監督・武術監督
程小東(チン・シウトン)
出演
楊紫瓊(ミシェル・ヨー)
李寧(リー・ニン)
鄭則士(ケント・チェン)
熊欣欣(ホン・ヤンヤン)
許志安(アンディ・ホイ)
武術指導
熊欣欣(ホン・ヤンヤン)
この顔触れで、一番「誰や?」と思われるのは李寧でしょうね。
それもそのはず。実は彼、1984年ロス五輪の男子体操の個人種目の金メダリスト。
ロス五輪、男子体操!おおお、覚えてるよ~。
あの森末慎二さんが、鉄棒で、団体規定、団体自由、種目別すべてで10点満点を出し(当然鉄棒種目別は金)、個人総合では具志堅幸司さんが金メダルを、そして団体でも日本が銅メダルに輝いた、あのロス五輪すね!
李寧はつり輪、あん馬、床の種目別の金メダリストで個人総合での銅メダリスト。当時中国では「体操王子」と呼ばれ国民的ヒーローだったお人。(彼はその次のソウル五輪にも出場)
今現在は中国で有名なスポーツメーカーの創始者という実業家として名を馳せており、2008年北京五輪で聖火の最終ランナーとして宙を浮いた男としても有名です。
しかしまさか映画でミシェル姐さんの相手役をやっていたことまでは知りませんでしたわ~。
映画見始めて「マジっすか!」と思い、一旦ポーズボタン押して思わずキャスト調べに行ったくらいです。
んま、なんというお懐かしい!
(この北京五輪の宙づり、さぞ大変だったろうと思っていたのですが、こうして程小東の映画に出てたなら慣れてたのかも?なんてね)
この作品での彼を見ながら、当時の中国体操選手としては自分、童非選手の方がうんと好きだったことまで蘇ってきましたよ。
と、ともに
当時の胡耀邦総書記が日本の青年3000人を中国に招待してくれた84年の国慶節の建国35周年式典。
そのひとりとして招かれた際に、なんと童非さんご本人にお目にかかる機会がありファンであることを伝えたら彼から直接、直筆の「書」を戴いたことまで、芋づる式にしっかり思い出しました。
落款がY字バランスの図柄になっていてとても可愛かったです。
しかも彼の写真を捜しに中国サイトに行ったら、なんとその童非が87年に「望春風」という中国映画に主演していたことまで、さっき発見してしまい、今、スゲー驚愕しているところです。
その頃の五輪メダリストはある意味、今よりもっとすごいステータスだったんでしょうねぇ。
それはソ連時代の五輪メダリストも同じなので当時の共産圏の共通した特徴なのかもしれません。だから本当はそれほど驚くことじゃないのかも、映画の主役。
とまぁ、また前振りが長くなってしまいました。毎度のこととはいえ申し訳ありません。
と、言う具合にこの映画、まずは李寧を知ってるかどうかがまず大きなポイントになるのかも。
なので、私の感想は多少贔屓めな部分があるのかもしれません。
観る前は、90年代だしチン・シウトンだし、てっきりストーリー破綻しまくったものかと相当覚悟しておりました。そのお陰でしょうか、案外まともでむしろ驚いてしまったくらいです。
と、いってもそれは単に昔の香港映画を観ているせいでそう感じるのかも。
これごときで破綻と言ってしまってはほかのぶっちぎった作品なんか見られないもんね!
アクションは笑っちゃうほど派手だし、信じられないくらいご都合主義&無茶ブリのオンパレードだけど、むしろその熱がとてもらしくていい。自分としてはパワーのあった頃の香港映画としてすごく楽しめました。
物語は「ファントム7(原題では金剛7、アメリカではワンダー7)」という中国軍の特殊部隊チームが主役。(なぜか香港じゃない。おいおい、タイトル!)
まぁ、いわゆる望月三起也先生の不朽の名作漫画「ワイルド7」に完全インスパイア(笑)されたものと思ってください。しかも李寧の役名が「飛葉」ちゃんならぬ「葉飛」だし。ちょ、程小東。
さてミシェル姐さんですが、当然その主役のファントム7のメンバーかと思いきや、驚きの悪役。
えええええ、悪役?と最初は驚いてしまいますが、でも相変わらず美しいし、悪役でもこれがまたなかなか大人な女で粋だし、ま、李寧とお似合いかどうかは置いといて(笑)、結果、心底悪人でもなかったし、キャラ的には悪くなかったのではないでしょうか?
(ラストの制服を見たら、李寧に前半もう少しイケてる衣装を着せてあげて欲しかったよ、チン・シウトン。そうすればもう少し姐さんと似合った雰囲気がだせたのかもしれなくてよ!)。
さて、肝心のアクションですが、年代を考えてもお分かりのように、この頃の特徴として、功夫というよりはバイクアクションとガンアクション中心になるのは、いたしかたないというところ。
この時期の銃乱射ものの映画をイヤってほど見ているせいでしょうか、想像したほどストレスは感じない。
むしろ、ちゃんと姐さんの白打シーンもあるし、(やっぱ元体操選手、李寧もそこそこ動けてた)そこはもちろんワイヤーの神様チン・シウトン、空飛びまくりもお約束、お約束。
そしてなんといっても、さすがは最高の女武打星ミシェル・ヨー。空を舞っても銃を持たせても様になるし、文句なしにカッコいい。
カッコいい人はCGなんかなくてもカッコいいのであります!
同時に注目すべきは、アクションに関して女子供にまったくもって容赦ないその姿勢ですね(そのうえこれは坊さんにも容赦なかった)。さすが返還前。
最初はバイクアクションや、銃撃戦などで始まりながら、アクションは後半に入るに従い徐々にスケールアップ。いいよ~いいよ~、こうでなくっちゃ。
ラスト近くのゴンドラでのシーンは腰のあたりがむずむずしそうなほどスリリング。ワイヤーつけてるにしても、頭おかしいです、チン・シウトンさん。
そしてラストは「そんなんありっすか!」と笑ってしまうほどの破天荒でイリュージョン的な展開へと突入。とにかくどこから切っても90年代らしいこのアクション映画を、私は心からすごくすごく楽しみました。
ミシェル姐さんの絶対的な主役、を望むとちょっとガッカリかもしれませんが、それも最初から期待してなかったぶん、結果、私は満足です。
これから見る方は、ゴンドラとか最後のバトルとかヘリシーンとか、なにもかもVFXなしの生身、プラス、ひょっとしたら大部分が許可なしのゲリラ撮影だったかも(あくまでも、かも)ということを念頭に置いて是非見てください。そしたら、あのクレイジーさが身にしみる・・・やもしれません。
あえて難を言えば、せっかくのくまきんきん、もう少し見せ場が合ってもよかったのでは?
それだけですかね!
おまけとして、
自分の中の五輪で一番印象的なファンファーレはおそらくこれでしょう。
ロス五輪のオリジナルファンファーレ&テーマ曲。作曲はご存知アメリカが誇るジョン・ウィリアムス。この曲はその年のグラミー賞も受賞しました。
Olympic Fanfare and Theme – John Williams
おまけその2
本家「ワイルド7」の実写版、この2011年年末に公開だそうで。
監督は「海猿」の羽住英一郎氏、音楽を川井憲次さんが担当。
ワイルド7公式サイト
メンバーの衣装が黒づくめなのが、ちと勿体ない。
原作と同じ白パンツが見たかったなぁ~。と当時キングで原作を読んでた自分はちょっと思ったりして。
この漫画、70年代にTVドラマとして一度実写化されています。
飛葉ちゃん役を演じた小野進也さんが子供心にカッコよかった。
ワイルド7テーマ曲
「この世のドブさ~ら~い~」という歌詞が当時耳に残ったと思ったら、作詞阿久悠さんでした。
作曲は森田公一さん。実に森田サウンドです。