ドニーさんめっちゃ飛びだしてた!と第一声に言いたくなる3D。
香港に行く前に蘋果日報でぶったまげるようなすごいフッテージ映像を見て、かなり動揺したまま本編を観ることになったのだけど、かえってそれで良かったみたい。
お話は、明朝時代雪崩に巻き込まれ冷凍保存された錦衣衛が400年の時を経て現代に蘇るというもの。しかも事故直前まで戦ってた怨念を抱えた男達も一緒に蘇ったもんだから香港は上を下への大騒ぎ、という映画。
1989年に公開されたユン・ピョウとマギー・チャン主演『タイム・ソルジャーズ/愛は時空(とき)を超えて』のリメイクと謳われておりますが、まぁ例によって設定だけお借りしたオリジナルストーリー。
冷凍カプセルを積んだトラックが事故を起こし、解凍された主人公が登場するところからいきなり始まります。テンポいいじゃないの。
「うお、ターミネーターか?」とビビって隠れる盧海鵬(ロー・ホイパン)さんを尻目にすくっと立ちあがったドニーさん、やおら400年分の放尿。
そう、この映画、ゲロ度は薄め(やっぱあるんかい)ですが、それ以外のものが結構ございます。
自分が見てぶったまげたフッテージというのが、まさにそこを特集したものだったわけですが、これはあらかじめ知って覚悟しておいた方がよさそうな気もするのでここで書いちゃいますね。
と、いうわけでネタバレです。
まずトイレの水を飲みます。古代錦衣衛なんでトイレが分らないから井戸と思うわけですね。これはオリジナルであるタイムソルジャーズから採用したエピソード。
そして豪快に放屁もします。1回じゃなく2回。それが今時TVのコントですら聞かないような威勢のいい音でして。
おまけにウンコ爆弾があります。しかも直前に便座に座るサービスつき。2回の放屁のうち1回はここで放たれます、かなりいい笑顔で。
その後、特殊部隊が突入したタイミングでこの便器が爆発、屋根を突き抜け無駄に3Dで宙に飛びだしたりする。当然、内容物も一緒です。で、そいつが包囲した警官隊に・・・合掌。
立ちションシーンももう1度ございます。両方ともに野趣満点てなもんじゃない、立ちションというより放射。ここまでくるとクスッとする人もいるでしょう、私がそうでした。
(あ、警官隊のなかにジョン・サルヴィッティの内トラもありました。さすがリアル軍隊にマーシャルアーツ指導してるだけあって様になってる。でも帽子の下はカツラ)。
このフッテージをネットで見た時はかなりうろたえました。その際の正直な感想はさすがのワタクシをもってしても「どどどどどこへ行こうとしてるんや、宇宙最強!」
世の中には「厨二病」という言葉がありますが、これは「ウンコ」「しっこ」「おならブー」と言うだけで笑い転げる小学校1年生くらいがターゲットなのでしょうか。
が、事前に知ってたお陰かどうか、流れの中ではそれほどショックでもなく普通に流して見ることが出来たのが不思議。
初見だったら劇場の椅子からずり落ちたかもしれません。実際客席からは悲鳴ともつかない「うげええ~」という唸り声のようなものがあちこちから漏れておりました。天は我に味方したね!
そんな誰得?なシーンさえやり過ごせば、あとはカッコいいドニーさんがいっぱい登場します。
なかでも九龍尖沙咀にある香港大空館のドームの上で仁王立ちする長髪錦衣衛姿とか、「自分で考えたんっすよね、そのショット!」と突っ込む隙もない位かかかかっこいい。
CGはその前に見た成龍の『ポリス・ストーリー/ レジェンド』のほうに軍配は上がりますが、心配したほど悪くない。
アクションも相手役の王宝強(ワン・バオチャン)くん頑張ってて、中国では彼が盾を持ってるのでキャプテン・アメリカ『美国隊長』ならぬ『中国隊長』とか言われてる。
この王宝強くんは大陸で今とても人気のある俳優。
内地スターのほとんどが有名大学の映画科卒業のエリートというなか、異色の経歴の持ち主です。
ジェット・リー(リー・リンチェイ)の『少林寺』に憧れ両親の反対を押し切り俗家弟子として8歳の時に東嵩山少林寺に入門。6年に及ぶ厳しい修行の末に“恒志”という法号ももらい、その後、映画やテレビのエキストラをしつつ建築現場などで働きながらスターを夢見ていたという苦労人なのです。
ちゃんとした役をもらったのは2003年ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した李楊(リー・ヤン)監督の『盲井』(中国の社会問題を描いたとされるこの作品は内地では上映禁止)。
これが認められ、TVドラマや馮小剛(フォン・シャオガン)監督の『イノセントワールド -天下無賊』『戦場のレクイエム』に出演、そして2012年に中国映画の興収歴代1位という大記録を打ち立てた『人再囧途之泰囧』というコメディで誰もが知るスターのひとりになりました。
少林寺出身ながら、今まで本格的なアクション映画に出演したことはなく今回が初めて。
ドニーさんも小柄ですがさらにちっちゃい宝強くん、当り前かもだけど動きがいいよ。
狭いディスコを舞台にしたシーンはまず2人のワイヤーなしという白打の闘い。お互いに古代人だからか、MMAは使わず当然ながら功夫対決。このあとたっぷりCG処理しますからね、最初はシンプルに。見応えあったわ!
そこへきてSEがいい。音楽もいい。川井憲次でも陳光榮でもないのは新鮮でした。担当したのは『ヒーロー・ネバー・ダイ 真心英雄』『暗戦 デッドエンド』『少林サッカー』『カンフー・ハッスル』などの黄英華(レイモンド・ウォン/ウォン・インワー)。
そしてクライマックスは17分にも及ぶ青馬大橋でのラストバトル。
カースタントコーディネーターはブルース・ロウ。まずはこのカースタントが派手に決まってます。
ちょうど同じ時にダンテ・ラムの『魔警』でン・ホイトンのカーアクションを観たので、この2人のテイストの違いを感じるのは楽しかった。
に、してもすんごいスケールがでかかった!間違いなくドニーさんにとっては最大のスケール。
なにしろ100台の車両と数百人のエキストラ(フカした数とは思うけど)を使い、半年かけて撮影したそうですよ。2人乗りのVespaでの追跡に始まって白馬に乗り替えランボルギーニとの一騎打ち。そこへ宝強と、甄家班の1人から今回俳優へと転身したユー・カン(喩亢)が車の屋根をパルクールしながら迫ってくる。ユー・カンってのは『かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート』のシブミの中の人および『捜査官X』で谷垣さんの相棒役だった人ね。
スピードは速いし色んな物が飛び出してくるしで、もうなにがなにやら(笑)。こっちの息が上がりそうだ。とにかくパワフルで見てるだけでお腹が空きそうな勢い。
決着はどうなる?と思ったところでドニーさん、吹っ飛んできた車にぶち当たって橋から海にドボーン、うお!と息を飲んだところで「続く」。
そう、これは前後編なのでした。ボーンシリーズかよ!と突っ込みたくなる水中カットでアクションシーンは終わり。いや~ん、続き見せてくれー!!!
その後は警察の副署長だと思っていたサイモン・ヤムも実は400年前に一緒だった錦衣衛の義兄弟の1人とわかり、謎が謎を呼び、ってとこでテーマソング。
アクションシーンはね、本当にすごかった。それぞれの武器が個性的。こっちにむかって放たれる円盾とかドニーさんの鎖とか、文句なしにカッコいい。
スケールの大きさにびっくりしたままあっという間に終わった気がしたくらい。しっかしアクションデザインのヴァリエーションが豊富ですね、さすがですドニーさん。
作品のテイストとしてはコメディタッチ。悪役とはいえ、そこは王宝強、美味しいところをさらう場面もたくさん。
ただ前後編という事もあって壮大なるイントロダクションで終わるのは映画としてはどうなんすかね。
マーベル風味もあったり雪ちゃんをこっぴどくいじめたり、ニンマリ度はとても高い。そのうえでドニーさんの笑顔とか結構自然で超キュートだったし。
ま、自分が良ければそれでいいか。
ここで制作秘話。
王宝強くんは8年前の駆け出しの頃、知り合いの業界人に頼み込んで北京に映画のプロモに来てたドニーさんに面会させてもらったことがあるそうな。その時に「自分はアクション映画に出たいんです!」と蟷螂拳を目の前で披露したらしい。彼は何かにつけオフィシャルの場で「功夫映画に出たい」と言い続けていた俳優。
この作品のプロモーションでは
「子供の頃から丹哥の映画を見て育ちました。丹哥は僕のアイドル、あれから8年です、痩せた小さな子供の功夫映画に出たいという夢を丹哥が叶えてくれたんです、彼には心から感謝しています」と明かし「丹哥は撮影中ずっと刀と盾の扱いを教えてくれたんだ、丹哥は斉天大聖、現場では不可能なことなんかない、まるで72般の変化の術みたいにどんな武器でもうまく操ることが出来るんだよ、丹哥はね、丹哥はね、丹哥は・・・」とまるで熱狂的なファンみたいに話し続けて、あの「自分大好き誉められるのも大好き」なドニーさんに「わかった、わかった、宝強、俺にも喋らせろ」と言わせたくらいですからね。
恐ろしい子、宝強。
この懐きようにドニーさんも彼が気に入ったようで『冰封侠』1,2に続き『一個人的武林』でも共演ですもん。可愛がってることがうかがえます。こっちのほうの宝強はマジでシリアスな役どころの様ですよ。
さて、ここまでネタバレしちゃったんだから、もうひとつおまけ。
劇中ドヤ顔してクラブのママに差し出した紙は「大明通行宝鈔」という明朝時代の紙幣(『処刑剣 14BLADES』にも登場しました)。
当時も使える場所は限られていたようであんまり当てにならないお金だったらしい。これが何を意味するのかは一般教養のようで、このシーンでお客さん大いに笑ってました。
オリジナルのように自分を助けてくれた小美(黄聖依、ホアン・シェンイー)のためにお料理をするシーンなども実は撮ってたようです。スチール写真では見ました。
が、本編では思いっきりカットされてましたね。自分としては現代の生活にパニくる錦衣衛の姿が楽しみのひとつだったのですが、そこはさらりと流されてしまい、残念。
谷垣さんが手配したと言うスノボ場面もちゃんとJapan crewとしてクレジットがありました。私たちは彼のインフォメーションのお陰で事情を知ってますが、中国人にしたら一体どこを日本で撮ったんだと不思議でしょうね。
今日無事に大陸でも公開されたので、ちらっとネットを見たらランタイムが90分切ってるみたい。香港では確か103分という時間だったから結構カットしたようで。どこを切ったか知らないけど、ひょっとしたら大陸版位のコンパクトさのほうが、よりイケてるかもしれません。
ところで後編の公開はいつなんでしょう、早く続き観たいなぁ。
どうやら中途半端な長さのカツラがうっとうしかったらしく(長髪はともかく、あの外ハネはちょっと生活に追われた奥さんちっくだったよドニーさん)早々に髪を切り見慣れた短髪姿の様ですよ。
ストーリーは分りませんが、今度の敵は倭寇でっせ、南北朝時代の日本の海賊っす。ラスボスは・・・噂によるとすんごいお人。
それが本当なら絶対に見応えのある対決になりますね、楽しみだ!
《3D冰封俠:重生之門》先行預告 ICEMAN 3D Official Teaser Trailer
Iceman 冰封俠: 重生之門 Official Trailer
ICEMAN Final trailer:Donnie Yen 冰封 重生之門最終預告:甄子丹
私がかなりうろたえた映像はコチラ いや、別に自分を落とさんでええから。
王宝強くんをスパルタで鍛えた一端は↓
《3D冰封俠:重生之門》 製作特輯之蘭桂芳Disco ICEMAN 3D 2nd Making of
宝強いわく、丹哥の設計はシンプルに見えてすごく高度な動きで大変苦労したらしい。
ドニーさんはなにかってーと「いいよ~、これはキープね。今は60パーだけど、もう一度やって80パーにしよう、うまくいったら昼飯だ」とか、OK出したら黙ってリンゴを渡すとかある日はそれがバナナだったとか、始終食いもので釣ったらしい(笑)。
まるで動物の調教じゃないすか、それ。
関連テキスト
冰封俠 重生之門 ICEMAN 3D(2014年、香港・中国)その2
冰封俠 重生之門 ICEMAN 3D(2014年、香港・中国)その3追記