大友啓史監督&谷垣健治アクション監督、大友監督&大石学教授トークショー

朝から晩までるろ剣耐久レースみたいな京都ヒストリカ国際映画祭最終日。3本一挙上映のあとは、大友啓史監督と谷垣健治さんのトークショー、そして大友監督と大友作品の時代考証を担当された東京学芸大学の大石学教授とのトークショーの2本立て。
もとは大友谷垣第1部だけの予定でしたが、大友監督から「次もやってよ!」というお言葉を頂き、2部も急慮することになりました。10時20分から上映が始まり、全て終わったのは21時30分、あの場にいらした皆さま、本当にお疲れ様でございました。

1部は、谷垣さんのアクション部が演じるアクションビデオコンテのたたき台みたいな原型の動画や、採用されなかった『京都大火編』の沢下条張と剣心との戦いのアイディアも披露されました。
この張と剣心を想定したスタントマンの動画は、誘拐した赤子を張がタスキで身に付けていたらどうだろうというコンセプトで作られたもので、会場は爆笑の渦。だって胸に抱いた赤子が(しかもそれが熊ちゃんのぬいぐるみだったりする)地面を転がる度に下敷になってるし。

そこに大友監督が一言「だめだね」と絶妙のタイミングで反応するのでまた爆笑。谷垣さん曰く「でも、これを俺たちは大真面目にやってるわけですよ」で「こういう試行錯誤を繰り返してアクションは作られるわけです」

今回お話をうかがっていて今更ながらやっと分ったのが、「日本のワンチャイを作ろう」と大友さんがおっしゃった意味。恥ずかしながら最初その言葉を聞いた時アホな自分はアクションのことしか思い浮かばなかったのであります。だからイメージとしてはワイヤーアクションの多い動きを想像してしまったのですよね。
で、本編を観たらああいうアクションになっていたので「よかった!」としみじみ感じたのですが、監督のおっしゃる「ワンチャイ」とはアクションの事ではなかったわけで。

中国の清朝末期、中国における革命前夜を描いたジェット・リーの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズは、時代や社会の劇的な変化にとまどいながらも正義を全うする武術家、黄飛鴻(ウォン・フェイホン)をはじめ、旧体制を守ろうとする官僚や、革命のため命を懸ける男達、その激流に飲み込まれてしまった武術家の姿、どんな時代であってもたくましく生きようとする人々の物語でありました。監督の言うワンチャイにしようというのはアクションではなく、映画のテーマのことだったわけです。(追記:しかもそれをワンチャイのように一級のエンタテイメントに仕上げてみせるという決意の言葉でもある)あああああああボンクラにもほどがある、自分!

同時に「日本だけでなく世界に発信できる作品を作りたかった」という言葉が印象に残りました。

お2人を前にしてお話をうかがえて良かったです。谷垣さんから制作話を聞いて出来上がった作品を観てその化学反応の凄まじさは感じていましたが、実際に並んだ2人の話を聞いてこの組み合わせこそ運命みたいな出会いだったのだろうな、と。

谷垣さんは今までも日本で「アクション映画を作ろう!」と情熱を持った人達と組んできたはずですが、正直あのエネルギーに見合うだけのプロデューサー、監督や作品には巡り合っていなかったのかもしれません。アクションを作るには想像以上の時間やお金、覚悟が必要なのだと想像すれば「よくあるんですが、気がつけば監督じゃなく、アクション監督が“アクションを作ろう”と言いだしたみたいな空気になってることがあって、そうなるとキツイんですよねぇ」と、あそこでおっしゃった言葉には谷垣さんだけでなくひろくアクション関係者の直面する苦労が垣間見えた気がしました。

第2部の大石教授とのトークは先生がめっちゃ詳しいレジュメを書いて来てくださり、それをヒストリカの運営が観客全員にコピーして配布したというファインプレー。素晴らしい。

「時代考証」とはよく目にする言葉ですが、実際どんなことをするお仕事かよく知りません。
関わり方は作品や相手の投げかけ、つまり熱意によって濃淡があるようですが、こと『龍馬伝』から続くるろ剣については相当深く協力されたそうで、たとえば京都の古地図から映画の舞台になった場所など映画用の地図を作成したり、アフレコで入れるモブシーンのガヤなど現代言葉では通用しないために一言づつ考えたり、また『京都大火編』の冒頭、舞台でかかる剣心をモデルにした芝居のアイディアを出し、その主人公の名を「抜刀斎」ならぬ「抜九斎」として十字の傷でなく九の字と提案したのも先生だったそうです。へえええ、まさにそのお仕事は想像以上!

2本とも結構な分量だったと思いますがあっという間の時間でした。司会というより一ファンとして楽しかった。こういう機会を作ってくださったヒストリカ映画祭には心から感謝申し上げます。

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大友啓史監督&谷垣健治アクション監督、大友監督&大石学教授トークショー への2件のフィードバック

  1. ともすけ のコメント:

    ケイコママさん。
    ヒストリカでのトークショー、お疲れさまでした!
    ケイコママさんの質問、ツッコミ、大友監督と谷垣さん、大石先生の返し、拝見していて、とても楽しかったです。
    ああいう現場の方々だからこその裏話、その場にいた私たちだけでなく、もっと沢山の人に知ってほしい。まとめて本にしてほしいくらいでした。

    確かに、あのくまちゃんの場面は笑えました〜。あの場にいた誰もが「これ、ダメじゃん!」と突っ込んでいたと思われます(そして「赤ちゃん交えたアクションっていったら、ジャッキーの『プロジェクトBB』でしょ!」とじりじりしていたのは、私だけではないはず)

    それにしても、両監督のアクション映画への熱さには感動。特に大友監督が「アクションにも表情がある」として、谷垣さんを「アクションをひとつのエンタメとして作っていける思える仲間を見つけた」という意味のことをおっしゃったとき、なんかむちゃくちゃジーンとしてしまいました。

    また、時代考証の大石先生のパートも、歴史好きとしては食い入るようにしてお話をうかがっておりました。エンタメ性、ドラマの中で見せたいものを伝える手段として、史実とは違っていても、あえてやってしまう。それでも「ひょっとしたら、これは史実かも?」と思わせるのは、こうした時代考証がしっかりしているからなんだなとシミジミ。

    本当に充実したトークショー、楽しかったです。
    いろいろと引き出していただき、ありがとうございます。

    しかしやはり、座りっぱなし12時間は、翌日から腰にきました。来年もこうした耐久鑑賞になるとしたら、今から対策をしておかなくては…。

    長々と失礼いたしました!
    今後もママさんのブログ更新、楽しみにしております。

  2. ケイコママ のコメント:

    東京からわざわざありがとうございます!またお目にかかれて嬉しかったです(ハート
    そう言って頂けるととても励みになります!お2人はほんとうにいいコンビネーションで今後も組んで頂きたいと心底願います。
    大石先生も天然青年で、うふふと笑みがこぼれるキャラクターでいらっしましたね~
    来年の事はまだ誰にも分りません・・・それこそ皆さんの気になる歴史映画があったら教えてください!
    条件や配給側の思惑もあり、オファー即上映とは実はいかないのですが、一応時期的にすでに『グリーンデスティニー』2は推薦してあります(笑)
    今後ともご贔屓に、よろしくお願いいたします

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