さすがに大阪アジアン映画祭で鑑賞済みの『低俗喜劇』まで再度観る時間はなかったけれど、それ以外はとりあえず完走しましたよパン・ホーチョン祭り。
『アイアン・フィスト』ですら一部薄目で乗り切った自分の最大の難関は、『ドリーム・ホーム』。案の定、最後の最後になってしまいました。
痛い描写が苦手な自分は上映中ほぼ半分を薄目。画面を見ずに音だけ聞くともっと怖くなるので、時々は音に合う別のアクションシーンのこととか想像したりして(笑)。オムニバス作品『些細な事』のなかにもありましたが、SEXの最中に別のことを考える夫のことはバカにできんなぁと、しみじみ思った次第。
まぁ詳しい内容や素晴らしい感想はスラッシャー系大好物な先達がたくさんブログに書いておられるので、そちらをご覧いただくとして・・・・。
そんな自分がなぜ、これを観ようと思ったかというと、なんとなく勢いで「全部観たぞという達成感を味わいたかった」というのが半分で、あとはやはりパン・ホーチョン監督だから、というのが半分。
結論から言うと、パン・ホーチョンはやはりすごい。
凄惨な殺戮を行うのが女性、しかも普通のOLという設定がすごい。最初の警備員の殺害の仕方から思わず膝を打つ方法でして。普段見慣れてないのもあるけどのっけから「こんな死に方は嫌だ~」と唸ってしまう。
動作設計は錢嘉樂(チン・ガーロッ)と黄偉亮(ジャック・ウォン)。ちょうどイー・トンシン先生の作品『新宿インシデント』などで一皮むけた時期だけあってノリノリです。
しっかし、よくぞこんな殺し方を次から次へと考え出しました。監督、そこがすごい。
3人目の妊婦は腹切り裂いてそこから・・・とかだったら速攻映画館を出たかもしれませんが、そうじゃなくて心からホッ(とするのも変な話なんだけど)。いや、それさえなけりゃ、目玉踏んずけようが腸が飛び出そうがペニスを切り落とそうが、いいんです。
に、してもあのヌード要員の2人の女優さんは撮影大変でしたね。
ただでさえアクションシーンは時間がかかるのに服着てないんだもの。少なくとも3日は現場で裸のままだったことでしょう。
そういう観点からも、一番苦労したのは主演の何超儀(ジョシー・ホー)をはじめ女子達でしたよ、なんかこう、心の底から感心しました。ほんとうにお疲れ様。
調べてみたら最後の最後までしぶとかった大陸女性は周楚楚(チョウ・チュウチュウ)という、半分裸みたいな過激な衣装をいつも着てイベントに登場する話題のお人だったんですね。気がつかなかった(ま、こっちは半眼だったし)。
ちなみに9月に公開される黄秋生さんの『イップ・マン 最終章』では結構なキーパーソンの役を演じています。
グラビアももちろん大変でしょうが、映画、しかもあれだけのアクションをずっと裸で演じるというのはご本人にとって想像を絶する苦労があったと思います。根性あるよ!その後も結構映画に出演。そんな彼女をきちんと起用した(当然話題作りの面もあるでしょうが)最終章、なかなかあなどれませんね。
ジョシー・ホーもよかったです。ご本人は生まれついてのセレブですが、薄幸なOLが本当に板についてました。人を殺しながらも抵抗されたら自分も傷つくという当り前の発想が新鮮。
スプラッター好きにはカットバックで入ってくる彼女の追想が長すぎると不評のようですが、自分のような門外漢にはどれも非常に大切なシーンでした。それによって動機を紐解いてゆくというか、狂気の火種がそこかしこに散りばめられていて、彼女に対して妙な共感さえ覚えるという作り込みがよかった。
に、しても陳奕迅(イーソン・チャン)の役はつくづく嫌な男だったぜ!自分的に一番やっちまいたかったのは、この男かもしれない。
俳優の話になったので覚書。
ジョシーのお父さん役は徐少強(ツイ・シュウケン)、甄子丹ファン的には『詠春』の盗賊の親分。功夫映画ファンにとっては70年代からショウブラの映画をはじめ出まくってるお人。『少林寺三十六房』では陸阿采の役だったと記憶が。
海の好きなお爺ちゃんは盧海鵬(ロー・ホイパン)。バカボンどもは『AV』組から。ラストの警官は『些細な事』でのジリアンのダンナ。もうひとりは『恋の紫煙』で2人にしてやられた警察官、駱應鈞(フェリックス・ロク)。あれかわいかったですね!
自分は余裕がなかったので残念ながら楽しめませんでしたが、凄惨なシーンのなかにもユーモアが盛りこまれていて結構笑い声もちらほら。ストーリーの決着のつけ方も含め、やはりおもしろい監督だということはよーく解りました。
中国大陸には桁違いの富豪がたくさんいて、日本の高額不動産を買い漁ってるという話はよく聞きます。彼ら、ローンなんてものじゃなくキャッシュで一括購入する。イタリアの城なんかもその調子でふらりと訪れた中国人官僚の20歳そこそこの息子(当然イタリア留学中)がポンと買ったりするらしい。
当然、香港では事態はもっと深刻で、返還後の不動産の高騰はとどまるところを知らず。そればかりか大陸で安全性に疑問のある粉ミルクや流行の品を業者が買い占めるために品薄になる、また生まれる子供を「中華人民共和国」ではなく「中華人民共和国香港特別行政区」の人間にしたいと妊婦がこぞって香港の産婦人科で出産するために肝心の香港人妊婦のベッドがない、などに象徴されるような様々な軋轢や社会問題を引き起こしています。
そんな背景のなかから生まれたこの作品は、ゴアスラッシャーという派手な包装にくるまれてはいますが、実は香港という街だからこそ生まれた映画でありものがたりでもあるわけで。
香港を描き続ける監督の代表といえばジョニー・トーがいますが、実は彼もまた作品によって選ぶ題材や作風をがらりと変えてくる監督のひとり、っていうかそもそも香港の監督はそんな人多いし。
そういう意味でもパン・ホーチョンは、しごくまっとうな香港映画監督であり、また今後もそうあり続けたいという強い意志を感じる人でもあるのだと『ドリーム・ホーム』はあらためて見せつけてくれる作品だったと思います。
映画『ドリーム・ホーム』予告編(予告も結構怖いので視聴注意)
パン・ホーチョン祭り 『AV』
パン・ホーチョン祭りその2『恋の紫煙』『恋の紫煙2』
パン・ホーチョン祭りその3『ビヨンド・アワ・ケン』『些細な事』『夏休みの宿題』
うわぁ、怒涛の更新ですね。
自分は、この作品を劇用公開の際に観にいきました。こういうシロモノを夫婦で観に行くって、どうよ?なところはさておき(笑)
そのスジの人とは逆に、ここまでゴアなシーンがあるとは思っていませんでしたが、監督が選んだ表現ですしね。
あわせて、ときおり挿入されるチルトシフトで処理された街並みの絵も、「こんな箱庭みたいな街で起こっている、悲喜劇」みたいなメッセージを込める意図だったのかもしれません。タイトルロールも然りで。
それから、ケイコママさんの書かれているとおり、追想のカットバックがあることで、親父の形見の工具ベルトを身に纏って虚仮の一念でコトを成そうとしている主人公が、単なる快楽殺人者ではないことが理解できるわけですから、そこは外せませんよね。
この作品も、やっぱりオチの部分の底意地の悪さに唖然としつつ、感心しました。もちろん多くの皆さんと同じく、「イザベラ」とのギャップにも驚きましたが(笑)
また次回の更新も楽しみにしていますノシ
P.S.また別記事ですが、大友さんの「任侠シネマクラブ」はショート・ピースという短編集に収められているマンガです。言葉足らずでスミマセン。
おお漫画の『ショートピース』なら持ってます
あの中から映画にしたのかと誤解しました(笑)
『ドリームホーム』に行くご夫婦、素晴らしい!
この『ドリーム・ホーム』5月ぐらいにDVDレンタルされているのは知っていたので今度観てみます!こういうの嫌いじゃないので。
『アイアン・フィスト』でのご質問にこちらでしか答えられなかったのでここにて失礼します。
たしかサリーの曲は娼館のステージで西洋人らしきダンサーが一人で踊ってるシーンでチラッとだけ聞こえてきました。動画アップしますね。この曲で間違いありません。
http://www.youtube.com/watch?v=xF4TYUhuFgg
なぜこの曲を使う??ってニヤリとしました・・『狼』好きなんやろか(笑)?
うわああああ、かっこいいなーーーユンファ!!
ありがとう、久しぶりに見たよ!
RZA、狼好きなんでしょうね(笑)気持ち分る。
そんなママさんに朗報!!9月28日から『ラスト・シャンハイ』が公開されるそうで・・。主演がユンファとホァン・シャオミン(!)。『上海灘』の新旧スターが共演だなんて個人的に鼻血出そうです(笑)。予告編は→https://www.youtube.com/watch?v=kt3_k_HSV7Q
監督は・・王晶・・大丈夫かな(笑)??
ユンファの新作だ、新旧『上海灘』ですねほんと
サモハンも出てる~、シネマートですか、見逃がさないようにしないと!