原点はユエン・ウーピン。
前回ドニーさんの『冰封侠 重生之門』のことをエントリーしたあと、つらつら思いを巡らせておりました。
アクションは当然面白かったし見応えがありました。が、勢いで書いたものの、あれは自分の感じた事の全部じゃないなって。
この作品で一番もったいないと残念だったのは『タイム・ソルジャーズ/愛は時空(とき)を超えて』という極上の題材がありながら肝心の「古代人が現代で右往左往する」という素晴らしい愛されキャラクター設定をまったく活かさず、人物像やストーリーではない放屁とか便器爆弾や他作品のパロディなど表面的な「お笑い」シークエンスに力を入れちゃった、というところ。
この映画ロー・ウィンチョン(羅永昌)が監督としてクレジットされておりますが、ドラマ部分も含めほとんどはドニーさん本人が監督していると言っていいのだと思います。
なぜならサイモン・ヤム1人の場面になるとそこだけ明らかにトーンや絵作りが違う。ジョニー・トーのような緊張感が漂う多分これがロー・ウィンチョン監督が単独で撮ったシークエンス。それ以外のドニーさんのドラマシーンは監督がいたとしてもドニーさん主動だったと想像するんですよね。
少なくともアクションシーンでは他の誰かが便器爆弾をやらせようとしてもドニーさんが必要ないと言えば絶対に実現することはありません。もうそれくらいのスターでありアクション監督なわけで。だからあそこは他でもないドニーさん自身が「いい」と思って取り入れたエピソードです。
たまたま昨日、出張先から帰京した足で中田圭監督と「第33回香港金像奨を総括する」と題した会食をいたしました。
話すうちに観たばかりの『冰封侠』のことに。その流れで『在一起(原題)』の話題になったところで唐突に蘇った。過去彼の監督作『ツインローズ』でも道一面に転がってる犬のフンをツインズのシャーリーンが走りながら避けたりしてたなぁと。そうだドニーさん、昔からウンコ好きだったんじゃん!
それはオープニングこそスタイリッシュなアイドル映画然としていますが気がつけば誰得?なシークエンスや正直どこが面白いのか自分にはよくわからない(笑)滑ったギャグが全編に散りばめられたアクションコメディ作品でございました。私としたことが忘れておりましたわ。
・・・『冰封侠』はやっぱりドニーさんのセンスだ。
そういえばレビューで『これは「ウンコ」「しっこ」「おならブー」と言うだけで笑い転げる小学校1年生くらいがターゲットなのでしょうか。』と書きましたが、その小学1年生こそドニー・イェンその人です。なるほど共演した女優のほとんどから(最新は冰封侠で共演した黄聖依)「彼は子供みたいな人」と言われるだけある、さすが宇宙最強。
そしてそのセンスの原点がどこにあるかといえば、間違いない、ユエン・ウーピンだ。
ウーピン師匠が量産していた時代彼の功夫映画を思い返すとまさにこの小学1年レベルのお下劣かつ単純おバカなギャグをこれでもかと畳み掛けてくることがお約束となっておりました。これぞ純粋ウーピン印。
アクションもさることながらそのベタなギャグの数々は成龍という唯一無二のキャラクターと融合しTV放映された翌日の教室で小学生がこぞってマネをするという結果を生んだわけです。
そのユエン・ウーピンが監督しドニー・イェンを主演に据えたコメディが『ドラゴン酔太極拳』と『情逢敵手(原題)』という伝説の2作品。
『冰封侠 重生之門』は彼がユエン・ウーピンのあのセンスまでしっかり受け継いでいるという証、ある意味原点回帰の1本であります。なんという恐るべき師弟関係。
ただそれがドニーマニアの暖かい愛情があればこそ楽しめても、この21世紀に3Dで撮った甄功夫作品としてたくさんの観客に愛されるかどうかは私にも分りません(笑)少なくとも「ドニーさん、マニア向けじゃないなら自分でコメディ撮るのはやめたほうがいい・・・」と心の中で呟いたことは事実です。
このコメディセンスの非常に近い師弟が、この後がっぷり四つを組んで制作するのが『グリーンデスティニー2』(ユエン・ウーピン監督)と『イップ・マン3』(ユエン・ウーピンアクション監督)という話題作。
正直、今から色んな予感がしてドキドキしております。
関連テキスト
冰封俠 重生之門 ICEMAN 3D(2014年、香港・中国)@HK-ドニー・イェン 甄子丹
冰封俠 重生之門 ICEMAN 3D(2014年、香港・中国)その3追記
この作品ってアクションコメディーだったのですかぁ?!
トレイラーやらポスターやら「むっちゃドニーかっこええわぁ」と見にいけない
のが残念で 今から「早よDVDでないかな」と期待して待っていて
ママさんレポート絶対あるだろう とこちらも期待して待っておりました
>ドニーマニアの暖かい愛情があればこそ楽しめても、この21世紀に3Dで撮った
>甄功夫作品としてたくさんの観客に愛されるかどうかは私にも分りません(笑)
むむ そんな心細いことおっしゃらないでくださいませ(笑x2)それにしても
この作品については いろいろご意見が分かれそうですが、今後のウーピンがらみ
作品はきっとたくさんの観客に愛されること間違いないですよね?
話変わってシブミの中の方と 武侠の谷垣さんの相棒の人 同じ方だったのですか?
知る人ぞ知る方であったとは 何かで知りましたが(いい加減)
ホントにママさんの 細かい点までの解説は勉強になるな~~ ありがとうございます
でもあのユエン・ウーピン監督の初期2本に近いテイストを私は感じちゃったんですよねぇ。踊りながらズボンがなぜか脱げるとか、そこにあるチョコを食べたら中は画鋲だったとか、とっても小1的(笑)
まぁアクションシーンに関しては無駄なギャグはなかったので、それで自分はヨシですわ。
そういや彼がアクション監督したTVシリーズ『THE PUMA』でも稽古中に道着のズボンが脱げてミッキー・ハートの尻がアップになったりしてたんで、『冰封侠』は完全にドニーさんのセンスです。
『ドラゴン酔太極拳』と『情逢敵手』をドニーさんはじけてる!と面白がれるファンにはまったく無問題ですから、どうかご心配なく。
>今後のウーピンがらみ作品はきっとたくさんの観客に愛されること間違いないですよね?
そうあることを心から祈ります(笑)