11月のはじめ、香港に行った際に雨傘運動のオキュパイ飛び地旺角(モンコック)に行きました。
雨傘運動が始まってからストリーミングをはじめネットでしょちゅう経過を見ていました。そこでモンコックにある豪華戯院という映画館で映画をみたのですが、その前後の時間、アーガイルストリートとネイザンストリートの占拠現場を中心に周辺を歩きまわりました。
ここは他のオキュパイ地、金鐘(アドミラリティ、オフィス街)や銅鑼灣(コーズウェイベイ、香港島の繁華街)とは違った空気を持つ地域で、数々の犯罪映画の舞台にもなった場所なので雰囲気はご存知でしょう。『ワンナイト・イン・モンコック 旺角黒夜』というタイトルのイー・トンシン監督作もあります。
大陸客向けの貴金属店や大型チェーン店舗の並ぶ通りから一本離れると露天や小さな店舗がひしめきあいその上層は沢山の人が暮らすアパートになっている。大陸よりの愛国者(や、大陸からのサクラ、金で雇われたチンピラ衆も含む)や地元住民と自由選挙を求める人たちとの軋轢が一番激しいのもこの地区です。
私の訪れた日は何事もなく沢山の観光客が写真を撮り、特に人気だったのは皮肉たっぷりの国家主席のスタンド看板との記念撮影。昼間は観光客以外あまり人はおらず、夜になって学校や仕事を終えた人達がここに戻ってくるという感じでした。
この占拠で路線ルートを変更せざるを得ないと民間バス会社が起こした提訴への判決を受け、高等裁判所が立ち退き命令を出しその執行が11月25,26日に行われました。
本来これは刑事事件ではないし民事裁判なのですが、当然政治に利用され、バス会社の代理人かのように警官隊が撤去に介入、夜になってまたしても武装した警察が無抵抗の市民や取材記者に催涙スプレーや催涙噴射機(!)で無差別に攻撃。このモンコックの占領区撤去の2日間で150人近くを逮捕。
そして昨日12月11日午後、金鐘占領区が同じように裁判所の占領禁止令により撤去。金鐘だけで209人にもおよぶ逮捕者を出しました。※これもまたなんら暴力的に抵抗した人々ではなく、代表者や、香港のマスコミ蘋果日報の社長、歌手デニース・ホー(何韻詩) さんなどを含む座り込んでいた市民、みな粛々と連行されてゆきました
モンコックでデモ隊の一人である青年とほんの少し話す機会があったのですが(とはいえかなり怪しい英語と筆談)日本から来たというと「支持してくれてありがとう」と言われ、「香港映画が好きで映画の中の刑事とかPTUとか素敵だと思ってたからショックだ」と言ったら、いかに警察が無抵抗な市民を痛めつけているかを話し自分の傷を見せてくれました。香港の人にとっては身近な存在としての警察官だった記憶があるはず。この事実に一番傷つきより一層将来に恐怖を抱いたのは他ならぬ多くの香港の人達なのです。
運動がはじまったばかりのまだ暑かった時、掲げられたバナーの言葉に思わず涙したことがあります。
「私のために両親は泣き、私は将来のために泣く」
日本の記事では「デモ収束」という言葉が使われていますが、彼らはまだ諦めてはいません。
モンコックの彼は私に言いました「日本では自由に選挙できるんでしょう?」
12月14日は私たちの日本で衆議院選挙が行われます。いつも投票していますが、今回も必ず投票します。絶対に白紙なんかでは出しません。