ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(2012年・米)

制作、監督:アン・リー
原作:ヤン・マーテル
脚本:デヴィッド・マギー
撮影監督:クラウディオ・ミランダ
音楽:マイケル・ダナ

出演:
スラージ・シャルマ
イルファン・カーン
タブー
ジェラール・ドパルデュー
王柏杰(ワン・ボージエ)

よくこの映画は○○なので子供と観に行けない、子供に観せられない、という言葉を聞きます。子供の事をすごく考えてる親御さんだなぁと心から感心しその愛情の有りようにちょっと驚いてもしまいます。

亡くなったうちの父親は子供と一緒でも自分の観たい映画しか観ませんでした。なんにつけ父の辞書には「子供用」という文字はまったく存在しなかったとしか言いようがありません。

私が初めて観た映画は幼稚園の時、市川昆のドキュメンタリー『東京オリンピック』のリバイバル上映。その次がイギリス映画『脱走山脈』。第二次世界大戦もナチスもなんのことやらサッパリ理解不能どころか、字幕すら読めないという年齢です。
そういえば『ダーティ・ハリー』1、2の2本立も彼と一緒だったことをよく覚えています。さすがにこれはもう小学生でした。今も昔も、小学4年生の女子に映画館でダーティ・ハリーを見せる親御さんって、そう多くはないはないかもしれません(女性の全裸遺体の陰毛部分にボカシというか傷が入っていたのもそこで初めて見た)。でも、そういう家庭で育っていれば不思議でもなんでもなく、そんなものかと子供としては受け止めるわけですね。
そして言葉も意味も理解できなかった映画でも、印象だけは鮮烈に心に残り、その後大人になって見直した時にはすごいタイムカプセルを開けたような気分になるものです。

ライフ・オブ・パイを観ました。

初めて3Dってスゴイと心底思い知りました。これは劇場で観ないとアカン映画やと申し上げます。てっきりベンガル虎とうふあはと漂流するのかとぼんやり想像していたら、予想を覆すシビアな状況とラストの展開が非常に気に入りました。

「生きることは、手放すことだ」
無明は無垢か無知か。生きるということはなんと残酷なことか。

あの頃にこの映画があったら、間違いなく父は年端も行かぬ子供たちを連れて行ったでしょう。そして自分にもし子供がいたらやはり一緒に観ると思います。

あの凄まじい漂流シーンがどう文章になっているのか、原作を読んでみたい。さっきAmazonでポチったところです。

 

 

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ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(2012年・米) への4件のフィードバック

  1. June のコメント:

    予告編のあまりの美しい映像に やはり見たくなって3D鑑賞しました
    3Dの奥行感のある映像のお蔭で 前の方の席で見難いだろうと思って
    覚悟してたのに 楽に見られたのは意外でした
    ふ~~ん こんな効果もあるのですね
    ミーアキャット君達の登場あたりから どう結末にもっていくのか非常に
    気になりましたが ああなるのですね
    これも一つの「藪の中」的な展開?

    絶対最後に泣かされるのだろうと思って それは嫌だったのですが
    そうならないエンディングでホッと(?)しました

    • ケイコママ のコメント:

      自分も相当前方でしたが(私の場合はわざとそこにした)素晴らしい映像でしたね。2Dでも公開しているようですが出来たら3Dで観た方が断然いいだろうと思いました。

      何の情報も知らず観てかなり内容に驚いたのですが、めちゃくちゃ気に入りました。
      >絶対最後に泣かされるのだろうと思って
      私なんか、海中で沈みゆく船を眺めるパイの後ろ姿ですでに泣きましたよ(笑)。
      またこの映像が恐ろしくも美しくてね、パイもまたそう感じているような気がして哀しかった。

      この作品を宗教的すぎると見る向きもありそうですが、個人的意見としては前半で彼がヒンドゥーキリストイスラム教と3つの宗教を信仰しようとした段階で、結構安心して観ていました(笑)。その印象は最後まで変わりませんでしたね。数多くの宗教的暗喩(ヒンドゥー教のがやはり多いようでした)に満ち当然重要な要素と思いますが、むしろ既存の宗教を皮肉とまではいわなくても、どの神というよりは「信じる気持が生む宗教(この場合、ものがたりとも言い換えられるかも)という存在の重要性」のほうに大きく舵を取ってる気がしました。宗教についての伏線は多分原作の前半に長々書いてあるのじゃないかと楽しみにしています。

      そんな感想も自分がそれぞれの宗派のことが分ってないからなのかもしれませんが、文化や宗教に捉われず沢山の国でヒットしていることを考えると(特にアジアで人気が高いそう)、あながち間違ってないのかもしれません。

      にしても、本名であるピシンという名の由来や、そこからパイというニックネームを考えたいきさつ、そしてそのπという名の持つ意味などグイグイきますね。調べたら227とういう数字も円周率に関係があるそうですよ。

      ああ、ちょっとしたご返事のつもりがえらい長文に・・・。
      これを観てしばらくたちますが、まだこの映画のことが頭から離れません。こんな気分は久しぶりなので驚いています(笑)。最後に、アン・リーすごいわ。様々な監督の名前がこの作品の映像化にあたって出ていましたが結果彼でよかったのかもしれません。

  2. きんこん のコメント:

    ケイコママ
    恭喜發財!新年快樂縲怐I
    チョット最近、多忙続きで、ご無沙汰しておりました!

    アン・リーのタイガー映画、気になっていたのですが、
    ケイコママの感想を拝見し、観たい度1000%になりました!

    やっぱり観に行きます!
    新聞の映画評でも「こんなに感激するとは思わなんだ」的な絶賛の声が多いですよね。

    • ケイコママ のコメント:

      身體健康!
      わーい、きんこんさん是非ご覧ください!できたら3Dをお勧めします
      すごい映像美にびっくらこきますよ~
      気が向いたらまたここに感想でも書きに来てくださいね
      お忙しそうですが、どうかご自愛くださいませ

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