以前、チェン・ペイペイの映画のつもりで観たら実はジミー・ウォングの映画で驚いた経験があります。
そのジミーさんとドニーさんが競演するピーター・チャン監督の新作「武侠」が中国の内地で、この2011年7月4日に公開されたばかり(日本以外のアジアと欧米でこのあと公開予定)。
この作品のなかでジミーさんとともに、ドニー・イェン動作導演の本格アクションを披露するのは、あの劉家班が育てた女武打星、惠英紅(ベティ・ウェイ/クララ・ウェイ)。
ちょうどいまショウブラザース作品にハマっている自分にしたら、見事に渡りに船じゃありませんか。さっそく予習も兼ねて彼女の初主演作である「レディークンフー激闘拳」を観ました。
監督脚本武術指導
劉家良(ラウ・カーリョン)
出演
劉家良(ラウ・カーリョン)
惠英紅(ベティ・ウエイ/クララ・ウェイ)
小猴(シャオ・ホウ)
王龍威(ワン・ロンウェイ)
劉家輝(ラウ・カーフェイ)
上述のペイペイが主役のはずだったのに、気がつけばなぜだかジミーさんの映画だったという「大女侠」のコラムで「自分はジミーさんには人生狂わされない、セーフ」と書いた記憶があります。
その後、人気の高い「片腕ドラゴン」も観てみたけどその印象は変わらないので、まぁ多分そういうことなんだろうと確信を持ちました。(片腕ならば自分はデビッド・チャン主演の「新・片腕必殺剣」がめちゃめちゃ好き、これはそのうちに書きたいと思います)
しかし、人生というのは何が起こるか分らない。
危ないかもと警戒しているところには案外危険はなく、まったく何も考えてない時に限って大きな事故にあう、そんな落とし穴は多々あります。
まさにぼんやり歩いていたら突然空から植木鉢が落ちて来た、それぐらいの唐突さと衝撃度で、真にヤバいお人が、この「レディークンフー激闘拳」という映画で自分の目の前に現れました。
その男の名は、劉家良(ラウ・カーリョン)。
過去に動作指導した作品や、本人の監督作は、ええ、たくさん観てますよ。でもね、正直、動いてる脂の乗り切った彼を観るのはこれが初めてでございまして。
いや、当然ながらドニーさんと共演した「セブンソード」は、もちろん押さえてあるし、なんていっても成龍の「酔拳2」で、しっかり功夫してるとこも観たよ。観たけど、あの時は成龍しか目に入ってなかったのだとしか思えない。
なんという節穴。馬鹿馬鹿、自分のバカ。今となってはもうね、「少林寺三十六房」なら、第一房どころか、食堂に向かう丸太渡りからやり直さなきゃいかんような気持ちで一杯っすよ。
惠英紅姐さんの若き日の可愛いお姿とアクションを拝見するつもりで、この映画をレンタルした私。
途中外国かぶれの小猴のキャラクターにイラっとしつつ(笑)、一切アクションをしない劉家輝がギターを掻き鳴らしたりダンスしたりするチャライ姿(!)に唖然としながらも、劉家良監督作らしい功夫コメディだなぁ~なんて暢気にしてたわけです。
そしたら終盤、終劇まであと15分というところで、いきなり監督自らが美味しいところを全部持っていく功夫シーンに突入。
ま、まずい。いや、別にまずくないけど(笑)、これはきた、自分で分る。
なんですか、キレ、スピードともにあるこの動き。しかも腰が低くて最後の決めポーズの気持ちがいいこと!
すばらしいいいいいいいいいいいいいいいい。
もうね、彼にはハッタリを効かした動きというのが一切ないんですわ。そしてこんな見事なのに、ナルシシズム的なケレン味もなく、すべてに非常に成熟さを感じさせる。
ほんものだーほんものの匂いがする~。(参照:「映画 少林虎鶴拳」)
素手でよし、棒を持たせても双刀持たせてもよし、おまけに長袍着て(前の裾はパンツインだったけど)帽子までかぶっとるんですよ!
それだけでも嬉しいのに、ラストの王龍威とのバトルシーンがまた凄すぎました。
なんつー壮絶な、そして迫力のあるふたりの動きでしょうか。観てるこっちは笑いながら何度も「すげー」を連発。
なんといっても、劉家良は普通のおじさん然としてる時と功夫してる時とのギャップが激しく、その振れ幅の大きさが最後の闘いを一層際立たせています。
特に、片手を怪我した相手を見るや、自分も片手を腰紐に入れる時の表情なんか、とにかく渋い。おっさん、死ぬほどカッコよすぎます。
とにかく、劇中見せた用心棒のわずかな弱点である目をシュパ!と突くが如く、最後の15分で劉家良に一瞬にしてこのハートを「ぐわし!」と思いっきり鷲掴みされてしまった自分。マジな話、今は大変動揺しておる次第でして(笑)。
で、調子に乗って彼の出演している映画を、続けて観てしまいました。
1992年の「スコーピオン・ファイター」とか(これは別の機会にしたいと思います)
2003年の「超酔拳」とか(笑)。
超酔拳
監督
劉家良(ラウ・カーリョン)
武術指導
劉家良(ラウ・カーリョン
劉家榮(ラウ・カーウィン)
出演
劉家良(ラウ・カーリョン)
劉家輝(ラウ・カーフェイ)
威冠軍(チー・クワンチュン)
呉京(ウー・ジン)
劉永健(ラウ・ウィンキン)
2003年公開という最近の作品なのに作りは、まったくもって70年代ショウブラ映画(笑)。
なんてったって、オープニングからいきなり演武ですもん!
ファイトシーンのワイヤー過剰じゃないですもん!
猿拳ですもん!
そして最終的には、酒飲んで強くなっちゃうんですから!
この時、劉家良はすでに御年66歳。
しかし、なんのなんの、もうね、じーさんになっても劉家良はすごい、速い、かっこいい。
しかも劇中、劉家輝とのバトルまであるし!うわわわわ、小躍りしてしまいます。
しかし一番気に入ったのは実はウー・ジンをしごく修行シーン。
あの足さばきはなんて言っても惚れ惚れしてしまいますわ。
ガンという病もあってか、このあと出演動作導演した「セブンソード」では随分老けて見えてしまった師父。
そのたった2年前ですが、この映画ではまだまだお元気で、若いもんなんかに負けへんでぇ~という魂の叫びが聞こえてきそうな活躍ぶり。本当にかっこよかった。
おまけにテンガロンハットにウエスタンコートというコスプレチックな格好なのに、中は中華服という非常にツボを心得た衣装もナイスでしたわ、師父。
おそらくは劉兄弟ファン以外にはあまり需要がある映画じゃないかもしれませんが(笑)、反対に言えば、それだけにファンには必見な作品に仕上がっているとも言えるわけで(今回動作指導の劉家榮はOPの演武シーンにのみ登場。代わりに端正な顔をした息子の劉永健が出演)。
あなたが劉兄弟ファンなら間違いなく観て損はない1本です。