ずっと思ってきたことですが、どこの国でも芸能関係のニュースというのは、め一杯飛ばしまくってるのが多い印象です。
中華マスコミも当然ながら例にもれず、ここ最近まざまざと「中華クオリティ」に出くわして驚いている今日この頃。
そういえば日本の中華明星ファンの方々がブログなどで中華マスコミのあり方について嘆いているのをよくお見受けしておりましたが、いや、本当どころか想像以上だったという。
昨年2012年、チウ・マンチェクが映画『特殊身分』を降板して以来、あちらのマスコミをはじめネットでは最大級の話題を呼び、たくさんのスターや映画人を巻き込んでの大騒動となりました。
で、今回何を書くかというと、あの世界中のドニーファンが心待ちにしている映画『特殊身分』とドニー・イェンに、今なおイチャモンをつけている、「ある人」に関してです。
文中のリンクには微博という中国のtwitterのようなものが含まれています。これは登録しないと見られないもの。ネットで記事になったものに関しては、そちらを選択しましたが、微博にしかないものは、そのままリンクを貼りましたのであらかじめお断りしておきます。
2012年4月5日、マンチェク降板騒動の最中にマスコミへの記者会見をぶちあげたのが、特殊身分の前身である映画『終極解碼』の脚本家でありディレクターを務める予定だった檀冰という大陸の監督。
その檀冰監督に対し名誉棄損で今年2013年2月にドニーさんが訴訟を起こしたことは日本でも報道されました。
6月24日この裁判の第3回公判に、白シャツにレジメタイという「出廷する原告のオレ」を演出したような颯爽とした出で立ちをしたドニーさん自身が出廷したことで、急に複数の映画関係者から「どうなってんの?あれ」訊かれたのと(なぜ私に訊くのかは謎)あるドニーファンの方から人づてに「日本での誤解のされ方はあまりにも甄子丹が不憫」という非常に長いメッセージを戴いたことで、この件について自分なりにまとめてみようかなと、ふと思い立ちました。
まぁ、私もどこまでフォローできているかは確認しようがないし、なにより自分はドニー・イェンファンなのでどうしても贔屓が入ると思います。
なので以下はそのつもりで読んでいただいた方がいい、ということをご了承ください。
そもそも、檀氷監督の『終極解碼』が『特殊身分』に変わったいきさつについてはこう言われています。
彼が『終極解碼』の脚本を書き、大陸歌手楊坤主演で、監督や関係者が持ち寄った資本金1500万元で企画。その過程で楊坤が成龍を監督に紹介したことから成龍参加が濃厚に。
するといきなり資本金が億に跳ね上がってしまいました。成龍さすがです。しかし『ライジング・ドラゴン』の撮影で多忙な成龍はキャストから早々に降板。
そこへかつて『モンキーキング』プロデューサーの1人だった檀冰の奥さん(今は離婚したので正確には元奥さん)がドニー・イェンに交渉し出演が決定。(この時点で成龍が出演を降板したことは対外的にもドニーさんはじめ制作サイドにも伏せていたと谷垣コラムに証言あり)
その後かろうじてプロデューサーとして名前だけは残っていた成龍が、結局それも降りることとなり、代わりにドニー・イェンがプロデューサーも兼任。当然投資会社も新たに参入したりして、資本金も膨らんでゆきました。
準備段階での脚本の打ち合わせなどを通じて、根底からの内容変更を制作側が檀冰監督に提案、しかし監督は「検閲もすでに通っている脚本を変更することはまかりならん」とそれを拒否。
結果、出資者、出演者、スタッフはそのままに監督の変更が決定し、と同時に劇中の人物像、設定や脚本家も別に置き換えられタイトルも『特殊身分』として新たに仕切り直して2012年1月19日に制作発表、2月8日クランクイン。
※谷垣さんの映画秘宝2015年2月号のインタビューによると、スタッフについてはきちんと契約し直して、まったく「新たな映画」として仕切り直したとのこと。
が、撮影数日で、今度はマンチェクの降板を巡って騒動が勃発し、そのトラブルが一気に話題に。
そんなマンチェク騒動のさなかの4月5日です。
檀氷前監督がマスコミを呼んでカメラの前で会見を行いました。
心血を注いだ『終極解碼』という映画が、ドニー・イェンによってめちゃくちゃにされ、プロデューサーである成龍をその座から引きずり降ろし、映画の全権力を掌握。出演が決まっていた人気アイドルの韓庚を自分より人気があると恐れ嫉妬したためにキャスティングから外した上に、自分が3年間かかって命を削り書きあげた台本を変更して力の弱い大陸の青年監督である自分を、権力に物を言わせてクビにした。
それどころか、彼のドライバーがマンチェクのドライバーを殺害した。亡くなったのはマンチェクと同郷の黒龍江人で素朴な田舎の人間でもある。自分の夢を粉々に打ち砕き、力の弱い人間を踏みつけるような迫害をする行為は断固許さないので、ここにドニー・イェンを告発するという内容でした。
かなり荒唐無稽な主張にも思えますが(特にドライバーのくだり、これに関しては谷垣さんも「すぐばれる嘘をなんでつくかな」とコラムに書いておられました)不思議なことに、当時その主張を検証したり、疑問をはさむマスコミはほとんどなく、やみくもにそのインタビュー動画と彼の言い分は、直後にゲスト出演したテレビ番組とともにそのまま公開され拡散され続けていったのです。
当時はマンチェク騒動の影響で、彼が言い続けた香港映画人(ドニー・イェン)の横暴さに大陸人がコケにされているという意見に多くの大陸人が同情していたという追い風がありました。
そこに近年社会問題化していた「香港VS大陸」の代理戦争のような過熱ぶりも加わり、大陸人の多くの気分(これにはネット上で暗躍する金で雇われた組織的ネット工作員―中国語では「水軍」と呼ぶ―の存在も指摘されています)は、猛烈なドニーバッシングを生み、最終的にアンチドニー・イェンという大きなうねりに集約される格好になりました。
現場レベルでの檀冰監督への評価は、谷垣さんの新著『アクション映画バカ一代』に委ねるとして、マンチェク騒動の際、ドニー・イェンを援護した映画人の微博がことごとく炎上し次々と閉鎖に追い込まれる流れに、彼を知る人間が表だって擁護することもままならない状況になってしまったことは事実です。(未だに再開していない業界人の方が多い)
すると今度はその檀冰監督を、大陸の映画ブロガー、秋原nrokin(当時は恐兽秋原というネームで、なぜか名前を何度も変える)という人間が後押しを開始。
この人は歯に衣着せぬ映画評論と事情通がウケているのか、当時は「本当は姜文が別名で書いているのではないか」などと噂が出た存在。(さすがに絶対にそれはないと勝手に断言)
その人物が、檀氷がいかに誠実に映画に取り組んでいる「青年監督」であるか、ドニー・イェンに代表される香港の商業主義がどれほど歪な物であるかを発信し続けました。
そんななか、嫉妬され役を下ろされたと引き合いに出されたアイドルの韓庚の事務所が「降板は宣伝期間にコンサートツアーがあり、協力できないことからコチラの判断で降板した」と発表。
同時に檀冰を成龍に紹介した歌手楊坤が微博で檀冰を「嘘をつくな、この恩知らず」と非難。(彼もまたこの件でひどいバッシングを受ける羽目に)投資会社は檀冰に対しそれまでに彼が投資してきた資金については全額保証したと証言→(3つまとめてこちら)。
また『終極解碼』から『特殊身分』に変更された経過を特集した番組や、特殊身分ドライバー殺人事件を調査し、殺人を犯したドライバーはドニー・イェン専属ではなく、制作サイドが雇いアトランダムに振り分けた人員で実は2人ともチウ・マンチェクのドライバーであったことやそもそも酒に酔ったうえでの喧嘩の末の殺人事件であったことなども報道されましたがいずれも点としての報道にしかならず、檀冰の言い分を検証しようと動く他のマスコミも現れずに、多くの批判記事や微博での膨大な中傷とドニー・イェンと妻汪詩詩への個人攻撃、そしてアンチとファンによる罵り合いにかき消されてしまいました。
その後の7月、この騒動のそもそもの発端であったチウ・マンチェク(彼はドニーを訴訟するするとマスコミに言い続けましたが結局しませんでした)が「すべては仏のお導き、今後またドニーとは縁があるかもないかも(超意訳)」という分ったような分らないような言葉を残して矛を収めた矢先の10月18日、檀冰監督が今度は自分自身が監督する新作映画の制作発表の席上にて弁護士を隣に並ばせドニー・イェンを提訴したと発言。
「自分はドニー・イェンに対し著作権侵害と横領された数百万の資金の返還、そして特殊身分の公開差し止めを求めて8月北京市海淀区人民法院に提訴した。受理されたので初公判は10月30日」と発表。
そして同時に「ドニー・イェンから受けた迫害を国際執行機関である北京仲裁委員会に訴えて、彼はこの北京仲裁委員会からの出頭命令書を今年6月18日に受け取っているはず。また国家电影局に手紙を送り『特殊身分』の一時発行停止を求めた」と話しました。
こちらも直後にゲスト出演したテレビ番組で同じ主張を繰り返しております。
また11月にはその北京仲裁委員会からドニー・イェンへの正式通知のコピーを微博にアップし、「通知を受け取っているのに出頭命令に従わないのは法律を軽視している」とコメント。
2度目の会見に関して、ドニー・イェンのマネージャーや事務所の代理人が損害賠償や公開差し止めを訴えた北京仲裁委員会というところが強制力のない民間の機関であるとことを元に微博で反論。
しかし普段微博をネタに記事を作ってるはずのマスコミはこのウラを取ることもなく、むしろくだんのブロガーが「あの人は彼の会社の人間じゃないか、給料をもらってる人間がかばうのは当り前」と微博に書くなどして誰も耳を貸そうとはしませんでした。
中国で旧正月の開けた2013年2月21日にドニー・イェンが北京市海淀区人民法院北京市海淀区人民法院に檀冰を名誉棄損で提訴。
とすぐに、それまで反ドニー・イェンの急先鋒であったブロガーが彼に関するすべてのコメントを削除。
3月第一審の初公判前、ドニー・イェンの代理人である何培華弁護士が自らの微博で檀冰の住所本名を出し、公判を前にして行方不明の彼を捜す、そして捜す協力を求めるコメントを数度にわたって掲載。
2013年3月14日、第一審の第1回目の開廷、ここに檀冰はおろか代理人も出廷せず。5月20日、第2回これにも両人とも欠席。(ソースは下記の南都娱乐記事とドニー側の弁護士の微博)
すると、その第2回公判が終了した翌日の5月21日、それまでまったく行方が分らなかった檀冰監督がマスコミを呼び、カンヌで発表された『特殊身分』のポスターへの不満をぶつけドニー・イェンを辛辣に批判。
「自分は新作撮影で忙しく、裁判所からの訴状を受け取っていない」としたうえで日本語では想像のつかない罵詈雑言をカメラの前で発言。
その動画では集まった記者からの「今日会見するなら、どうして前日に出廷しなかったのか?」という追求すらなく、そのまま一斉に配信されました。
一方でこの会見の席には北京市海淀区人民法院の人間も現れて起訴状を再度今度は本人に直接手渡し(前回は郵送)、受け取りのサインも衆人環視のなかもらったという事実も。
その同日、南都娱乐が「甄子丹状告檀冰 一年后再解四大疑点」という記事を掲載。
そこにも檀氷がドニー・イェンを訴えたという事実はなく、彼が原告として訴えたのは『特殊身分』の投資会社、北京宇际星海广告有限公司のCEO辛晓东、しかも提訴した当時はまだ映画の撮影中であり、どうやって『終極解碼』の権利侵害だと証明するつもりだったのか、と書いています。
(てか、今年2月に行われた谷垣さんのトークショウでは、その時点でまだ撮り残しがあり完成してないということだった)
記事によると第一審は檀冰が敗訴、またその投資家辛晓东の言葉として、檀冰にこれほどの規模の映画を監督する技量はないと判断し、また脚本の変更をかたくなに認めなかったので監督を降りてもらい、新たに脚本家を呼び寄せて全く新しい映画にしたと伝えています。
翌22日には、本件に関するドニー・イェンの代理人である何培華弁護士が公式声明を発表。
その中で、檀冰監督が北京市海淀区人民法院に起こした訴訟は、ドニー・イェン個人を被告としたものではなく、出資会社である北京星光灿烂影视公司と北京宇际星海广告有限公司を被告としたものであり、現在何一つこの裁判所にはドニー・イェンを被告とする訴訟など存在しないこと。
また、原告と檀冰の間にはいかなる雇用関係もないために、訴えることは不可能であり、マスコミに対しドニー・イェンを訴えたと主張するのは明らかにでっちあげで、訴えられてもないことに反応しようのない彼を誹謗中傷することは許されない、と反論。
同時に、迫害されたと訴え出た「北京仲裁委員会」というところは、法律を知っている人間ならすぐ分る通り、檀冰の主張するように国際判決など出せるものではない民間の調停機関で、出頭命令の強制執行力はおろか互いに任意の上で話し合いを進める場であり、それに応えずとも期間が過ぎれば受理したものも無効になるとされていました。
それまでの報道を細かく見ていれば、過去に何度か出て来た話ではあったのですが、あらためて檀冰の矛盾点をまとめて発表した形です。
しかし、おもしろいことに、ここまで説明しても中華マスコミは未だに「お互いに訴訟しあった」という表現を使うところもあり、日本の報道でもそう誤解を受けるような表現がされていたと思います。
その数日後の5月25日には、あれほど自分の微博で哀れな大陸の青年監督檀冰を擁護しドニー・イェン攻撃の急先鋒として大衆をリードしてきたブロガー、秋原nrokinが、遡ること5月3日に特殊身分の共演者である女優景甜が自分の微博にアップした成龍とドニー・イェンそして彼女との3ショットの写真を転載し、ドニー・イェンに対し謝罪するとともに唐突に友人であるはずの檀冰を批判し始めました。
そして堰を切ったようにいかに檀冰監督が邪悪な人間で、自分が騙されていたかを何度もコメントで訴えました。
内容を読んだところ彼は監督の新作映画に関わっていたのに、正当な報酬を支払われるどころか借りた金も返さないうえ、出演させた女優に対するセクハラを諫めたら今度はそのプロジェクトから追い出されたらしく、そんなことが数日にわたって綿々と綴られることとなりました。
これにはむこうのドニーファンも唖然です。金の話から離婚した妻へのDV、そして下半身事情まで、まるで内ゲバのごときドロドロの内容です。そのドロドロ微博コメとドニーへの謝罪をまとめた記事はコチラ。
迎えた第3回公判は6月24日。それにさきがけて海淀区人民法院が新聞に、「耿卫国(檀冰の本名)へ。手続きをふんでね、公判に出廷しないと欠席裁判になっちゃいますよ(超意訳)」と広告をうつ事態。
そしてこの日の公判には、よもやのドニー・イェンが登場。精神的苦痛と経済的損失の賠償として請求した賠償金500万元は、貧しい映画を学ぶ学生たちのために全額寄付すると発表。そしてようやっと大陸監督の壇冰も出廷。非公開の公判が行われた後に彼は三たび、マスコミを呼んで会見を決行。
そこでは檀冰監督の代理人である李光昱弁護士から、以下の発表がありました。
・自分達が欠席した2度の審理を通じて、すでに司法官はドニー・イェンをえこひいきしている
・この裁判においては専門的な人員が必要なので、3人の司法官の入れ替えを要求する
・この件に関してドニー側の何培華弁護士はネット上にて檀冰の本名や住所、家族などを公表したためにプライバシーの侵害として、しかる場所に訴える準備がある
・この裁判において、証人として成龍、楊坤、景甜、韓庚、チウ・マンチェクなどの芸能人をはじめ、主だった制作スタッフのほとんどを証人として申請する
これを受け、ドニー側の何弁護士もインタビューに応えて「これは司法官への侮辱である、弁護士は裁判における司法官を指名できるわけではない。なんの法的根拠もないこのような要求をするのは弁護士としてあり得ない、まるで素人。また檀冰の氏名住所については本人自身がネットに公表しているものである。よってプライバシーの侵害には当たらないし、そもそもその主張は本件には関係のないことで、単なるごまかしである」
そして芸能人や制作陣の証人申請については「民事の場合は同意がなくては証人として出廷する義務はありません」とし「こちらはすでに大量の証拠を裁判所に提出しており、証人も呼んで原告に対する侮辱と誹謗が計画的な謀略であったことを証明してみせます」と語っています。
やれやれ、駆け足でしたが、2013年7月1日の現在ではそういう状況なわけでありますよ。
判決が出ていないために、今現在も檀冰監督は毎日のように微博でドニーさんを攻撃し続け、彼の脳内では先日自分が出廷した3回目の公判が第1回目とすり変わっていて頻繁に「先日の第1回公判では~」という言葉が登場します。
これに関しては彼の弁護士も彼も、最初に裁判官が「第1回公判を開始する」と宣言した、というのを根拠としていますが、その言い分が本当かどうか、報道もなく中国の法律まで調べてないので現時点ではわかりません。日本の場合は相手に訴状が渡らなければ「公示送達」という手続きをするのですが。
ところで、監督が裁判を起こしたために『特殊身分』の公開が決まらないと考えている人が多いようですけれど、配給会社の決定、カンヌでのポスター発表、上海映画祭での特殊身分組のレッドカーペット、そして景甜ちゃんのアフレコ収録風景写真など、その件に関しては多分とっくの昔に檀氷が公開差し止めの第一審で敗訴した段階でクリアになっているのではと自分は想像しております(あくまでこれは想像)。
あとは、単純にドニーの世間での評判や檀冰のでっち上げをいかにして抑え込むか、そんな算段とタイミングを図っていたのかもしれません。←当然想像
これはソースなしの伝聞でしかありませんが、2011年11月の段階で最初檀冰監督は、特殊身分のプロデューサーでありその後檀冰に代わって監督に就任した霍耀良に対し著作権侵害を訴えたそうです。が、マスコミに一切取りあげられなかったために、マンチェク騒動を利用して今度は対象をドニー・イェンにすり替えたとも言われています。
そういえば、ドニーさんが檀冰監督に対する訴訟を決めた一因に「自分の子供たちへきちんとした形で説明をする義務がある」という一文をどこかの記事で読んだ覚えがあります。
今回、このエントリーを書くにあたり、その記事を確認しようと努力しましたが、どうしても見つかりませんでした、なにしろ「甄子丹 檀冰」でググると94万5千件以上もあるのです。
それほど、この件に関するものは莫大な量にのぼります。しかも、8割近くは大陸人監督檀冰の一方的な主張の垂れ流しと、それに乗じたドニー・イェンへの中傷だったと、ウォッチャーの私はここで申し上げておきます。
もし、自分がマスコミの1人としてあの会見場にいたら、檀冰監督に質問をするだろうし、彼の矛盾も直接問うてみたい、なのに検証どころか双方の主張も同時に取りあげず一方の意見だけを平気で垂れ流したままにする中華マスコミの姿勢に対して自分は相当イライラしています。
結婚10周年なのにラブラブとか、怖い人かと思ってたけど会ったら凄くフレンドリーでいい人、とかいう提灯記事を書くくらいなら、ちょっと調べりゃすぐ分る事もあるんだから少しは取材して検証してやってくれよ。
ドニーさん本人が本来出る必要などない名誉棄損の公判に出廷したのも、恐らく弁護士の文章だけではこちらの主張はニュースにもならないし拡散もしてくれないと判断したうえでの苦肉の策だったのでしょうか。
マンチェクの時もそうでしたが、この件に関して彼自身が発言をしたのはわずか数回しかなく、あとはずっと沈黙を続けています。
そういえば、マンチェク騒動の渦中にあった2012年の4月1日、ドニーさんがコメントした微博では「いま聴いている曲」と一言添えてレスリー・チャン(その日はレスリーの命日でした)の『沉默是金』の歌詞を載せていましたっけ。思えばその日から1年近く彼の微博は更新されませんでした。
本人がわざわざ出廷したお陰で、目論見通り1年以上経ってやっと、やーっと双方の主張が同じ記事に載るようになってきて、上記したような記事が少しは見受けられるようになりました。
ただし「檀冰と甄子丹は互いに訴訟しあっているわけでは決してない、現時点での檀冰に関しての真実は唯一で、それは檀氷が被告であり甄子丹が原告である名誉棄損の裁判がひとつあるだけ。しかも3回行われた公判のうち2回を檀冰は無視した」という当り前のことを、つい、言いたくなるような端折った報道がまだまだ多いのですが。
ただでさえブラック企業のような(谷垣健治的表現)この映画の現場で、懸命に働いた谷垣さんをはじめ、たくさんのスタントマンのみなさんやスタッフの方々のご苦労も相当だったと『アクション映画バカ一代』にありました。
なにしろ現場じゃ騒動の当事者じゃないだけに、訳も分からずかなり振り回されたようです。そんな人達の努力と苦痛が報われるためにも、この作品の正常な状態での公開を切に願います。
ドニーさん本人はこの『特殊身分』を、SPL、導火線に続く三部作としてとらえていて、ポスターのコピーにも “THE HERO RETURNS” “甄子丹 重磅帰來” とあります。甄子丹がハードに帰来ですよ、帰来。
最後に、映画を作る以上にストレスがかかっているのだろうドニーさんには、いや本当に心から、真心希望丹哥工作不要太辛苦ですわ。
追記:ドニ―さんの 7月3日付けのFBに写真とともに、
SPL,Flash Point and now: Special Identity. Coming this Oct.!
というコメントがありました。うわー、本当でありますように。
ダラダラまた追記:
檀冰が出資会社に起こしたという特殊身分公開差し止めの裁判。このエントリー後すぐの元友人ブロガーコメントによると「今も審議中だと?嘘を書くな、嘘を。とっくに訴訟中止が出て、お前その文書を俺に見せたやんけ!」
法律に詳しくないので「訴訟中止」てなんぞや、と調べたら、裁判所が訴訟の継続をすべきでないと判断したら中止にするんだそうです。そうなる理由についてはこちら→诉讼中止
リリース日も決まり宣伝もどんどん始まりいよいよ公開。
皮肉なことに中国大陸で公開される映画テレビのすべてを管理している『国家広播電影電視総局電影事業管理局』が公開を承認したという事実が、間違いなく檀冰の主張が退けられたという証明になりました。
なお、大変遅くなりましたが私に長いメッセージをくださったドニーファンYOUさんの、記事のコピペやまとめてくださった時系列が大変参考になりました。助かりました、ここで改めて感謝申し上げます。
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人としてどうかと思うほど時間が経ってからの追記:
この映画は2013年無事むこうで公開され2015年には『スペシャルID 特殊身分』というタイトルで日本公開されることも決定しました。
そこでひょっとして、検索してこちらを覗かれた方もいらっしゃるかもしれません。こんな無駄な長文を最後まで読んで下さったからには、きっとこの件に興味がおありかもと思い、その後の流れをざっと書いておきます。
香港中国での公開を前にドニーさんが長い沈黙を破り、プロモ―ションの際この件について、最初で最後ぶっちゃけておりました。
映画を降板後マスコミの前でドニーさんへの怒りと悪口を言いたい放題し同情を集めた俳優チウ・マンチェクに対しては、二度と共演することはないと断言。彼はこの件で巻き込まれ傷つけてしまった人達誰ひとりに対しても謝罪すらしていない、というのが理由です。
マンチェクが、家族を含め7人もの無関係な人達を現場に連日連れてきていたこと、またそんな彼を最後までドニーさんが慰留していたことは、その場にいた谷垣健治さんのコラムや著書、映画秘宝2015年2月号のインタビューでも語られています。
共演者のリミッターを外しては後々印象に残るアクションシーンを作ってきたアクション監督ドニー・イェンの力量を考えれば、どういう理由があったにせよ、マンチェクは自分に巡ってきた武打星としての最大級のチャンスを自ら放棄したとしか今となっては言いようがありません。
ドニー・イェンを擁護した人達をネット攻撃しマネージャーに毎晩脅迫電話をかけ続けた「水軍」が本当のマンチェクのファンだとは言いませんが、長い間彼を応援しドニーを憎んでいるファンの人達は多分「あの時我慢して特殊身分に出ていればもっと別のマンチェクが見れたかも」という思いを意識してようがしてまいが、この先ずっと心の隅に抱き続けることでしょう。
檀冰監督に関しての怒りについては「彼は映画界にいてはいけない人間」と言い切りました。キャリア30年以上、黒社会をはじめ有象無象のうごめく映画界にずっといる彼がそういうからには本当に人としてどうかしてる人物なのだと思います。ここに書いた檀冰の言動とそれを取り巻いていた人間の行動でご判断ください。
長い長い沈黙のわけは監督ピーター・チャンが「今は黙って映画を完成させなさい」とアドバイスしたそうで、ドニーさんはそのアドバイスを守って映画を完成させました。しかし反論する機会はここしかないと公開直前に2人に対して公に初めて口を開きました。
「自分までこの映画を放りだしてしまっては、ずっと働いてきた何百人ものスタッフが一瞬で失業してしまうじゃないか」それが映画人ドニー・イェンの発した言葉のひとつだったとお伝えしておきます。
最後の最後:2015年11月、この裁判の一審判決が出ました、ドニーさん勝訴です。くわしくはこちら