導火線 / (邦題)導火線FLASH POINT 英国版 DVDのちに日本版DVD―ドニー・イェン 甄子丹

 


オープニングはなぜだかジムのリング。男ふたりがスパーリングしてる最中にいきなりスーツを着たドニーさん乱入。

「お前を逮捕してやる~」と言いつつ、ジャケットを脱ぎ靴下を脱ぎ捨てる。そして男の足を取ると素早くマウントポジションを奪い、重い(だろう)パンチを繰り出す。
この導火線が総合格闘技を本格的に取り入れた作品だということは事前の調べで、ええ、分ってますとも。しかし、のっけからこれですか!

と、場面が変わり、なぜかドニーさんのインタビュー画面に。なんだどうしたと注目して見ていたら、これはドニーさん自身ではなく馬軍の役として喋ってるらしい。
「自分は今まで間違って暴力をふるったことなんかない、判断を下すのは上の人間。犯人を逮捕するために、これは警官としての義務なんだ」みたいなこと。このカット非常に不思議だ~と思う間もなく、さっさとオープニングクレジットに突入。

BMWを運転するドニーさんと香港の実景。そこで流れてくる音楽のイントロが大変よろし。
コンポーザーはドニーさんの『SPL狼よ静かに死ね』でもウー・ジンとのアクションシーンをクールに引きたてた陳光榮(普通話読みだとチェン・グゥワンロンかな?広東語だとチャン・クォンウィン)。
代表作にあのインファナル・アフェアや孫文の義士団、精武風雲もそうか。冒頭から無機質な感じのアレンジ、かっこいいじゃん。

最後に<1997年中国返還前>とクレジット。そこでちょっとピンときたのだけど、それはあとで。

そのイントロに打ちこみの音が重なり厚くなったと思ったら音楽がそのままクラブでのダンスミュージックへと変化する。おお、イケてまっせ~。

そこでこの映画の登場人物が紹介される。女子と戯れるくわえ煙草のルイス・クー。チンピラっぽいのがよくお似合いで。
続いて凶暴な三男のシン・ユー。長男のレイ・ロイはダンスひとつからも胡散臭い感じがにじみ出ていていいよいいよ~。
そしてサングラスを掛けたコリン・チョウ。さっそくベトナム悪人3兄弟そろい踏みだ。
ここでビジネス相手として、なんとベン・ラムが!おおお、お久しぶり!笑顔でもその目が笑ってないところなど相変わらずです、ベン・ラムさん。

と、そこへ突然警察のガサ入れ。
ドニーさんあらためて仕切り直して登場。Tシャツに革ジャンジーンズ姿、かっこいいす。
そしてそのドニーさんの後ろにサモハンの息子、ティミー・ハンも発見。どうやら刑事役みたいだ。
あれ?君はSPLの回想でドニーさんに殴られて脳挫傷になってなかったか?と一瞬思ったけれど、そんな細けーことはどうでもいいか!

突然のガサ入れにギャング団の下っ端、ルイス・クーが酔っぱらってドニーさんに絡む。
あ~あ、やめときゃいいのに。
当然平手打ちを喰らい、反撃しようとしたら背負い投げ決められて、立ったかと思いきや、あっという間に、跳びつき腕十字!平手打ちからタップアウトまでわずか20秒の早技です(笑)。
すげードニーさん!ここから私のアドレナリン一気に噴出。

どうやらこの馬刑事、暴れん坊デカゆえに署内で問題児らしい。容疑者を何人怪我させたんだと内部調査で吊るし上げられてる。
「時間の無駄じゃん、その間に何人逮捕できると思ってんだ?」と憎まれ口を叩くドニーさん。
おお、広東語だ広東語!この怒ってるみたいな感じの広東語のドニーさん久しぶりだわ~、と妙にときめく私。

次のアクションシーンは夜のゴルフ打ちっぱなし。ルイスと長男三男が女の子を侍らせてゴルフの練習。と、そこへベン・ラムが登場。なにやら文句をつけにきたみたいだ。
いきなり始まる大乱闘。
(このシーンのメイキングに『タイガー刑事』や『洗黒銭』等でドニーさんとバトルを展開したジョン・サルビッティの姿を発見!)
もちろんコリンも現れ兄弟3人でラムさんちのチンピラをボコボコにしちゃいます。
もうね、ゴルフクラブでめった打ちだわ、蹴ればロッカーにめり込み、投げれば仕切をぐんにゃり曲げちゃうしで、いちいちすげぇ痛そうなんだけど。素晴らしいです!スタントマンのみなさーん。

さてベトナム兄弟の下っ端とばかり思っていたルイス・クー、実は警察の潜入捜査官。相棒のドニーさんと白昼堂々浜辺で会ったりしています。
ふたりともモロ肌脱いでサービスショット。
口喧嘩なのか軽い言いあいなのか、どうやら冒頭の20秒の事で揉めてるらしい。もともと広東語は喧嘩ノリなのでどっちなのか判別付かず。ま、台詞にそんな神経質になることもないか(笑)。アクション映画っすからね!

それにしても短気なドニーさん。左遷された警察音楽隊でもいきなり音がどうので隊員にブチ切れてる。と、そこへドニーさんのお母さんがやってくる。
どうやら香港を出て古い友人のいる故郷へ戻るらしい。
SPLの時は「父親のストーリー」が横糸としてありましたが、今回は「母親」がキーワードか?と思っていたらその予感は的中。
ベトナム3兄弟にも当然母親がいて、そのママを3人ともすごく大事にしてる。

この辺りまで観て、まず感心したのは潜入捜査官のルイス・クー、演技めちゃうまいです。
彼の役としては自分の目の前で犯罪や殺人など当然あって欲しくない、でもギャングの仲間としてふるまうためには言われたことを平然とこなさなくてはならない。
この相反するふたつの様子を見事に表現しております。

引きつった笑顔なんかもう最高。
アクションシーンも自らこなしたものが多く、私の中で思い切り彼の株が上がりました。にしても、コメディさせてもよし二枚目もよしアクションもイケる、ほんと芸達者。上手ですねぇ。
しかしそんなルイスもとうとうギャングに正体がバレて病院送りに。おまけに裁判の証人になるために何度も命を狙われて挙句にガールフレンドまで人質に取られちゃう。

そこでいよいよお待ちかね、ドニーさん、まずは三男役のシン・ユーとのガチアクションシーンですよ。
チャウ・シンチーの『カンフーハッスル』で一躍脚光を浴び、本物の少林寺修行僧でもあったこの俳優さんは当然のことながら敵として不足なしだ!

エレベーターの中での緊張感あふれるアクションに始まって、逃げた彼を追いかけて青空食堂までを一気に見せます。
食堂に逃げ込んだ犯人はテーブルの上を駆け抜け、ひとつをひっくり返して投げつけようとします、が、そのテーブルに回し蹴りをかましてシン・ユーごと真っ二つに吹っ飛ばすドニーさん、すげぇぇぇ。

逃げ惑う食堂の客。
そりゃラーメン食べてるとこへ全速力で走る男と、それを追い壁を三角飛びしてくる男を見たら誰だって逃げます(笑)。
追い詰められた三男はそこにいた女の子を人質にして銃を捨てさせると、彼女を地面に放り投げるという鬼畜ぶりを発揮。アスファルトに横たわる瀕死の少女。

その姿を見たドニーさんの中でとうとうリミッターが外れます。まさに導火線に火がつくわけですな。この時の音がもうね、アニメみたいに本当に「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」って鳴ってるし(笑)。

そこに奇声を上げて襲いかかるシン・ユー。
「てめぇだけは許さねえ!」とばかりに相手の頭を抱えてひざ蹴り炸裂。
うち一発が顔面にヒットすると、フェイントをかまして今度は連続パンチ。
みるみるうちに犯人のシャツが血で染まり、最後に強烈な右フックが左頬に。
これ絶対にマジで当たってるよね?ね?と驚いていたら今度は素早くバックを取ってジャーマン・スープレックス!
これ頭から落ちてんの、シン・ユーその人じゃないか!

ひぃぃぃぃぃぃ。ハンパないっすドニーさん!
ふらふらになった相手を今度は正面からタックルして厨房に突っ込み、マウントポジションから全体重を掛けてパンチを打つ、打つ、打つ!
50発?いやそれ以上?もう遠巻きに見てる客もドン引きですわ。だって容疑者を殴り殺しちゃうんだから。

で、ここの音楽がまたいいんだよ~。
普通のギターじゃないんだよねぇ、スチールギターかなぁ(といっても、ハワイアン風に弾いてるわけじゃないよ!)。すごく印象的。
で、その音をバックに水で洗い流される傷だらけのドニーさんの震える拳。うひゃーなんというかっこいいショット!

しかもそのあと、茫然と座っているドニーさんに対し駆け付けた警官が声をかける英字字幕を見てやっと分った。

「Inspector Ma?」彼はなんと警部だったのです。なんつー暴れん坊警部!
まぁでも私の大好きな英国ドラマのモースもフロストもみんな一癖も二癖もありつつ、結局は万年警部だったから(同じイギリスだし)、警部までは腕がよけりゃなれるんだな、きっと。

で、声をかけられたドニーさんはというと急に我に返って、自分の放った拳銃を捜してホルダーに戻すと何も言わずにその場を去るのです。
そしてそんな彼を遠くから見て「あいつが殺ったんだぜ」とヒソヒソ小声で話すヤジ馬たち。

このアクションシーン、イップ監督がどれくらい関わっているかはわかりませんが、恐らくこうした辺りは監督の案じゃないかと秘かに思ったりして。
こういった細かい描写を見ていると明らかに大きな変化を感じて嬉しくなりました。

この馬警部はいくら正義感が強いとはいえ、普通の人が見たら、やってることはあきらかにドン引きする人物です。それを客観的に描くというのは大賛成。
でないとただのハリウッド映画のヒーロー刑事と変わらなくなってしまうもの。
ほんの細かい描写ですが、それがあるのとないのとは多分大違い。
さすがは自称天の邪鬼の監督なだけはありますね(と勝手に決めつけてる)。

ところで、この映画を通して観る前に先に動画でこのシン・ユーならびにコリン・チョウとのアクションシーンを見ちゃったトホホな私。
しかし、なんのなんの、アップされてない他のシーンも見ごたえがありました。

導火線を語るときは、いつもMMAを取り入れた新しい形のアクションという話題が先行してしまいますが、それ以外でもドニーさんはカーアクションと銃撃戦にも挑戦しています。

と、いってもカーアクションの方はドニーさんでなく別のキャラクター同士。だから挑戦したのはイップ監督と言うべきなのかな。どっちが撮ったんだろう。
(追記:これはカーアクションと爆破のオーソリティ、ブルース・ロウが担当したと後に分りましたので、記しておきます)

さてドニーさんの銃撃戦を見るのは『COOL』以来でしょうか。

あれはジョン・ウーがハリウッドに渡った頃で、ドニーさんもジョン・ウーに影響を受けたようなガンシーンを撮っていました。
それから10年近く。
「ガンアクションは、やりつくされているから難しかった」とご本人が言うように苦労の跡がしのばれます。

人質にとられたルイス・クーとファン・ビンビンを取り戻すため、長男レイ・ロイに銃をむけたまま単身アジトに乗り込むドニーさん。

揺れる小さなボートの上で何もつかまらず腰を落として銃を向ける彼のバランス感覚のよさには、小さなことですが感心しました。なんつー体幹の強さ。

やっと解放されたと思ったら、コリン・チョウに遠くから4発撃たれそのうちの1発を足に受けるルイス。ああ不憫だ。

導火線に火のついたドニーさんは躊躇なく抱えたレイ・ロイの耳を撃ち抜く。考えたら人の耳「だけ」を上から撃つってなんという職人技。

そして、とうとうここから15分は続く怒涛のようなアクションの幕は切って落とされたのであります!

まずは1人の手下を銃で射殺すると、バラックに飛び込む。
ベトナム組の4人の男たちはライフルとマシンガンそしてショットガンを手にそのバラックを乱れ撃ちです。古い人間はここで速攻ガントレット!と条件反射。

ここでその敵の1人、屋根の男がドニーさんの放った弾に足をブチ抜かれ屋根を踏み抜き落ちてくるのですが、この時のスタントがかつての成龍チームを思わせるような、人として一番痛そうな落ち方なんだわ。
実際、スタントマンの下村勇二さんはお気の毒にもこの時、首に怪我をしてしまったそうですが、いやはや素晴らしい落ちっぷり!

すかさずその男のライフルを手に取るとバラックの壁をぶち破って外に出る馬警部。
あとは南生圍の湿地を駆けながらの銃撃戦っす。マジで結構な距離をみんなして走ってる。
しかもこのシーンのワイドショットの絵がとても綺麗なんですよねぇ。

それにしてもどのカットもスピード感にあふれていて特にクレーンを使った映像は素晴らしく、興奮します!
撮影のためにあの草むらに一体何日間いたんだろう。想像しただけで気が遠くなってくる。

季節は夏だと思うけど、蚊が一杯いたんだろうな~もしあの場に自分がいたら全身に虫よけスプレー浴びるんだろうな~などと、つまらないことがふと頭をよぎってしまいました。(実際ちょっとしたロケでもああいう場所だと虫よけスプレーは必須アイテム)

さて残る敵はあと3人。
そこへ車で逃げたはずのルイスがガールフレンドを置いて、引き返してきます。そして倒木に乗って乱射するレイに向かって車で突っ込むルイス。

レイの身体が宙に浮いた瞬間、ドニーさんがその腰を狙ってバン!この落ち方がまた痛いのなんの。
しかも腰撃たれたのにまだ動いてるし!ここはルイスとレイの肉弾戦の一騎打ち。両人とも手負いの獅子のごとく満身創痍です。
生きてるだけでも驚異なのに殴り合うとは。

やがてルイスが渾身の力をこめて車に相手の頭をガンガンぶち当てて長男ジ・エンド。
続いてそのルイスを狙って照準をあわせる手下の頭に後ろからドニーさんのライフル弾が。

よしっ残りはあと1人!

ショットガンからオートマチックに持ち替えた次男コリンは弾切れのために近くのアジトにカートリッジを取りに走る。
廃屋のようになっている建物の2階に弾は隠してありました。と、そこへ追い付いたドニーさんが至近距離からライフルの引き金を引く!

が、こちらも弾切れだった!

もうね、この瞬間、本編からなにからすべてのことは、これから始まるドニーさんとコリンとのラストバトルのための壮大な、実に壮大な前振りだったと理解して心から笑ってしまいました。

こうなったらアタシだって全力で最後まで見届けてやる~!

武器はおのれの肉体のみ!
そんな魂の叫びが聞こえてきそうなふたりが繰り広げる、果てしないファイトシーン。

まずは室内で互いの手や足を使っての軽いスパーリングみたいなもの。
コリンの鋭い膝や美しい回し蹴りが家具や窓を破壊して、その威力を見せ付けます。いくつかの有効打を浴び、ちょっと形勢不利なドニーさん。追い詰められて舞台は階段の踊り場に。

そこで相手の蹴りだした足を掴むと背中から落としてマイブームのグラウンド勝負。ひざ蹴りを何発か入れそのまま腕を取って腕十字固め。

本物の格闘家ならここで決めなきゃ恥ずかしいかもしれないけど、これは映画。
もちろん、こんなに簡単に決着がつくはずもなく、瞬きするくらいの間にコリンが身体を返そうとする。速い、速いよ!コリン・チョウ!

今度はコリンがマウントを取ろうとパンチを上から繰り出すのを足で防衛しつつ、その襟を掴んで上半身を引き寄せドニーさんが目にも止まらぬ速さで三角締め、鮮やかです。

でもああ、ドニーさん腰が浮いとるよ、と思った先からその体勢のまま持ち上げられて床に打ちつけられ、ひらりと再び身体が浮いたかと思ったら最後は手すりに後頭部を強打、痛ぇ。ヤバいヤバいよ、ドニーさん。
危機一髪じゃん、こっからどう展開するんだ、思った瞬間「お前も道連れ!」とばかりにコリンを足に挟んだまま、その2階の手すりから一緒にコンクリートの地面に落下。

・・・・あんた、クレイジーすぎる。

今までドニーアクションで一番クレイジーなのは『ドラゴン危機一発’97』だと思っていましたが、これはそれと匹敵、いやひょっとすると超えたかもしれません。

ここで緊張感を盛り上げて来た音楽がピタッと止み、驚くほど静かに。埃まみれになりながら横たわる男たちの荒い息遣いだけが微かに響く。

しかしいち早く敵より起き上がらないといかん、とばかりに体勢を整えて睨みあうふたり。
もうね互いの力の凄さを肌で感じ認めあった者にしか理解できない一種の愛ですよ、愛。

いきなり立ちあがったドニーさんは相手の目を見たまま「こっちだ」と手招き。

おいおい、まだやるのかよ~。

そこで、止んでいた音楽が今度はストリングスからゆっくりと始まる。
このカメラワークが鳥肌モノです。廃屋の俯瞰からクレーンが静かに近づくと、そこには舞台を移し、闘いにそなえて構える男ふたりの姿が。

こうなったらまさに、死ぬのはどっちだ!

あとは彼らの激しい左フックに右ストレートと肘打ち、鋭いキック、ひざ蹴りの応酬。
やがてコリンの回し蹴りが側頭部に決まると、その勢いで板を粉砕し柱に吹っ飛ばされるドニーさん。
遠心力で端に片寄った脳味噌を戻すかのように頭を振ってファイティングポーズを取る彼のクローズアップ。

やがてその鼻からはつつーっと大量の鼻血が。それをぐいっと手でぬぐう。その所作がよかった、身震いするほどセクシーです。

この血で覚醒したのか、内股、巴、背負いと次々に投げ技を連続するドニーさん。
調子に乗って来た!と思ったら、でました、お得意のブルース・リーフットワーク。
とたんに形勢はぐっと有利になってきた。パンチの応酬に一発有効打が入ると、すかさず伝家の宝刀、三段蹴り!美しい。

ふらつく敵の足をカニばさみで捉えると、転瞬、今度はその右足を抱えたまま身体を回転させてひざ十字。素早いです、ドニーさん。

「どわあああああああああ」叫び声が廃屋にこだまする。痛そうだ~コリン!それをなんとかキックでかわしたものの、彼の受難は続く。

弟に続き兄貴もまたジャーマンスープレックスをドニーさんにかまされちゃうわけですね!頭から突っ込んだブロック塀が音を立てて砕け散っとる。

まだまだ行くよー!とばかりにジャケットを脱いでからも次から次へと技を繰り出すドニーさん、とうとう出たよ!ぐるぐるパンチ!いやっほぅ!

現時点でドニー・イェンってどんな人?と聞かれたら、このアクションシーンを見せればそれで一発解決です。
それくらい、どこを切っても紛うこと無きドニー印。

この長い長い男ふたりの闘いには、香港の武術監督でありまた武打星でもあるドニー・イェンのアクションに賭けるプライドと執念があふれています。
ああ、この人がこんなに執念深くてよかった。

とにかく見てる方も息をするのさえ忘れてしまいそうなくらいのアクションです。

たまらんとばかりに逃げだすコリン。ドニーさんはその首根っこに飛びつくとそのまま一緒に倒れ込み、着地と同時にバックを取って、これが最後だ~とばかりに敵の首に腕を回してチョークスリーパー。

この時のやられてるコリンの顔は、マジで見てる方がビビるくらい真に迫ってました。
しかもその真後ろには渾身の力を込め鬼のような形相をしたドニーさんの顔が!
この際の木漏れ日とドニーさんの顔のカットバックはイケてたなぁ。残酷なのに美しくて、なんという見事なコントラスト。

にしても、弾が切れてからコリンが落ちるまで7分30秒ですよ、7分30秒。

すくなくとも私が今まで見たすべてのアクションシーンでも相当長いです。しかもこれを、タイマンのガチでやるとは。
しかもその前の銃撃戦を含めると、15分以上あるわけで。
ドニーさんいい意味でいっちゃってるし、そりゃコリンは2度と香港アクション映画に出たくないと言うわな(笑)。

あああああ、お腹一杯だぁ~、満足満足、大満足。

やはりこれはマーシャルアーツスキルの高いコリンが相手じゃないと撮れなかったシーンだったわけで。
そう思うと、力いっぱいあなたに感謝します。本当にこの映画に出てくれて心からありがとう!コリン・チョウ!愛してるよ!

どのくらい時間がたったのでしょう、この凄まじいバウトが終わったあと、舞台となった廃屋のくずれかけた骨組みに吊るされた空き瓶が、風に揺れて「ちりんちりん」と侘しい音を奏でています。

呆けたように地べたに座り込んでいる馬警部。
階段の手すりには両腕を縛りつけられたコリン・チョウ。

その姿は激しい格闘の末にボロ雑巾のように変わり果て、時折ピクっと筋肉を震わせるのみ。ああ、生きてた。なぜか観客はみな、彼の微かな動きにホッと胸をなでおろすのでした。

そこへ足を引きずり銃弾を足や肩にくらった血まみれのルイス・クーが辿り着きます。互いの顔を見ながら何も語らぬ相棒の二人。

シーンはふたたび冒頭と同じ。車を運転するドニーさんと夕暮れの香港の街並み。
流れ去るオフィスビルに馬軍のインタビューの言葉が重なります。
「自分は間違った暴力はふるわない、判断を下すのは上の人間。それは犯人逮捕のためで、警官の義務だ」と。

この導火線の舞台は公開された07年の10年前、1997年中国返還前の香港です。
これは恐らく内地の検閲逃れの苦肉の策だったのかな、と非常に勝手ながら想像しました。
(なにか言われても、いえいえ、これは中華人民共和国の話ではありませんよ、と答えられますもんね)
そして結構な無茶ぶり暴力警部の馬軍にあらかじめ語らせることで過激なアクションシーンに対するショックを緩和させたかったのかもしれません。

そこまで気を配ったのに、この導火線、実は大陸版というのが存在して重要なコリン・チョウとのラストバウトの中で香港版にはないシーンがあったりします。

ドニーさんご自身は香港版しか認める気はないようですが、私自身はこの大陸バージョン実は嫌いじゃない。

これがあることで勝負がついた後のシーンがより生きてくるし、暴力が生みだすものの虚しさを表現することも出来る気もします。
でもドニーさんはそんな虚しさを表現する気など、さらさらないでしょうね、しごく当然です(笑)!

そしてエンドクレジットでは、ドニーさんの映画には珍しくメイキングシーン(成龍のようなNGシーンではなく、あくまでメイキング)や武打スタッフのトレーニングシーンが登場します。
とにかくラスト15分があれですからね。ドニーさんとコリンはもちろん、スタッフの皆さんも本当に気の遠くなるような作業を連日繰り返したに違いないわけです。

あのクレジットは、そうした全スタッフへのドニーさんからの感謝の気持ちと受け取りました。

それにしても、このドニー組のスタントマンならびにスタントダブルの人たちは凄い。とくにダブルのみなさん。

あの長尺を流れや殺気を壊さずに自身もまたその役になりきってあれだけのアクションを演じ切ったことは賞賛に値します。

そういう意味でも、コリンとのラストバトルは世界最高峰のアクションシーンなのだと、私、ここに勝手に断言いたします。

日本語版DVD鑑賞追記

読み返してみると、ただの実況にしかなってない。しかも無駄に長いし(笑)。

でも、その時の私は興奮のあまりそうせずにはいられなかったんだと思います。
技の名前が間違ってないか、少々心配ですが、今から確認するのはめんどうなので、このままアップしてしまいます。私自身は格闘技ファンでも柔道ファンでも何でもなく、ぼんやりTVで大きな大会を見る程度なので。

それと、これは日本版を最初から見ていたのでは、私のことだから気がつかなかったに違いない台詞。ドニーさんはあの女性上司を「マダム」と呼んでおります。こういうところも香港っぽくていい。

それにしても、こんな傑作の配給を買っておきながら4年も公開もせず、スルーの果てにBDにもせず寂しい仕様のDVD発売のみって、ひょっとして・・・・・ドニーファンに喧嘩売ってる?
跳びつき腕十字かますよ?ああ?

導火線日本予告編
Flash Point U.S. Trailer
Flashpoint – Bande annonce (FR)仏予告(コリンがフランス語を!)
↑実は導火線の予告でこれが一番かっこいい。
ちょっとしたMAD並み(笑)編集した人が楽しんでいたのが伝わります。

導火線 日本劇場公開-ドニー・イェン 甄子丹
導火線 小ネタ-ドニー・イェン 甄子丹

 

 

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