ミッドナイト・アフター(原題:那夜凌晨,我坐上了旺角開往大埔的紅VAN・2014年、香港)

ボヤボヤしてたら、10月24日に日本公開だったのですね、すんばらしい。

今、日本の映画配給会社は、オンライン配信の作品権利を確保するため、2000~2010までなら見過ごした作品も色々買うようになったようです(その分、細々とやっていたスキマ映画狙いの会社はかなりワリを食う羽目に)。まぁ、あくまでも噂ですが。

こうやってフルーツ・チャンのヒット作を日本語字幕で観られるんですからオールオッケーではないでしょうか。林雪(ラム・シュー)ファンは必見!

那夜凌晨,我坐上了旺角開往大埔的紅/VAN The Midnight After』邦題『ミッドナイト・アフター』タイトルは昨年の東京国際映画祭で上映したのと同じにしたのですね。

原語原文では自分は半分もわかってないだろうこの映画の内容、是非とも日本語字幕で観たいものです。クララ・ウェイ姐キはこの映画で金像奨助演女優賞ノミネートですよ、フルーツ・チャンのいいところが発揮されている作品のひとつだと思うので、どうかCheck it out!

香港で観た際のレビュー
日本公開『ミッドナイト・アフター』予告編
『ミッドナイト・アフター』公式サイト

この映画に端役で出てた子が、今後結構なアクションスターになるかもよ!記事

ところでこの後半ってどうなったんでしたっけ???

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神槍手與咖喱雞 (1992年、香港)

トン・ワイ祭り続き。
トン・ワイのことなんか日本であんまり気にする人もいないのではないだろうかと思うと妙に気になってしまう今日この頃。

監督、脚本:
ジョー・チョン(張同祖)
アクション設計:
トン・ワイ(董瑋)、江道海(コン・タオホー)

出演:
ジャッキー・チュン(張學友)
トン・ワイ(董瑋)
ラム・チェンイン(林正英)
オースティン・ワイ(惠天賜)
アルフレッド・チョン(張堅庭)
ロレッタ・リー(李麗珍)
フー・ヨジン(符鈺晶)

1992年ごろというと、結構香港映画も賑わっておりまして・・・私のつたない知識では、アジア系のマフィア様たちがそれこそマネーロンダリングのために香港映画を利用してたとかなんとか。それもアジア通貨危機でオジャンだったらしいですが・・・。

多分、香港のエンターテイメント業界で映画が一番本数作られたのはこの時期なのかもしれません。(違っていたら訂正お願いいたします)

とにかく、そんな景気のいいなか作られた1本です。
監督は、長きにわたりトン・ワイ(董瑋)とコンビを組んできたジョー・チョン(張同祖)。トンさん久々のガッツリ出演の映画となりました。
主演は今も歌神として君臨するジャッキー・チュン(張學友)、そしてそのバディがトン・ワイ。刑事が2人寄ると、タカとユージになるのは宿命(そういえば東映でこの正月に復活するんですよね!)、いや、トミーとマツか。ただ残念な事にこの頃の香港映画ときたら肉弾戦より銃撃戦に重きを置いていたようで、このキャストにしてこのアクションって残念!今となればそう思ってしまいます。

が、そんななかでも一番光っていたのが、オースティン・ワイ(惠天賜)。いやぁ、この寡黙な殺し屋の役は素晴らしかった。今まで見たワイさんの中で一番。このハンサムさんが白や黒のロングコートひらひらさせちゃってね、丈の長い衣裳でアクション好物です、無条件でかっこいい!でもって2人のちゃらコンビの上司がラム・チェンイン(林正英)。ひゃーええですなー。

なかなか思うようなアクションシーンのない中で、このラム先生とオースティン・ワイの対峙するシーンは、すこぶるよろしかった。美しい。互いに「んなあほな」というほどの外連味あふれるガン捌き&身体裁き。ジョン・ウー以降の武侠ガンアクションのいいとこ取りな感じが楽しい。アクション設計は、トン・ワイと江道海(コン・タオホー)。

そういえばこの『男達の挽歌』の動作設計をしたのはトン・ワイ。ブラッキー・コーと務めました。本作のラストファイトもガンファイトながら、2人に1丁の銃、という工夫があって楽しかったです。ジャッキー・チュンを除けば実は「春秋戯劇学校」の同門対決。連続バック宙の練習をしながら、まさか大人になって皆でガンファイトするなんて想像もしなかったでしょうね。

奥ゆかしいトンさんのことなので、バディといえど最後はそれほど目立たずむしろ動作指導に比重は片寄っていたようです。
香港映画界でガンマニアと言えば、今をときめくダンテ・ラム監督がそうだとは有名な話ですが、実はこのトン・ワイも結構なマニアだそうで、どっかの本でそのマニアぶりを読んだ気がするのですが、どの本だったかしかも自分の手持ちの本だったかも思い出せず、実は今に至る・・・。

とにかくあの頃のちゃらい男子はこんな感じ♪という造型にトン・ワイファン(いるのかどうか知りませんが)はハートを撃ち抜かれること間違いなし。メガネがかわいいよ、トン・ワイ。あ、咖喱雞ってのはチキンカレーって意味でそれが好物なトン・ワイのニックネームなのでした。

神槍手與咖喱雞予告

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水兒武士(原題、1985年・香港)

帰って来たトン・ワイ祭り

制作:方逸華(モナ・フォン)
監督:查傳誼(ジャー・チュンイー)
武術指導:林滿華

出演:董瑋(トン・ワイ)
   萬梓良(アレックス・マン)
   惠英紅(クララ・ウェイ)
   莫少聰(マックス・モク)
   梁家輝(レオン・カーフェイ)
   顧冠忠(クウ・クワンツォン)
   傅欣瑜
   簡慧珍(レジーナ・ケント)

トン・ワイの主演映画には結構珍妙なものがありまして。まさにこれはそんな1本。なんといっても無駄にキャストの顔ぶれがすごい。トン・ワイにクララ・ウェイ、そしてきっと滅茶苦茶若いころのレオン・カーフェイ!マックス・モク!!ぎゃーなになに、絶対観る!ってことで。が、ショウブラ武侠映画なのに、なんだか思いっきり80年代テイストだったり、かと思えば一瞬にしてものすごく古臭くなったりしてかなりバランスは悪い。

『水兒武士』てっきりタイトルはトン・ワイ演じる主人公のことかと思いきや、実は水兒というのがヒロインの名前で武士というのは日本でいう武士とは違い単純にトン・ワイの役名。早い話が「愛と誠」みたいなものでしょうか。

冒頭から娼楼で若い女性が性的虐待を受けるシーンがあり、とってもショウブラらしい全然エロくないエロシーンから始まる。ショウブラってアクションものしか観ないと気がつかないんですが、実は結構エログロものが多く、このキャストなのにこの始まり?と脱力モード。しかし85年とは思えないほど古臭いエロシーンに当時これは果たして受けたのだろうかと他人事ながら心配になったりします。

ヒロインはそこで育った訳ありの娘で、実は大太子(皇太子)の落とし胤だったりする。その事実を知っているのは彼女を預かっている置屋のおかみだけ。この水兒ちゃん、大太子の娘だけあって身体は売っておらず、むしろとても正義感が強い。同じ女として虐待する客に蛇を投げつけて追い散らかしたかと思うと、街に出れば、易者の見立てが気にくわないと平手打ち。その勢いでランプが吹っ飛び隣の露店の生地に引火、キャーキャー言ってるうちに次々と飛び火するわ怒った人達から逃げるために馬を盗んで走り出すわ、やりたい放題。かと思えば次のシーンになると置屋のおかみの無駄に長い濡れ場がまた来たりして、かなりちぐはく(汗)。

これ最後まで見れるかなぁと思ったタイミングで、出た!カーフェイいいい!しかもめちゃくちゃ若いいいいい。
彼は皇帝の座を狙う二太子の役でカメオ出演。白い衣裳が美しい。その二太子が置屋のおかみの密告で水兒のことを知り、陰謀のカードにしようと秘かに彼女を連れて来いと隠密に言い渡すわけですね。それを知った大太子の方は、すわ大変と自らの娘を暗殺するべく(ひどい)刺客を放つ。

その刺客がクララ・ウェイ姐さんです。
数少ない見せ場のひとつがこの登場シーン。山道の道端の茶売りの前で腰をかけた男装の麗人(大好物)のクララさん。そこへ槍が飛んできたと思ったら、鮮血鮮やかに客の男と茶売りのジーサマを見事貫通して木の幹にブスリ!な、なにごと???という我々の驚きをよそに姐さんがその槍をクールに引き抜くとその先に布で書かれた指令が・・・。あんた、いくらなんでも指令出すだけで2人の男を貫通しなくても(笑)。でもこのバカバカしさが見事ショウブラテイスト。

もう1人の刺客はアマゾネス風の女です。造型は『サンダーアーム/龍兄虎弟』のアマゾネスを想像していただければよろしい。
この剣心と左之助みたいなデコボコなコンビがくだんの娼楼に向かうわけですが、そこではまたご丁寧に裸の女たちが池でキャッキャと水浴びとかしております。いや・・・だから85年でそのヌードの撮り方は(略

と、乗り込んだ2人はいきなり刀でその女たちを片っ端からメッタ斬り!ちょ!姐さん方、皆殺しですかい!・・・何が驚いたって一切のコレオグラフィーもついてないこの単調なマッパ大虐殺、2分半もあることに驚いた。2分半といったら、『イップ・マン 序章』の空手道場より長いじゃないですか!これには心底くじけそうに。

いや、せめてトン・ワイ登場までは我慢するんだ自分。スチルによると武士はロン毛(トン・ワイのロン毛好き)でほとんど服を着てないようだし。さらに我慢すること数分、やっと出てきたトン・ワーイ。あ、言っときますが自分ムキムキは怖くて実は作りこんだ6パックとか苦手なんですが、このトン・ワイさんは変に筋肉がつき過ぎてなくて大変よろしかったと存じます。

で、成り行きでアマゾネスから助けた水兒を自分の家に連れて帰ったら実はクララさんは彼の(多分)お姉さんで、そこについさっき武士にやられたアマゾネスがやってきて水兒と武士を殺そうとしたら姉さんがそれを阻み、あえなく女刺客は相討ちにて死亡。ふぁっ、クララさんの出番はここでジ・エンド。

あとは急に水兒と武士のロードムービーにシフトチェンジ。何もできない女とその女を疎ましく思いながらも次第に互いに魅かれあい・・・そういやこの頃『ロマンシング・ストーン』って映画が流行ったなぁとなどと思ってたら、またもや濡れ場に突入。しかも初めて拝見した彼のラブシーンは従兄弟のラブシーンを見るかの如くこっぱずかしいことこの上ない。いや、だからその撮り方(略

その後、何の伏線もない別の女の子(レジーナ・ケント、『霊幻道士5 ベビーキョンシー対空飛ぶドラキュラ!』のちょっとズレたシスターが可愛かったですね)が出てきてそれが元で嫉妬して喧嘩して、あかん、これ耐えきる自信がない。もう誰でもいい!一刻も早くトン・ワイと戦ってくれ!!!!

そこで『ブラッド・ブラザース 刺馬』のティ・ロンの川辺での女性とのシーンはエロかったなぁと全然別の事を考えたりして気を紛らわしたりしました。キスもしない、当然抱き合うわけでもない、なのにあのエロさは一体なんだったんでしょう、さすがチャン・チェというべきか。 查傳誼(ジャー・チュンイー)そこへ直りなさい。

とここまで書いて思ったのですが、アクションシーンと同じでひょっとしたらショウブラにはお抱え濡れ場導演がいたのかもしれませんね。裸になる女優さんはある程度決まっていたでしょうし、絶対に慣れたメンバーで撮る方がいいに決まってる。昔、アクションシーンになると監督は武術指導に丸投げしてスタジオから帰っちゃったそうですが、ひょっとしたら濡れ場も同じシステムだったのかも。だとしたら毎度同じようなエロくないエロシーンになる理由の説明がつきます。

さて、話を戻します。あとの展開は、刺客がいなくなったはずなのに、二太子の隠密のボスが実は二重スパイで隠密の女を催眠術で(これがなかなかシュールな催眠術)操っているために仲間を裏切ってヒロインを奪ってボスの元に連れてっちゃう。で、他のメンバーと二重スパイ派と入り乱れてわけがわかりません。肝心のトン・ワイは「お前とは身分が違う」とか言われちゃってひるんでるし弱い設定でアクションしてくれないし、というかこれだけのメンバーを揃えながらろくなアクションシーンもないとは一体どういうことでしょうか。んーもう。

最後はびっくりするくらいの爆破に次ぐ爆破で、これCGじゃないんだよなぁ、本当にこの距離で爆発してるんだよねぇ、で、香港人いい加減だから指示より早いタイミングで爆発させちゃったりして主演女優が大火傷を負ったりするんだよなぁなどと考えているうちに若い恋人同士は逃げ場がなくなり最後キスしたまま爆発。
JourneyoftheDoomed-07

そしてそのままドーンと劇終

え?

思えば、この作品が公開されたのは1985年。まさしく邵仁枚(ラミー・ショウ)が亡くなった年で、この年を境に輝かしい歴史を作った映画会社ショウブラザーズのスタジオは閉鎖されてしまったのでした。まさにヤケクソ、真の断末魔。合掌。

俳優に欠かせないもののひとつに運というのがあると思いますが、そういう意味では俳優トン・ワイにはことごとく運はなかったのだなぁなんてことが一番感じたことだったりして。

でもちゃんと香港を代表するアクション監督になったんですから、それでよかったんですよね!

最後になりますが、普段おもしろくない映画の事は書けないんですが(いや、おもしろくても書いてないのが多い)、サンダーアームのアマゾネスの事を書いたらED歌の「ローレライ」が聴きたくなって、この記事はローレライの連続再生でなんとなくアランに急かされるように書いてしまいました。「ロレラーーーーーーーーーイ」

ありがとう、アラン。

トレイラーは面白そうだったのにな
Journey Of The Doomed (1985) Shaw Brothers **Official Trailer

以前のトン・ワイ祭り
プロジェクトD(1979年・香港)
蔵出し その3

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西遊記 ヒーロー・イズ・バック(原題:西游记之大圣归来、2015年・中国)

「闖將令」のテーマに乗って登場したそのヒーローの名は、斉天大聖!!

今年中国で公開され、爆発的な人気となった中国国産3Dアニメ『西游记之大圣归来』。
観ましたよ、なにこれめちゃくちゃ面白い。絵柄はピクサーっぽいのかもしれないけど(特に子供ね)、いやぁさすが西遊記、どんだけ西遊記好きなんだい中国人、とにかくアクションてんこ盛り。

オープニングからもうね、しびれっちゃう絵なわけですよ。雲海の広がる天界で、水墨画で描かれたような岩の先にちょこんと座り天兵と対峙するのは、斉天大聖、孫悟空の後ろ姿。本来はマントのはずですがここでは3D効果やヒロイズムを際立たせるためにまるで赤い長いマフラーの如くたなびいております。

始まりは大鬧天宮の最後の戦いから。聞こえてきたのは、ドニーさんの『カンフー・ジャングル』のエンドクレジットでも使われた「闖將令」。お約束~~~~~~~!
このあたりの闘いはダイジェスト気味ながら原作にかなり忠実。うおー孫悟空かっこいい、しかし数分もしたら五行山に閉じ込められちゃう。

・・・と、父が話すその物語を聞いていたのが、この映画のもう一人の主人公、まだ赤子の江流兒。彼の両親は山に住まう妖怪山妖に襲われ絶命。が、生き残った彼は托鉢の僧法明に拾われ、長安で師父のもと和尚としての修業を積む少年へと成長しました。
彼の英雄は赤子の頃聞かされた斉天大聖(孫悟空)。唯一の形見である大聖の人形を大事に持っているほど。

その少年が山妖から女の赤ちゃんを救ったことから、追われて五行山にたどりつき、そこで大聖の封印を解き見事復活!と思いきや、彼は釈迦によってその法力を緘されたまま。ただの喧嘩の強い猿と化し、すっかり自信を失って・・・。というお話。

正直、話としては充分想像の範疇です。
ラストバトルは妖怪というより、もはやKaiju。いいぞもっとやれ。この悪役よかったわ。
こちらの心を掴んで離さないのは、滲みでる作品への情熱と愛情を感じたからでしょうか。映画にとっての最大の魅力は何なのか、その答えのひとつは間違いなく、迸る作り手のパッション。
近年では『るろうに剣心』シリーズ、そして今年の夏は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でとどめを刺された感があったのですが、ここにきてまたそんな気持ちになるとは嬉しいことです。

キャラがいい表情がいい、特に斉天大聖、かっこよすぎます。といっても見慣れた無敵な孫悟空とは一味違う。法力を失くしたかつての英雄は、クールでシニカル。キラキラした目で自分を見上げる少年の眼差しはかえって彼に現実との落差を突きつけ落胆させる。誰かがこのコンビを称して「疑似父子」と言っていましたが、なるほど子のヒーローであり続けるというのはかくも至難の業なのか。

その彼が「クソガキ」と呼んでいた少年の名を叫ぶところは涙が出てきました。
満を持して猿が、少年の憧れた大聖として赤いマフラーを翻し変身するシークエンスなんか、色んな要素も相まってなんと神々しい。
そしてあのラストショットがよかった。これは絶対に口が裂けても言わない。観てもらわないと!

構想8年制作3年、完成まで様々な難題を乗り越え、また出資者からの要望をはねのけてまで自らのアイディアを守り最後は田晓鹏監督自身が資金を捻出して完成。宣伝費はほとんどなく、まさにそのクオリティの高さとそれを応援する観客の力と口コミで大ヒットをもぎとりました。

これは是非日本でも公開してもらいたいです、できたら3Dで。たくさんの人が気に入ると思う!

この作品のヒットを伝える日本語ニュース
映画「西游記之大聖帰来」、孫悟空が中国で再び旋風(人民網日本語版)
この映画を知ったのは、こちらの井上俊彦さんの記事を読んだこと。中国の人達がなぜこんなに応援したかがよく分ります。
新解釈で若者を魅了『西遊記之大聖帰来』(人民中国インターネット版)

あ、そういや、いいところで『小刀会組曲 序曲』もかかってたよ!!!もうね、死ぬまでにあと何作の映画でこの曲聴くことになるのかな、すでにそんな気分です(笑)。
小刀会組曲 序曲

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ドラゴン×マッハ!(殺破狼2/SPL2:2015年、香港・中国)

ネタバレなし。殺破狼2というタイトルを聞いた時は「こりゃまた難しい事をわざわざ」と正直思ったものですが、前作と同じく経典になるかもというのが今の率直な感想。この高いハードルに決して躓くことなく作り上げた監督スタッフ俳優に心からの拍手を!

ドラマもハード。細かいことはいいんだよとなぜか威張りたくなるエネルギー。アクションがここまで釣瓶打ちでキャラクターが立ってれば、何の文句がありましょうか!傑作。

登場人物は多いです。ここまで多いと勿体ない人が出るけれど上手くまとまっている。そこに動機づけと見せ場がしっかりあって、アクションだけでなく主な出演者全ていい役というのが嬉しいじゃありませんか。

当然アクションシーンが最大の売りなわけですが、自分としてはこのキャラクター付けに大いなる賛辞を送りたいです。ソイ・チェン監督の本領発揮かな?素晴らしい。
ウー・ジンはもちろんトニー・ジャー、マックス・チャン、ルイス・クー、それぞれが新境地の役どころ。そしてサイモン・ヤムやロー・ワイコンも見せ場たっぷり。一方、林嘉華(ラム・カーワー)、姜皓文(キョン・ヒウマン)と羅永昌(ロー・ウィンチョン)はお馴染みの安定感。

ウー・ジンとトニー・ジャーのファンは涙でスクリーンが見えなくなるかもしれません。
ややもすればアクション俳優の場合、動きはすごいのに役が物足りないことも多かったりするんですが、本作は2人の演技力を新たに引き出していてそこだけでもう満点つけちゃう。ウー・ジンは年齢とともに非常にいい面構えになってきており、今回はその良さを十二分に発揮する機会を得ました。

トニー・ジャーも(象だけでなく)娘を必死に守ろうとする姿が人間味を醸し出していて身近に感じる役。

監督、本当に本当にありがとう。

香港ノワールに不可欠な男同士の友情はもちろん、そこに幾層もの血の織りなす劇的な展開と命への執念。この命への執念は今までのノワールにあまりなかった視点な気がするのでとても新鮮でした。トニー・ジャーと可愛い娘、そしてサイモン・ヤムのあるシークエンスとそれを見るウー・ジンの表情なんか本当に泣けた。

そのうえ、肉弾戦たっぷりのアクション映画で狂喜乱舞。特にお気に入りは刑務所の長回しの乱闘。スマホ電波状況とシンクロしていやぁ興奮した!
アクション監督は大ベテラン李忠志(ニッキー・リー)。スタントコーディネーターには黄偉亮(ジャック・ウォン)とロー・ワイコン。設計は俳優の個性や当たり役キャラを活かした動きをベースにブラッシュアップ。

アクションシーンが多いので、ステゴロ、ムエタイ、ガンアクションカーアクション、スラッシャー、CGにリアルヒッティングありと、かなりロケーションやシチュ、カメラワークVFXなど場面によって変化があって楽しい。よもや鉄籠に入れられたサイモン・ヤムを見ようとは。途中韓国映画っぽいなと思ってたらその後本当に韓国人が出てきて無茶しまくってたのには笑いました。

ニッキー・リーはウ-・ジンくんとはもう何作もガッツリ組んでいるのでここはさすがのコンビネーション、どころかトニー・ジャーのムエタイ膝蹴りとワイヤーが相性よくて驚いた。むしろマックス・チャンの方がワイヤーとの相性よろしくなかったかも。彼に関しては他の現代アクションでもちらりと感じたりしていたので、線が細すぎてワイヤーつきキックとかちょっぴり武侠の匂いというか軽功ちっくに見えてしまうのかもしれません。実は彼の動きが一番功夫ぽかった気がするので、ひょっとしたらわざとそうしたのでしょうか。
とはいえ、どんなに動いても乱れない髪とスーツとその美形ぶりにただ唖然。なんという美しさ。すっかり虜です。

タイの刑務所長としてタイ語を話しておられましたがセリフのために勉強したのだとか。
彼らのラストファイトにはもうひとつ大きなオマージュが隠されていますが、それは絶対に書かない。多分戦いの途中から「え、それって!」と思うところでしょうから結末はどうなるかはお楽しみに。

その中で目を引いた新星、ルイス・クーの用心棒まゆなしは新鮮!まるでウィルソン・イップ版SPLのジェット(ウー・ジン)を彷彿とさせる冷血な殺し屋。おまけに彼と10年後役を変えたウー・ジンとの闘いではある衝撃も。

このナイフ使いを演じたのは、張馳(チャン・チー)。
1991年北京生まれの24歳、7歳から武術を習い、『インビジブル・ターゲット』ではニコラス・ツェーの危険なシーンのスタントダブルに。16歳の時でした。その後『血戦 (FATAL MOVE)』、『コネクテッド』、『狼牙 ライジング・フィスト』においてスタントと出演。『エクスペンダブルズ2』にもスタントマンとして参加したそうです。

記憶に残るところでは『イップ・マン 誕生』での葉問と一緒に祭りで暴れる同門の子、『インフェルノ 大火災脱出』は同僚の消防隊員、フルーツ・チャンの『ミッド・ナイト・アフター(那夜凌晨,我坐上了旺角開往大埔的紅VAN)』では大学生の1人赤いパーカーを着た子で『屍城(原題)』じゃアンディ・オンとともにゾンビと戦う隊員だったりもする。うっわーなんだ全部見てたんじゃん!

普段の彼はいかにも朗らかそうなお人なんですが、言うまでもなく今回かなりおっかなくて結びつくわけがない。

鮮烈な印象を残しましたもんね、これからの活躍が期待される若きアクション俳優です。もう忘れないぞっ。

タイムランは120分と少々長めですが、香港タイと場所と時間がいったりきたりする冒頭部分を乗り越えれば息もつかせぬバイオレンスの美学が待っております。

中国、香港でもヒットしたようで、特に中国大陸ではこのタイプの作品としては異例の超超超大ヒット。ウー・ジンはこの直前に公開された『戰狼(原題)』とあわせ見事ブレイクスルーを果たしました、やった!

そしてなによりこれをきっかけにどんどんバイオレンス映画が製作され大陸でも公開され注目を集めるようになってくれれば、ファンとしてこんな嬉しいことはありません。本当によかった!うぉ~誰でもいいからすぐ続いてくれ~!そして香港バイオレンスの確固たる復権を!

《殺破狼Ⅱ》預告片
【號外】《殺破狼Ⅱ》特別介紹 - 張馳 好打得!
意味もなく、那夜凌晨,我坐上了旺角開往大埔的紅VANの予告、いやほんとこのDボウイのかかるシーンはシビレるから

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ドラゴン危機一発’97(1997 年・香港)@シネマート六本木―ドニー・イェン 甄子丹

狂気を発するドニー・イェンはなぜこんなにもおもしろいのか

この映画をデジタルリマスターすることを決めた人はえらい!そしてこれをラスト上映に選んだシネマート六本木もえらい!
まさかこれがスクリーンで観ることが出来るとは想像もしませんでした。しかもリマスターが素晴らしい。ドニーさんの顔一杯の汗や産毛までよく見える。本当に感謝でございます。
だって暗くてよく見えなかった七聖廟のトンファーアクションだって、何やってるか、ちゃんと見えるんだよ!生涯ベストリマスターTOP5に堂々ランクイン。

帰って手持ちの香港版を久々観たところ、字幕は焼き付けで(しかも所々掠れとるがな)サイズは4:3のスタンダードサイズ。比較するまでもなく、今回のリマスターの方が100万倍いい。昔のソフトをお持ちの方ならお分かりになると思いますが、冒頭の青や過去パートの赤などが押さえられシルエットでしかなかった部分が明るくクリアに本当に見やすい映像になっています。

に、してもすごい映画だ、観ているこちらは火傷しそう、そして呼吸困難になりそうです。
先の読めないストーリー(いや、最後まで観ても訳わかんないけど)や高速バトルの数々とトリッキーなカット割り、そのうえあのむせかえるようなオレ様臭。李三脚(ブルース・リーがやった三連続キック)どころか四脚をしかも二回も繋いじゃうその弾けっぷり。ただ走っているだけで声を出して笑ってしまいそうになる映画なんかこの世にそう多くはありません。しかもラストカットがナタだよ、ナタ。

谷垣さんが「現場ではなにやってるかサッパリわからなかった」というアクションシーンのショットも、こうやって観ていると当時この作品の数年前に撮ったドラマ『精武門』の手法をブラッシュアップしたのだということが分ります。でもって望遠(レンズのことが未だに分らないので広角かと思ったら違うそうです)レンズとローアングルがお気に入りだったということも。SEが当時のテレビドラマのままというあたりも含め90年代の総決算というかある種到達点というか。

何度も登場しては死ぬ谷垣さんもですが、彼に限らず登場する人達みんな若い!手のひらに暗器を仕込みいきなり上から「バババババ」と襲ってくるマク・ワイチュン(麥偉章)とかごっつ若いやん。

そういえば『掌門人(原題)』というラウ・カーリョン(劉家良)監督作のレビューでも書きましたが、以前、この『ドラゴン危機一発’97』に関する彼のインタビューを見たことがあります。あのバトルのラスト、キックを受けて回転して吹っ飛んでゆく動作はワイヤーなしだったそうで「あのバトルは一切ワイヤーがないんだよ、あれは自力で廻ってるんだよ、すごいだろ?」と大層誇らしげでした。
そして「現場がひどく暑かったことは覚えてる、冷たい飲み物もなくてさ、ひどいよなぁ」と何度もボヤいていたのが印象的。ずいぶん時間が経ったあとのインタビューかと思いますが、撮影の思い出が冷たい飲み物がなかったこととは(笑)。よほど腹が立ったんでしょうね。おい、制作部!あとは劉家班にいたことの自負と劉家良師傅へのリスペクトを、映画そっちのけで熱く熱く語りつくしておりましたっけ。そういえば最近見ないなぁ。どうしていらっしゃるでしょう。

でも考えれば、マク・ワイチュンにとってこのバトルが恐らく現時点のベストファイトなのではないかと思うんですよね。一度見たら決して忘れないあの暑苦しい狂気に満ちたバババファイト。あなたは何故そこで木を根元から引き抜くんだ!?

そして、忘れちゃいけないワイ役のダヨ・ウォン(黃子華)の闘いも凄まじかった。ナタで人間を殺傷した後の放心の表情がめっちゃいい。もともとはスタンダップコメディアンとして有名になり司会業や俳優歌手として活躍する香港スター。沢山の映画にも出ていて自分はほとんど見たことはないのですが、多分こちらもこの作品がベストファイトじゃないかと睨んでいます。すごい打点のドロップキックとかかましてたもんね。
いや、さすがですアクション監督ドニー・イェン、あなたの出演者へのリミッターの外しっぷりはお見事としか言いようがない。

幸い、私は日本公開に尽力した江戸木純さんのトークショーつき初日に行くことができました。この作品の出資会社である名威影業有限公司(My Way Film Company)は今でこそチョウ・ユンファ主演『曹操暗殺 三国志外伝』なんてのを真面目に作っておりますが、当時は超C級クラスの功夫映画にところどころニンジャが登場するカットを加えて「ニンジャ映画」としてヨーロッパに売ったりしていたそうです(笑)。

バジェットは公称の恐らく1/3くらいだったろうけれど、金は出すけど口は出さないというこの会社の方針が上手くいき「だからこそドニーは思う存分作りたいものが作れたのじゃ」と江戸木さんは話していました。
『ドラゴン危機一発’97』という邦題は江戸木さんがつけたそうで、初めてこの作品のプロモ映像をミラノの映画市で観た時、英語タイトルが「The New Big Boss」つまりブルース・リーのドラゴン危機一発の英題にNewをつけたものだったこと、そしていあわせたイギリスの超有名功夫オタク兼プロデューサーのトビー・ラッセル(あの映画監督ケン・ラッセルの息子なんですと)が「これを新ドラゴン危機一発、第二のブルース・リーとしてイギリスで売る」というのを聞いて自分も気持ちが固まったということでした。

アジア映画ファンに愛されたシネマート六本木もいよいよ閉館へのカウントダウン、本日は谷垣健治さんが本編終了後に登壇される様で。自分は予定があって残念ながら見ることはできませんが、きっと楽しい裏話がたくさん聞けることでしょう。うらやましい。

せっかくあんな素晴らしいHDリマスターしたんですから、DVDとブルーレイの発売があると信じてます。そしてきっと驚くような特典も付けてくれることでしょう、期待してます、アクセスエーさん!

ドラゴン危機一発’97がここまできれいに蘇るんですから、ここはひとつ、どなたか『ドニー・イェン COOL』にもチャレンジしてみませんか?

ドニー・イェン 甄子丹 TOP10などを選んでみました

シネマートドラゴン危機一発797公式サイト
ドニー・イェン主演『ドラゴン危機一発’97』サプライズ上映決定! スクリーンに復活

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クライム・キーパー 香港捜査官(1989年・香港)@シネマート六本木

26年前の男達女達の放つ荒削りなパワーに口あんぐり

またすんごいものを上映です、シネマート。DVDは持っておりますが、これは未公開だったらしいのでスクリーン上映は初。

主役は超お美しいシンシア・カーン。彼女がなんといってもイカす。クララ・ウェイとかアンジェラ・マオ、ミシェール・ヨー、シンシア・ラスロックやシンシア・ラスターこと大島由加里さんとか(なんというシンシア率)、しっかり動ける女性のアクションシーンってやたら盛り上がりますよね、大好き!

事件に巻き込まれる可哀そうな青年にはユエンさんちの弟、サイモン・ユエン・ジュニア。
彼女が成り行きを眺めていたジュニアの喧嘩に参戦する際、敵の振り上げた拳を後ろから掴むしぐさや表情がとにかくカッコいい。いよっ、待ってました!すかさずレンチをヌンチャクにしちゃうシンシアの雄姿にときめきます。

その後のユエン・シュンイー(彼は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝/アイアンモンキー』でのあの人のいい巡査さん)とのバトルではスリムなケミカルウォッシュジーンズを履いたおみ足で繰り出す李三脚(ブルース・リーがやった、キック&身体を返してサイドキック、そしてそこからの回し蹴りという連続キック)にしびれました。というか、これをやれる女性は無条件に愛してる!
かと思うと中盤の女2人のバトルもホット&スリリング。無茶しやがるぜ。

自分はキリリとした美女が好きなので、この映画は彼女を観てるだけで嬉しくなっちゃうんですよね。初めて観た時のあのカーチェイスの衝撃ったら。まるでポリスストーリーの成龍みたいだよ、ブラバー!
あの頃ってどこまでワイヤー使ってるんでしょうね、あっても不思議はないけど、なかったとしたら凄すぎる、いや、あったとしても鬼すぎる。ウーピン先生。

重ねた年齢のお陰か、アメリカで苦労したのか、今や好々爺然として若い監督から「マスターウーピンはあんなすごい人なのにちゃんと監督の意見を聞いてくれるアクション監督!素晴らしいプロフェッショナル!」と絶賛されておりますが(詳しくはこちら)、この頃は間違いなく当時一杯いた鬼畜アクション監督のおひとりでした。

この映画のDVD特典映像インタビューやアクションブック、また色んなインタビューで、ドニーさんはウーピン監督のもとでの苦労を結構喋っていて、シンシアもドニーさんも話以上に相当シゴかれたんだろうなということが偲ばれます。まぁそんなスタートを切った人がアクション監督になったら当然のように出演者をシゴキますわね。

でもって、時代が変わるにつれ、厳しすぎる俺様すぎるとお若い人達からアレコレ言われたりする・・・もはや歩くブラック企業(汗)。まぁ厳しすぎるくらいならいいんですが、このところはすっかり虐待みたいに言われちゃったりしてご本人も相当とまどっているようですが(笑)。難しいもんですなぁ。

最近は少しは言っていいことと悪いことを考えるようになった感のある(それで人並みの多分半分くらい)ドニーさんですけど、本音では「俺の20代ン時はこんなもんじゃなかったぜ!ウダウダ言ってんじゃねぇぇぇ!」と思っていても不思議はないでしょう。

さて、妄想はそれくらいにして。

この作品のアクションで目玉は、シンシア・カーンの驚きのハードアクションと、ドニーさんと幼馴染みとも言うべきボストン時代からの仲間たちとのアクション。

その1人、スティーブン・バーウィックは今回シンシアとのファイトになりましたが、後の2人、ジョン・サルヴィッティとマイケル・ウッズとの闘いは、この先もずーっと私の記憶に残ることでしょう。

ジョンとのバトルでは彼の妙なテンションに目を奪われがちですが、冒頭実はかなりすごい足技を見せていて、ハイキックや回し蹴りがすごく素敵。
対するドニーさんはぐるぐるパンチや、フェイントからの突き蹴りなど、今に通じる原点が1988年の『タイガー刑事』と本作にあると僭越ながら申し上げたいです。
特にマイケル・ウッズとの屋上での攻防は今なお新鮮で、肉弾戦という言葉がこれほど真実味を帯びた戦いはないというべきか、CGやワイヤーゼロの動きには目を瞠るばかり。おまけにマイケルは最初からずっとランニングですもんね、パッドも何もつけてないっすよ!そして多分彼にはダブルもおらず、そのうえひょっとしたら下にウレタンすら敷いてないのじゃないかと思う当時の乱暴な撮影現場には80年代の香港アクション映画に充満していた荒削りなパワーをひしひし感じます。

今年再販された『タイガー・コネクション』(1990年)でもそうでしたが、そんななかでパッとワンカット差しこまれるマイケル・ウッズの「ヤー!」みたいなカメラに向かって飛んでくるポーズと表情がとってもかわいいんですよね♡緊迫したシーンの図らずも一服の清涼剤の役割を果たしてる。このマイケルを見て頬の緩まない人なんているんでしょうか、必見です。

↓そんな男達の25年後の跳躍(2014年撮影)
BOSTONBOYS

予告
In The Line Of Duty 4 IV / Yes, Madam 4 Trailer (HQ)

お、思い出した。YOUTUBEにあがってるドニー・イェンUKアクション教室1989みたいな動画は実はベイ・ローガンがビデオにして販売していたものだったようです。このセミナーに当時17歳の『イップ・マン葉問』のツイスターことダレン・シャラヴィが参加していたんだとか。
uktourvideo

カテゴリー: film, アクション映画, 功夫映画, 甄子丹 | タグ: , , , , , , , , , , , , , , | クライム・キーパー 香港捜査官(1989年・香港)@シネマート六本木 はコメントを受け付けていません

かちこみ!ドラゴン・タイガーゲート(2006年、香港・中国)@シネマート六本木

心眼で観れば「なにもかもが素晴らしい!」
今回のシネマート六本木「ドニー・イェン祭り」では、なんだかんだ劇場で何度も観たものも多く、そういう意味で新鮮で目を引いた1つがこれ。

いやぁ、もう一度スクリーンで観られてよかった。これは今後もスクリーンでかかることは難しいでしょうからかなりレア。もちろんフイルム上映、しかもかなり状態が良くて嬉しかったです。

上映はスクリーン2。残念だったのは音響設備のせいなのか川井憲次スコアのBGMがガーンと前面にきてくれなかったことくらいでしょうか。いや、そんなことまで言っては罰が当たりますね、ありがとうシネマート。愛してるシネマート。さみしいよシネマート。

実は久々全編通して観たのですが、昔の印象よりずっとよく出来てる、と思うのはすでに自分がすっかりドニー・イェンという不治の病にかかっているせいかもしれません。以前アクション監督の大内貴仁さんとお食事する機会に恵まれた際に「ドニーのどこがいいわけ?」と真顔で訊かれ、何を言ったらいいかよく分らないまま「空いてる方の手が美しいとこです!」と答えたら思いっきりドン引きされてしまった経験が。ま、そんなようなもんですわ。

なのでまったく客観性を欠いた意見として(笑)この映画はよく出来てる。どのくらいよく出来てたかと言うとローザがたった1本しかない針をドラゴンに打ち自分は「私のこと覚えていて・・・」と言い残して死ぬところを観て泣きそうになるほどによく出来ていました(注:ちなみに初見では「え!?その展開?」となったシーン)。

とにかくオープニングからかっこいい。マ、マーベル!?とかよもや思っちゃダメ、あくまでも香港漫画界の重鎮、黄玉郎先生の70年代から続く大作功夫コミックが原作でございます。昔ネットでちょいと読んでみましたがさすがに40年以上続く(途中諸事情のため中断あり)超大河作品、最初と近年では絵柄が全く違うんだから。

登場人物のファッションはコミックのイメージでオープニングムービーは近年の画風。川井憲次さんの重厚なイントロに乗ってババーーーンと稲妻とともに登場する「甄子丹」の文字とか2Dなのにめっちゃ飛び出してるじゃん!!もうここからスイッチ入りました。

あとは大好きな日本レストランのアクションシーン、ニコラス・ツェーの目の覚めるような股関節プラスショーンの高速ヌンチャクそして御機嫌なカメラワークや、慣れるとうっとおしいを超えた彼岸にあるカッコイイ長髪とか、さりげなく回想に登場するチェン・クアンタイさんすら70年代ファッションとヘアスタイル(絶対にあれはウィルソン・イップのセンス)だったり、今なら分るダブルデビルの兄貴のサイの遣い手がシー・シンユーで三節棍が甄家班古参イム・ワーさんとか、シブミの中の人がユー・カンだとか。とっにかくアクションのリズムがいい。特にグラウンドに土煙を上げて高速で走りこんでくるショットに当時心臓を雑巾絞りされたような衝撃を受けたことまで蘇ってきましたよ。ああああかっこいい。

とにかくドニーさんが情熱を傾けた作品であるということがスクリーンいっぱいのアクションシークエンスから伝わってきて、それだけで気分が晴々。

なにしろドニーさんはニコラス・ツェーとショーン・ユー2人を本気でシゴキにかかりましたからね。今ならこの2大スターにこれほどの負荷は時間的にも無理かもしれない。しかしそれに応えた当時の2人も素晴らしい!あの頃アイドルとして絶大なる人気を誇ったニコラスを差し置いてラストいいとこ持って行っちゃったドニーさんに随分ファンからはブーイングがあったようですが(えっと、それはいつものことなんで、そこはあの)「今まで危険なスタントは数多くしてきたけど自分にとってこれは初めてのアクション映画」とインタビューで言い切ったニコラスはさすが苦労人、なんという好青年。その根性の入り方にさぞシゴキ甲斐もあったことでしょう。

くわえてユン・ワーの師匠ぶりが素敵。武器を選んでくれと言われそこにあったサンダルをスッと引き抜くところなんざぁ痺れます。そしてその後に見せる達人ぶり。若い頃は岸田森ばりの「怪優」キャラ(『サイクロンZ』や『霊幻道士完結篇 最後の霊戦』のオネェなど)が印象にあったユン・ワーさんですが、チャウ・シンチーの『カンフーハッスル』以降、こうした人情味に溢れた役も多くなり、今やものがたりに厚みを出す俳優のお一人なんですなぁ。

昔は出演者のファン、もしくはバリバリのドニーファンしか受け付けない映画なのでは?と思っておりましたが、ハリウッドでこうもヒーロー映画を作られると「ひょっとして初めてのドニー・イェンとしてもいけんじゃないの?」と思えるほど印象は違いました。う、誰かに試してみたい・・・(笑)。

そういえば、こんなシリアルナンバーつき限定版も持っているのであった。おまけは漫画版3人の半身フィギュア。特典映像がなかなか充実
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チェン・クアンタイさんがどんなにイカシた武打星かはこちら
映画 嵐を呼ぶドラゴン(1974年・香港)
映画 ブラッド・ブラザース 刺馬(1973年・香港)
錦衣衛 / (邦題)処刑剣 14 BLADES 香港DVDのちに劇場で日本語字幕版―ドニー・イェン 甄子丹
打擂台 GALLANTS(2010年・香港)
上海ドラゴン英雄拳(1972年・香港)
アイアン・フィスト(2012年・米)
フライング・ギロチン(香港・中国、2012年)とアメリカン・ドリーム・イン・チャイナ(原題:中國合夥人・中国、2013)

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ドニー・イェン祭り@シネマート六本木

ち、ちょ!!!!!!!!シネマート六本木!!!!!

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フイルム上映もある!!!!!!!!どぉわーーーー!!!
これに、香港電影天堂SPECIALアンコールⅢの『ワンチャイ2天地大乱』とか新作『モンキー・マジック 孫悟空誕生』とか・・・じ、じゅういっぽん・・・なんですかそのパラダイス・・・あの・・・なるべく早く・・・タイムスケジュール・・・バタッ(卒倒)

香港電影天堂 最終章 特設サイト

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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(2014年、英・米)

近年でもかなりスケールの大きいファム・ファタール映画。

2003年日本で公開されたイギリス映画に『エニグマ』という作品がありました。原作はロバート・ハリスの小説『暗号機エニグマへの挑戦』。主役は暗号解読機マシンがすでに出来た後にブレッチリー・パークで暗号解読をする男。女性とのラブロマンスが大きな比重を占めていたりして正直あまり内容は覚えておりません。
たしか原作は暗号解読のおもしろさもさることながら、第二次大戦時に起こったポーランドにおいて約22,000人が銃殺された「カティンの森の虐殺」が一体誰の手で行われたのかという謎解きと、そこから浮かび上がるドイツと連合軍との情報合戦というか神経戦というか、目的達成のためには平気で多くを犠牲にする戦争の現実に「マジっすか!」と戦慄した記憶が。(ちょっと記憶があいまい)

本作『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』の原作アンドリュー・ホッジスの”Alan Turing: The Enigma”は当然ながら読んでいないのですが、もしこの原作にその辺りのことがあまり描かれていないのだとしたら(現在となってはこういうことが常識なのかもしれませんが)、この映画における非情な決断のシークエンスはこの『暗号機エニグマへの挑戦』の色合いも取り入れたのかもしれません。

本作の主人公は二次世界大戦中のドイツ軍によるエニグマ暗号を解読するため、そのマシンを作りだし解読に成功した天才数学者アラン・チューリング。
彼がブレッチリー・パークでいかにしてこの偉業をなし遂げたか、またそんな彼の少年時代から抱えた秘密、そしてある事件がきっかけで当時の任務という秘密を彼が語る戦後、という3つの時間を重ねてゆきます。

主人公、アラン・チューリングがどんな人物で何を成し遂げたかは映画を観れば分るし自分なんかよりずっと理解しやすく書いていらっしゃる方がたくさんいるので割愛。

ただひとつだけ。チューリングが戦後同性愛者として受けた不当な扱いについて公式にイギリス政府が謝罪したのは2009年とつい最近のことでした。

その時の首相ゴードン・ブラウンの謝罪文を日本語訳して載せていらっしゃるブログがあったのでご紹介させてください。
イギリス首相の、アラン・チューリングに対する公式謝罪文―はやしのブログ

このブログのコメント欄にもありますが、不当な当時の法律による犠牲者であるという趣旨の謝罪はあったものの、国家によって使い捨て同然にされたという事実に対する謝罪はまったくないのでは?という意見には大いに同意します。つまり今後同性愛者としての不当な扱いは許さないけど、国家として使い捨てにする気はまだまだあるよ!ともうがって考えちゃうこともできるわけで。

さて本作では暗号を解くサスペンスというより、彼の抱えるいくつかの「秘密」について主眼が置かれています。当時はその「秘密」のひとつがもうひとつの「秘密」を守るために体のいいきっかけになったはずなのに、そこは真実を追求しようとする刑事だけしか登場せず上からの圧力があったわけでもなくちょっと消化不良だった気もしたのですが、多分制作側はそこをあまり突っ込む気はなかったんでしょうね。多分彼らが描きたかったのは、類まれなる才能を持ったアラン・チューリングの純情だから。

そんな風にものがたりは丁寧さと性急さが混在する部分が多々ありますが、さほど気にならないほど主演のカンバーバッチはじめ役者の演技と台詞が素晴らしい。特にキーラ・ナイトレイと彼の関係は後半本当に辛い流れの中で救いとなりました。
「誰も想像しない人が想像できない偉業をやってのける」
母親から言われたこの言葉をチューリングがジョーンに話し、そして最後にジョーンがボロボロになったチューリングに返す。ここがこの映画の肝でした。
(ま、イギリスのセクシーおやぢ達も一杯出てたと言うアドバンテージも高いけれど。マーク・ストロング最高!)

アカデミー賞の脚色賞を受賞したグレアム・ムーアはそのステージでこうピーチしています。
「16歳の時、私は自殺を図りました。しかし、そんな私が今ここに立っています。私はこの場を、自分の居場所がないと感じている子供たちのために捧げたい。あなたには居場所があります。どうかそのまま、変わったままで、他の人と違うままでいてください。そしていつかあなたがこの場所に立った時に、同じメッセージを伝えてあげてください」

マシンの名前を「ボンブ」から映画向けに「クリストファー」に改名したことも含めそれをあざといという人はいそうです。たしかにあざとい。けどこれはファム・ファタール映画だから仕方ないのです。だけどチューリングの最後がクリストファーの「いる」部屋の灯りを消すにとどめたところはすんごく良かった、自分にはかえって深い余韻を残すことになりました。

伝記映画はいつも創作と事実のせめぎ合いが論争となりますが、映画である以上は物語に変換するわけだし、それが嫌なら権利のある人はOKしない選択肢や脚本に口を出す条件も付けられるのではと個人的には思います。

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』公式サイト
映画「イミテーション・ゲーム」から見えてくる国家と個人の秘密をめぐる戦い
英国政府、アラン・チューリングに没後59年目の恩赦。計算機科学の父
アカデミー賞で最も感動的だったスピーチ「人と違ったままであれ」
[イミテーション・ゲーム]脚本家グレアム・ムーアさんに聞く 主人公に「特有の“パワー”を感じる」
『イミテーション・ゲーム』!映画で描かなかった真実の深い真相とは!?

そういえば、ファム・ファタールの定義ってよく分らないんですが、自分はこの言葉を運命の人という捉え方をしてるのですけど、たとえそれが自分を破滅させる相手でもファム・ファタールというのは分ります。しかし、ちょっといい女(男)で縁があって自分は非常に傷ついたけど最終的にはさほど一生を左右されなさそうな男にとってその相手もファム・ファタールって言うのでしょうか?

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