エディ・ポン)
洪金宝(サモ・ハン・キンポー)
井柏然(ジン・ボーラン)
王珞丹(ワン・ルオダン)
梁家輝(レオン・カーフェイ)
アンジェラ・ベイビー
張晉(チャン・ジン/マックス・チャン)
文峰(バイロン・マン)
王祖藍(ウォン・チョーラム)
陳之輝(チェン・チーフイ)

これ日本で公開しますよね、絶対にしたほうがいい。
監督は『殺人犯 』(2009)『狼たちのノクターン 夜想曲』 (2012)のロイ・チョウ。3作目にして巨額のバジェットで黄飛鴻(ウォン・フェイホン)ですか、すんごいなぁ。

この題材って誰しもが頭に浮かぶでしょうが実際にやるとなったら怖気づいて出来ない、そんな作品の1つだと思うんですよね。なにしろリー・リンチェイ(ジェット・リー)のマスターピースにして不朽の名作、どうやったってキャラアクションともにリンチェイのワンチャイを超えることは難しい。それを臆面もなく、なんとエディ・ポンでやるというのですごく楽しみにしてたんです。しかも監督が一癖も二癖もあるお人ですやん。英題『Rise of the Legend』が示す通り、これは黄飛鴻が師父になる前の若き日の物語。

オープニングから雨降る細い路地での大人数相手のアクションシーン。おお、カットは細かいけどアングル凝ってる。が、しかし、のっけからバシバシ人を殺しまくるフェイホン師父に違和感バリバリ。これくらい思いきってやらなきゃ、ぜ―――――――ったいに新作なんて無理ってことですか?か?か?すぐ評価を下すのも何なので、とりあえずこれは一旦保留。

とこちらの動揺も気にせず師父が無双していたのもつかの間、いきなり倒されたかと思ったら少年時代の回想へ。父親黄麒英(ウォン・ケイイン)役はレオン・カーフェイ。ふふふ傘ちゃんと持ってます。傘を使ったアクションも登場するよ、そうこなくっちゃ。父は街角で衰弱した子供を見つけては家で手厚く看病するようなお医者さま。

時は清朝末期、朝廷は腐敗し人々は苦しみの中にありました。広州の黃埔港では黒虎幫(黒虎組)と北海幫(北海組)という二大勢力が港の利権を争いアヘンの密売、アヘン窟や遊郭のしのぎを削り合い、貧しい人々はこいつらに虐げられております。
オープンセットは『孫文の義士団』でお馴染みのあそこ。港の桟橋から人足が天秤棒を担ぎ倉庫に入るのを追ったステディカムが二階に上がり内部を半周し港に面したバルコニーに出るまでの長回し。観ながらあらためて凄いセットだと感心しつつ、エキストラも含めお金かかってるなぁと。

と、フェイホンは阿飛(アフェイ)と名乗り、なんとその黒社会の黒虎組に入っちゃうじゃありませんか。えええええ。そこの親分さんがサモ・ハン。非道な奴です、ドSです。組の若頭にあたる男が3人(一応序列はある)。サモハン親分は入ったばかりの若者達に「北海組の組長の首取ってきたモンは4人目の頭にしちゃるけぇ」と言い放つわけであります。

で、我らがフェイホン師父は信じられないことに、黒虎組の鉄砲玉として敵の親分を強襲、戦って首を取っちゃいます。うっそ!師父!そこで冒頭の雨のアクションシーンへと繋がるわけでありますよ。長い前振りですがこの構成なかなかイケてます。つか、これってワンチャイっつーよか黒社会モノじゃないか!

そう、これは黒社会、しかも潜入捜査官モノなのでした。わははははは。
主人公、黄飛鴻は幼馴染みと計画を練り、人々を苦しめる黒社会の組織をぶっ潰すためわざと手下として潜り込みそこで成り上がったのであります。映画は2時間チョイだってのに正体明かすまで1時間47分もかかったのよ、これは絶対辮髪つけた潜入捜査官映画。そうきましたか、もうね笑いました。香港映画人どこまで黒社会モノが好きなんだよ。

いいところと困ったとこ、2時間の間にぎっしり詰まっておりました。とりあえず箇条書きにて。

まずは困ったところから
・エディ・ポンの身体のラインを見せたかったからなのか、長衫がタイト過ぎて非常にスポーティでした。もう少しゆったりしている方が絶対に魅力的なのに・・・劇中、心の中で「お前ら長衫のセクシーさを分ってないだろ!」と何度も衣装、監督に悪態をついてしまいましたよ。くっ。
・アクションは悪くないのにさすがのエディも功夫ポージングがイマイチ。
『激戦 ハート・オブ・ファイト』であれだけの身体を作りトレーニングをこなし、ファイトシーンも撮った彼はその辺の俳優よりずっと動けます、でも功夫となるとまた違うのかなぁ。経典シリーズと同じ土俵にあがるのは得策でないと考えたのか、アクションはあまり功夫功夫しておりませんでした。
・頼むから無影脚はもっとカッコ良く撮ろう
・一番残念だったのは、サモハンとのラストバトル。ちょっと編集が・・・・。
せっかく炎の中の1対1なのに、間にどーでもいい消火シーンとか手下が逃げるエピとか燃え盛る炎とかのインサートが入ってきてぶっちゃけすごく邪魔でした。いやいやいやそんなとこに挟んだらせっかくのハイスピードカメラの動きのリズムが活きへんやん!とシロートの自分でも思っちゃうほど。これは動作導演ではなく編集段階での監督の意向だったのかなと想像したりして。違う繋ぎだったらもっともっといいバトルになったでしょうにと思うとちょっと勿体ない。

でもいいところも一杯あるよ!
・サモハンすごいよサモハン、若い俳優さんが多く全体的に芝居がちょっと現代ちっくだったけど、サモハンがいるだけでグッと締まる。さすがの迫力。彼だけなぜか辮髪じゃないのに笑った、きっと特殊メイク面倒くさかったんすね。
・美術がお見事。この時代を描くと本当に美術が楽しい。
・『激戦』に続いてエディ・ポンがまた惜しげもなく、その素晴らしい半身を見せてくれます。
自分はムキムキな身体がちょっと怖いので、戦いの最中敵の刀に切り裂かれた着衣の胸元からのぞく谷間、くらいの方が好きです。有難いことにそちらもちゃんとございました。サービスしてんなぁ。やったね!
・そのエディ・ポン動ける頑張ってる!もうすっかりアクション俳優みたいですね。そして爽やか。この人ってどこまで爽やかなんだろう、ほんと驚くわ。
・音楽は梅林茂。とことん梅林節。途中大正琴のような(これ位の音楽センスしかない自分)音色がどことなくゴッド・ファーザーを思い起こさせて潜入捜査官の緊張を引きたてておりましたよ。そして後半ギリギリですが『男兒當自強』もちゃんとかかるよ!!あの梅林茂さんが『男兒當自強』をアレンジしたということだけでちょっと胸アツ。作中ずっと阿飛と呼ばれていたフェイホンが、そこでやっと「私は黄飛鴻だ」と名乗るわけですから、興奮度マックス。じらしやがってぇ~
・一番気に入ったアクションは中盤の、サモハンとエディが復讐に来た奴らと戦うシーン。
ワイヤーはあったけど自分は別にワイヤー嫌いじゃないし邪魔なインサートもなく見応えありました。サモハンはすごい数の敵を相手に縦横無尽に大立ち回り。かっこいい!エディの方は『グランド・マスター』の馬三ことマックス・チャンとのタイマン勝負。決着のつけ方もなかなかよろしかったです。

気がついたこととして、昔の映画のように辮髪の三つ編み部分が後ろで服に縫いつけられていました。最近もTVドラマとかではあるのかなぁ。90年代の功夫映画では(ワンチャイなんかも)みーんなそうしてました。多分、激しい動きのたびに辮髪のしっぽがパシパシ当たって俳優が嫌がるのと、編集時、辮髪がどこにあるのか繋がりに困らない策だったんだと思います。近年はあまりそういうこともなかったので「おお」と即座に反応してしまいました。懐かしいあの感じ。

とにかくなんというか想像とは全く違う展開に、むしろ清々しささえ感じましたよ。
ツイ・ハーク版との決定的な差は、ユーモアが足りなかった事かなぁ。潜入捜査官なんで仕方ないのか。
経典『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』とは違ったものにしたいという考えつくだけのアイディアを取り入れたという趣。そういうのって大抵駄作になることが多いのですが、これは上手にまとまってる。
ひょっとしたらリンチェイ版「ワンチャイ」原理主義の人には不評かもしれないけど、これはこれで別物と捉えれば面白い。というか、この先も功夫映画は制作されて欲しいですもん、こんな大作でコケたらこっちが困ります。

と、いうか・・・・『燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘』を撮った香港映画ヲタクのデレク・クォックに撮らせたらどうだったかなぁ、なんてことも頭をよぎったりして・・・かえって難しくなっちゃうんですかね。

日本でも公開されないかなぁ、みんなの反応が楽しみだ。

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名悪役死す、ダレン・シャラヴィ

あなたの超絶キックは忘れません、イギリスの優れた武術家であり、アクションファンにとっては心から安心できる俳優でもありました。

原稿2本あげてビールなんぞ飲みつつネットサーフィンしてたら、いきなり飛び込んできたニュース。なんと『イップ・マン 葉問』のツイスターことダレン・シャラヴィさんが亡くなったそうです。42歳。早すぎる・・・

彼の映画をそれほど多くは見ていませんが、自分としてはやはり『イップ・マン 葉問』そしてウー・ジンの『太極神拳』でお馴染み。
ユエン・ウーピン監督ウー・ジン主演のこの映画の公開が95年ですから、香港で活躍していた外国人アクション俳優たちと入れ替わるような時期香港に来たのでしょうね。そう思うと彼が「あと10年早く生まれていれば」と思ったとしても不思議はなく、時々切ない気分にさせるお人でもありました。
しかしその能力は単身香港を目指しただけあり、過去、サモハン、ドニーさんをはじめジャン・クロード・ヴァンダムやスコット・アドキンス、マルコ・ラザールというそうそうたる面子と戦い、たとえ短い出番であってもその身体能力が印象に残る本格派。これから公開されるだろう撮影済みのアクション映画も何作か残っているようです。

『イップ・マン 葉問』ではボクサー役だったので残念ながらありませんでしたが、実は彼は超一流のキッカーでありました。初めて彼のトリビュートを見た時の衝撃は自分にとってまさにユン・ピョウ、ウォン・チェンリーに匹敵する素晴らしさ。

年を重ねるごとに演技も佇まいも格段に洗練されてきて、これからもっともっといい役で登場してくるんだろうなという予想をしていた矢先の訃報。本当に残念です。

ブルース・リーに憧れて武道をはじめ、17歳の時にはお母さんからお金を借りてロンドンに赴きそこで行われたドニーさんのアクションセミナーに参加。

恐らく香港行きを後押ししたのはこのセミナーと、それを主催したベイ・ローガンだったと想像します。2010年にはイップ・マンでサモハンドニーと戦えて夢が叶ったと興奮気味にインタビューに答えていたナイスガイ。制作の噂のあるドニーさんの『ヌードル・マン』で今度はキック対決をしてくれたらなぁなどと自分は心秘かに期待したりもしておりました。

ボクサーの役にはボクサーの筋肉があると、オファーがあった際にはその筋肉の付け方にもこだわったプロフェッショナル、優れた武術家でありアクション俳優であったダレン・シャラヴィに心からの哀悼の意を表します。どうか安らかに。

Darren Shahlavi Interview IP MAN 2
DARREN SHAHLAVI new compilation 2011
DARREN SHAHLAVI ACTION MIX 2012
Darren Shahlavi Tribute
Darren Shahlavi interviewed: Ip Man 2 – a dream come true!
↓シャラヴィさんが参加したロンドンのドニーセミナーの様子(スパークリングの相手は若きベイ・ローガン)MLBサンフランシスコ ジャイアンツのスタジャンだけで同年代として微笑ましいっす
Donnie Yen – UK Tour 1991
タイトルには1991とありますが正確には1989年

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