モンキー・マジック 孫悟空誕生(西遊記之大鬧天宮:2014年、香港・中国)@HK- ドニー・イェン 甄子丹

運命が葉問にドニーさんを選び、今度はドニーさんが自ら孫悟空を選んだ。


香港で観てきた。めっちゃ飛び出してた!と言いたいけど、そこは想像してたより少々大人しめでした。

今回はノーマルの3DとIMAX3Dの両方を観ましたよ。よく考えたら自分IMAX3Dって初体験。
なにやら大陸でバカヒットしているらしく、華語映画初日最高興収記録だの最短億元到達記録だのと華々しいニュースが飛び込んで来て嬉しい限りでございます。

批判的な意見として「CGがショボイ」というのは目にしていたので、そこにあまり期待はしなかったのですが、結論からいいますね。大陸で成績がいいのは多分みんなIMAXで観てるからかもしれません。

そう、これはIMAX用の映像です。

残念ながら普通の3Dバージョンだとぶっちゃけ映像は甘いところが多々あります。

実感としてはノーマルの方は3D映画を2Dでしかも自宅のモニターでDVDで観るくらいの差があってとほほ。なんであんなに違いが出るんだろう。その辺りがボロクソに言われちゃう理由なのか。

自分は他の3D作品をIMAXで観比べたことがないのでわかりませんし技術的なことをまったく理解していない前提で話しますが、たとえば『ライフ・オブ・パイ』や『ゼロ・グラビティ』を普通の3Dで観た時のあの衝撃を考えると、これらのIMAX版(存在するかどうかも知らないけど)はどんなことになってたんだと空恐ろしくさえなります。どころか『ゼロ・グラビティ』なんか飛行機のオンデマンドの小さな画面ですら普通に観れましたからね、恐るべし。

普通の3D版鑑賞時に気になった平板な絵や、分りにくかった画面とかシーンごとのバラツキ感もIMAXだと見違えるほどしっかり奥行きがあって、こんなに差が出るものかと物凄く驚きました、

まるでまったく違う映画みたいでしたよ。厳しい言い方ですがそれでやっと見られるクラスという・・・。うーむ、せめてあのレベルをIMAXじゃなくても出来てれば。

ハリウッドの「アバター」や「ロード・オブ・ザ・リング」等を手掛けたというチームが参加したためか、本来の方向性は「飛び出す」というよりどうやら奥行きを重視したようで。

実はハリウッド参加を売りにしながらもCGを手掛けたチームは中国韓国インドや日本、ドイツ、オーストラリアなど何カ国もの会社が参加。
シーンによって完成度にバラツキを感じたのはそういう理由もあったようです。

クランクアップが2011年でそこから3年も何してたんやと自分なんかは秘かに思っていたのですが、やはりこのポスプロに時間がかかったみたいで、まだ時間が足りなかったのだとか。

「会社によってソフトも違うし、それぞれの違いを調整するだけでヘトヘトになった」とは監督ソイ・チョンの弁。

とはいえ通常の3D版であっても、ネットに溢れ返っている先行予告やメイキング映像に比べれば、うんとうんといいですよ!2Dだと・・・・どうなるのかなぁ。ちょっと心配。

とにかくこの作品はIMAX版が完成品のようです。

けれどもこうして上映方式で映像の完成度に差が大きく出るというのが「ショボイ」と突っ込まれる所以なのでしょうか。さすがにそこは仕方ないのかも。

さてさて、そんなしょっぱい考察はさておき、映画の内容です。


この映画なにが凄かったって、チョウ・ユンファがめちゃめちゃ綺麗なのよ。眼がね青いの!

それで神々しいお衣装を着て宙を舞いやさしい眼差しで猿を眺めたり龍に変身して戦ったりするわけですよ。いや、今までも魅力的なユンファはいっぱいあるけどこの玉皇大帝にはマジで惚れ惚れしました。

一方牛魔王のアーロン・クオックは自ら「子丹は宇宙最強、でも僕は宇宙一カッコいい牛魔王さHAHAHA」と言うだけあって、いや男前が過ぎます。

てかあなたのそのピカピカのお肌と完璧な横顔は一体どうなってるんすか。

この素敵な2人のクローズアップがふんだんでそれだけで圧倒されます。オープニングから美しき男たちの闘いですからね、掴みはオッケー!最初からハイライトかいっ!てくらい見応えあります、どんだけ豪華なんだ。

で、我らがドニーさんですが、見事に・・・猿です。5時間かけてメイクしたというだけあってぱっと見て誰だかわかんない。

まぁ、私はファンなのですぐ慣れて「この動きやっぱドニーさんじゃん!」と楽しく観ましたけど。

それでも初めてこのビジュアルを見た時は「よくぞここまで本人とわからないようなのを承知したなぁ」と思ったものですが、その後記事を読んだらあそこまでしたかったのは他ならぬご本人だったという。

しかもこの話には続きがあって「実はね、ポスターにも俺の名前を出さないように提案したんだよ」と告白してました。さすがにそれは却下されたようですが。(とりあえず思い付いたら口に出すドニー・イェン方式)

誰だか分らないビジュアルにこだわった理由としてご本人は「葉問を忘れて皆にはこの映画を見て欲しかった」と語っています。
記事にはそれ以上の説明はなかったので、なんとなく「代表作がなきゃないで苦労するけど、あったらあったでそのイメージを覆すのに苦労するんだなぁ」なんてことをぼんやり思っていたわけです。

が、作品をこの目で観て、ドニーさんが目指したという「東方のスーパーヒーロー」という言葉がすとんと腑に落ちたのです。

孫悟空であって孫悟空でない、孫悟空を超えたアイコンとしてのスーパーヒーロー孫悟空。

彼は本気でスパイダーマンやアイアンマンを目指しました。
よってあの特殊メイクはスパイダーマンのマスクやアイアンマンのアーマーと同じです。
演じているのが誰だか分らない、だからこそ観客がすんなり入り込めるヒーローの姿。

それまでの人生を一変させたという葉問のことを彼は「映画の持つ影響力を初めて知った」と何度も口に出しています。

「”葉問を観て自分のルーツである中国文化に何の興味も示さなかった孫が急に興味を持ち始めた、ありがとう”とたくさんの人から言われたんだよ」とドヤ顔で喋ってました。

幼い頃、移民として渡ったアメリカで初めて自分のルーツと中国人であるという誇りを強烈に感じさせてくれたブルース・リー。彼の映画を見まくり中華服を着て手作りヌンチャクを持って学校に通ったドニーさんにとっては、それは何よりもうれしい言葉だったに違いありません。

そこで今度はスパイダーマンやアイアンマンをヒーローとして愛する現代の子供たちに、孫悟空という偉大なるヒーローを知ってもらい愛してもらいたかったんだと強く感じました。

そのために自分と分らないほうが効果的なら、むしろ進んで「マスクを被る」という決意を持って。

しかもハウッドなら全CGになるところ、特殊メイクで顔は変えるけど演技(アクションも含む)は自分だぜ!というところがドニーさんらしいじゃありませんか(すでに自分にはラストファイトはなかったことなってる)。

本当に猿ですもん。

しかもめちゃんこカワイイときた。もうねひとつひとつの動きや表情に萌えまくりです。
特に玉皇大帝や菩提祖師とのやりとりとか萌え死ぬかと思いましたよ。要所要所で見せるあの哀しげな顔ときたら!

どこの国にも原作厨というのはいて、ましてこれだけ世界中で人気のある物語です「改編しすぎ」「悪編」と喧しい意見もありますが、そんな意見が出ることなど多分制作陣は百も承知でしょう。

だってこれはスパーヒーローを描きたかったんですから。大帝のキャラが違って自ら戦場に赴くのも二郎神が裏切り者なのも、牛魔王が孫悟空を利用するのも、すべては孫悟空というスーパーヒーローが何故天宮をぶっつぶすのか、そしてそこでどう成長するのかという動機づけなんですってば。

帰宅して色んなレビューを読みましたが、その中で、ものすごく素晴らしいコメントを発見したのでご紹介。
VARIETY紙 Film Review: ‘The Monkey King in 3D’ レビューの方はMaggie Leeというコラムニストが結構批判的に書いていますし、コメントの方もボロクソに言う人がいる一方で、お薦めしたいのは、そのひとつに対するレスポンスの方。

シンガポール人のWayne Hengさんが自分の子供と甥にこの映画を見せた話を書いています。

彼女は、2人の子供がまったく孫悟空を知らず、スパイダーマンやバットマンがヒーローとして人気のある環境にいると言います。

なんとか西遊記に興味を持ってもらいたくて昨年、チャウ・シンチーの『西遊・降魔篇』を見せたらかえってものすごく怖がってしまったのだそうな(自分も観ましたがさすがに最初にアレはキツイですね)。なのでその緩和策にとジェット・リーとジャッキー・チェンの『ドラゴン・キングダム』を見せ、先日子供たちをドニー・イェンだからと劇場に連れて行きました。2人の御子さんはこの映画をとても気に入って「早く続きが見たい」と喜んだそうです。

「この映画は子供たちへの偉大なる名作『西遊記』への導入には申し分なかった、改編はされているけどスピリットは失われていない、この映画が手放しで素晴らしい作品というわけではないかもしれないけれど、今現在見ることのできる最高の西遊記の映画です、素晴らしいストーリー、素晴らしい演技、素晴らしいディレクティング」そして次はTVBのシリーズの西游記を見せてあげる予定だそうで、彼女は最後に「この映画がヒットすることを願っています」と結んでいます。

長々書いてきてここへきてこんなことを言うのもなんですが、彼女のこのコメントを読むだけでドニー・イェン版『西遊記之大鬧天宮』に対するポジティブな評価は充分かもしれません。

映画に対するドニーさんの献身的な努力は、このコメントと同じ気持ちになった親御さんや映画を観て喜んだ子供たちの笑顔と莫大なる興行成績で充分に報われるでしょう。

なにしろご本人が「初めて子供たちにプレミアで自分の映画を見せられる」と大層喜んでましたからね。

葉問という役は、運命がドニーさんに与えた役でした。

この孫悟空は、その新しいステージから一歩踏み出したドニーさんが意図を持って選んだ役であります。

彼がこの役を説得力を持って演じることができ、またその努力が具体的な成功という結果を生んだことを、一ファンとして本当にうれしく思っています。
ヒットおめでとうございます。よかったね、ドニーさん。

あの自由奔放な孫悟空がスーパーヒーローとして一人でも多くの人の記憶に残りますように。

最後に「メイクが大変すぎて絶対に続編はしない」と宣言したドニーさん(いや、だからあそこまでするって決めたのは・・・略)、まぁ言うことコロコロ変えるお人ですし、映画が興収新記録でも作って気分がよくなればシレっと続編に出ても驚かない。

【西遊記之大鬧天宮】最終版預告
ピーター・ホーさん悪役でしたが、なかなか美味しいシークエンスありましたね!彼の額の第三の目妙にセクシーでしたわ、あと€九尾狐役の夏梓桐、なかなかこういうキャラには共感できないのですが、この役はとても良かった。かわいい!でも彼女の連れていた着ぐるみ君たちは可愛くなかったけど・・・(笑)

追記:
ドニーさんの現場での悪戦苦闘の一端はコチラで
new! Donnie Yen Road to THE MONKEY KING《西游記之大鬧天螳ォ》獨家記録片 甄子丹

谷垣さんや下村さんはじめ日本人スタッフもたくさん参加しています。
スタントだけでなく功夫環(kung-Fu ring)と呼ばれるリング状の新しいワイヤー装置を操作したり俳優のサポートに青の全身タイツを着て奮闘している人達はみんな甄家班の皆さん。
谷垣さんによるとこの功夫環、€ひとつ90万円もするらしく日本の会社とアメリカの合資会社が作ったマシンだそうで。普段はモーションキャプチャーでよく使われるそうであります。

最初はレンタルしてたのが、撮影があまりに長期にわたるので結局2台買ってしまったと、プロデューサーが話していました。彼の言い分だともっと高額でしたが(笑)。

とにかくすごい人数が関わっているのでエンドクレジットも長い長い。あちらはクレジットを見る人なんかいないから、映画が終わるとさっさと席を立ち掃除のオバちゃんが入ってきて作業を始めちゃう。だからなかなかアクション班の名前を確認するのもままならん。

そんな誰も聴いていないだろうクレジットソングがすごくよかった。

歌うのは葉問シリーズでサイモン・ヤムの息子役だったカールソン・チェン。彼は李哪吒の役でも出演してました。風火二輪がカッコよかったよ!ドニーさんと空を飛びつつファイトしてます。
これ、めっちゃいい曲、ベトナムでも3月に力を入れて公開するらしくベトナム語でこの曲がカバーされていて劇場で流れるようです。
鄭家星 Carlson Cheng – 《愛在天地動搖時》 (西遊記之大鬧天宮-電影主題曲)
クレジットが長すぎるのでもう一曲かかってた。こちらはロックです。
《西遊記之大鬧天宮》全球推廣曲MV

 

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モンキー・マジック 孫悟空誕生(西遊記之大鬧天宮:2014年、香港・中国)@HK- ドニー・イェン 甄子丹 への8件のフィードバック

  1. きなこおに のコメント:

    日本の西遊記とは、全然違うんですね!
    河童とか猪八戒とかは登場するんでしょうか?

    しかし、猿はリアルですね~!

  2. yukasway のコメント:

    はじめまして!
    きっと香港まで見に行ってらっしゃるんだろうなと投稿お待ちしてました!!
    超絶カワいいド兄孫悟空を私も早く見たいです!
    超ヒット街道ばく進中とのことでうれしい限り、やはりココはシレっと(笑)
    続編も演ってほしいですね縲怐O^

    • ケイコママ のコメント:

      きなこおにさま
      「大鬧天宮」は三蔵法師と一緒に旅する物語の前段にあたるお話です。
      なので猪八戒とか沙悟浄が登場する前なのです。ちなみに沙悟浄さんの河童というお姿は日本オリジナルなんだそうで。日本では岸部シローさんのイメージがずっとありますね、偉大。

      yukaswayさま
      はじめまして~
      なんか続編ではすでに三蔵法師をルイス・クー、猪八戒をホアン・シャオミンという噂が出てますよ。うおお。
      そういえば、最初と最後のナレーションをルイスが担当していて、最後に「500年後五行山から出た彼は私と一緒に旅に出ることになる」というようなナレーションに唐僧の後姿がチラリと映ったのでそう言われているのでしょうか。正式発表が出るまではよくわかりません。というか続編を今年9月から撮るとかいう噂もあって、まぁいつもの事ですね(笑)ただこれだけは分る。あの特殊メイクと着ぐるみで昼間砂漠ロケなんかしたら・・・多分死にますね・・・・

  3. ともすけ のコメント:

    「西遊記」とくれば、マチャアキ&ゴダイゴ。そこから東洋史にはまり、大学でもそこらへんをテーマにした卒論などを書いてしまった身としては、どうしても見逃せない1本と思っていましたが、
    飯星さんのレビューを読んで、ますます、日本にも来てほしいという思いを強くいたしました。これを観るなら、新幹線に乗るのも惜しくはない。

    …そして、ご紹介いただいた予告編を観て、アーロン牛魔王に心わしづかみにされてしまいました縲怐Bドニーさん、すみません!

    毎回、楽しいレビューを本当にありがとうございます♪

  4. ともすけ のコメント:

    連投すみません!
    しかし、ルイス・クーが三蔵法師、ホアン・シャオミンが八戒なのですか!?
    最強の布陣!
    これは、もう長生きして続編を待つしかありません。
    ステキ情報をありがとうございます♪

    • ケイコママ のコメント:

      ともすけさま
      アーロンは本当に最酷!私もマチャアキ&ゴダイゴ世代です
      堺さんとお仕事する機会があった時に「猿飛佐助」を見た後だったので「さすがの棒さばきでした!」とお話したらとても喜んで頂けて嬉しかったです。
      ルイスとシャオミンはまだ噂段階ですが、そうだとすごいキャストですね
      今年続編撮影という噂ももし本当ならドニーさんはなしですね、今年は九龍城塞とグリーンデスティニーで一杯でしょうし。

  5. コウちゃん のコメント:

    ケイコママ
    初めまして、この前有吉SP見ました笶暦ク霈€
    トラキチだと知り凄く嬉しくなりました!
    今年こそ優勝して欲しいですね!

    • ケイコママ のコメント:

      はじめましてコウちゃん
      そろそろ優勝して欲しいですねぇ。今年の注目は緒方選手かな、足が速くて肩のいい外野手レギュラーになってくれることを願います。とにかく選手のみなさんがノビノビ戦ってくれるのを見たいですね。

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