映画 少林虎鶴拳(1977年・香港)

監督・武術指導
劉家良(ラウ・カーリョン)

出演
陳観泰(チェン・クアンタイ)
羅烈(ロー・リエ)
汪禹(ワン・ユー)
李麗麗(リリー・リー)

黄金期のショウブラ映画を観ているとかならず目にする劉家良(ラウ・カーリョン)という名前。

自分のために、まずは彼の家族関係をメモ。

あの伝説の武術家、黄飛鴻の弟子である林世榮から洪拳を教わったという父を持つ劉 家良は、いわば本物の黄飛鴻の直系ともいえるお人です。
香港に渡ってから50年代のクワン・タッヒン主演「黄飛鴻シリーズ」に父とともに武術指導や脇役として手伝ったことをきっかけに映画界入り。
俳優、武術指導で活躍した劉家榮(ラウ・カーウィン)は実弟であり、また<少林寺三十六坊>で一躍スターになった劉家輝(ラウ・カーファイ)は幼いころから劉家の経営する武術館で学んだ縁から劉家に養子になったという義弟にあたります。

そんなラウ・カーリョンが監督し武術指導をしたのが、この映画。
のっけからタイトルバックで羅烈(ロー・リエ)演じる白眉道士と少林寺の至善禅師との死闘から幕を開けます。すげー。
この白眉道士の技がまたすんごくて、至善禅師はあえなく亡くなるわけですが、こういうオープニングって功夫映画っぽい。観ててわくわくしてしまいますよ!

冒頭に続いたのが、監督の義弟である劉家輝の見せ場。これも非常に痺れます。なんだなんだ、この畳みかけるような最初からの展開は!
さすがは劉家輝、動きの切れやスピードが別次元。武蔵坊弁慶で知られる「弁慶の立ち往生」もびっくりの最期を見事に決めています。

ここだけ観てるとつい忘れてしまいそうですが、主役はチェン・クアンタイ演じる洪熙官。
この洪熙官(ハン・カーロ)というのは清朝時代に実在した武術家で、かの黄飛鴻が師事した福建少林寺・洪家派の始祖とされた人物。なので様々な映画やTVドラマで主役として演じられてきたヒーローでもあります。

私がはじめて洪熙官を観たのは、溺愛する香港武打星、甄子丹(ドニー・イェン)が1994年にTVで演じた<クンフー・マスター 洪熙官>のダイジェスト版DVD。
当然ドニーさんの歌うこのドラマの広東語主題歌「理想」もi-podの「功夫プレイリスト」にしっかり入っております(笑)。

ま、そんな話はさておき。
前半のこの展開に、ものすごくシビアな功夫映画を想像してたら、話は段々和やかな(状況はあんま和やかじゃないはずなんだが)方向に。

潜伏中に出逢ったリリー・リー演じるツンデレ方詠春と祝言はあげちゃうわ、その初夜にいきなり武術対決になってしまうわ、もうこれって何ていうラブコメ(笑)。

でも自分はこの展開すごく気に入りました。
やがて息子が生まれて3人で暮らす生活も見ていて俄然微笑ましい。お父さんは当然復讐を忘れたわけではなく朝から虎形拳の鍛錬に余念がない。
そのうえにお母さんは鶴形拳(てか、詠春とくりゃ、あの型だしさ、本当は詠春拳なんじゃないの?という突っ込みは置いといて)の達人ですからね、日々の暮らしの中にしっかり功夫は溶け込んでいて、洗濯中の母親に息子がいきなり襲いかかってそこから勝負が始まったり、親子3人の夕餉でも唐突に父子が一切れの豚肉をめぐって茶碗が割れ、物干し台が破壊される対決になってしまったり(笑)。
いいなぁ、こういう家に一晩でいいから泊ってみたい。

少し前に観た2005年制作の<ドラゴンプロジェクト(原題)精武家庭>に至るまで脈々と受け継がれる香港アクション映画のこういう力自慢の生活描写(有名なのは成龍の‘拳’シリーズですよね!)は観ていて本当に楽しい限りです。

おまけに嫁さんに怒られて、繕いものをするチェン・クアンタイさんまで拝めました。ヤバいです、萌え死ぬかと思いました。この映画のアットホームなクアンタイさん好きだ(笑)。

と、すごくぬるい展開になったかと思いきや、そこは洪熙官。血のにじむような修業を経てちゃんと白眉道人に復讐しに出かけます。
ここからまた軌道修正して、展開は男の復讐物語へと突入。
しかし志半ばでまたしても宿敵に敗れ今度は命を落とす父、洪熙官。そこで主役の座を突然息子の洪文定にバトンタッチ(笑)。父の仇を討つために、果たして文定は白眉道人を倒すことが出来るのか?

この映画、ものすごく面白かった!
男くさいチェン・クアンタイが出てるからと思い、普通にシリアスなストーリーかと想像していたら、まったくいい意味で期待を裏切ってくれました。
あのアットホームな洪熙官は彼にとっても異色なキャラクターだったのではないでしょうか。

今後「ショウブラザースの功夫作品を観てみたいけど、どれから始めていいか分らないの」という若い女性がいたら(笑)迷わずこの少林虎鶴拳を勧めることにいたします。

少林虎鶴拳予告1
少林虎鶴拳予告2

 

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