監督
劉家良(ラウ・カーリョン)
出演
李連杰(リー・リンチェイ)
胡堅強(フー・チェンチアン)
黄秋燕(ホァン・チューイェン)
于承惠(ユー・チェンウェイ)
于海(ユエ・ハイ)
計春華(チー・チェンホア)
武術指導
劉家班のみなさん
1986年といえば、
ジョン・ウー監督の「男たちの挽歌」がぶっちぎりで香港の興行成績をあげた年。
この「阿羅漢」、リンチェイの「少林寺」3部作の3作目にあたるとされているけど、キャストがほぼ同じなだけで3つともまったくの別物。まぁ、功夫映画にはありがちなことですね。
主演のリー・リンチェイが17歳で映画、「少林寺」に初主演したのは1982年。
劉家良監督、劉家輝主演のあの名作「少林寺三十六房」公開の4年後のことでした。
リンチェイの「少林寺」がなければ、世の中の学校に「少林寺拳法部」というのはなかっただろう、とどなたかが書いているのを読んだことがあります(どこで読んだか覚えていなくてごめんなさい)。
私もその意見に激しく同意します。
正直、この2本の映画がなければ、日本全国の様々な大学や高校で「少林寺拳法部」などというものは存在しなかったでしょうし(ちなみに、中国少林寺と日本の少林寺拳法、当初はごっちゃに考えられていたようですが、本当はまったく別の拳法です)こうして私が阿羅漢を日本語吹き替え付きDVDで観るなどということもあり得なかったかもしれません。
ところで、今現在も、どこかの学校に少林寺拳法部というのは存在するのでしょうか。
私の時代は必ずあったような気がする。空手とも、もちろん柔道部とも違う、当時演劇部の自分にはかなり謎の多いクラブだった、少林寺拳法部。
さてリンチェイの出世作となった少林寺、1作目がヒットした次の年、1983年に2が公開されました。そして、その3年後にこの「阿羅漢」が公開。
キャストはヒットした少林寺1,2とほとんど同じメンバー。
しかし、それまでの2作と違うところは、監督が、あの劉家良であるということ。これは正直デカイ。
ストーリーの着地点とすれば、やはり同じ復讐の物語。
が、正直、むしろそれはオマケみたいなもの。(とりあえず闘う理由が必要なわけだし)
劉家良師父にとって、その作品で最も大切だったことは恐らく、北派少林の嵩山(すうざん)少林寺と南派少林の甫田(ほでん)少林寺が出逢って互いにその武術を認め合い、協力し悪を倒すってことだから。
映画はひたすら、その南北の少林寺の拳法の違いをアクションで描くことを主眼に進められてゆきます。
が、そこはさすが、香港の人気監督。
ところどころで、坊主の癖にヘビを喰っちゃうとか、幼い時からの婚約者エピソードとか(しかも、それを結ぶのが足に着けた銀の鈴ってとこがいいですね)予期せぬリンチェイの女装とか、軽くてキュートな青春ストーリーもちりばめられているところが、思いっきり劉家良ワールドを醸し出してる。
彼女が自分の婚約者と分った時のリンチェイのうろたえぶりなんか(なぜそこでバク転する?)、可愛かったですね。また登場する女子がツンデレ傾向にあるのも、いつものパターン。
それにしても紫禁城、少林寺、桂林、万里の長城とまさに中国の様々な場所でロケしたのには今更ながらに驚きました。
きっと師父も「キャッホー!」な気分だったのでしょう。
総督の誕生祝いの紫禁城のシーンでは衣装の豪華さもさることながら、お得意の獅子舞から(技術的にも相当スキルが高かった!)雑技団や京劇など、それまでの香港映画にない結構な数のエキストラと本格的な技が登場し、監督のウキウキ度が伝わるようでこちらも大変嬉しかったです。
そしてなんといっても、阿羅漢3000人(とは日本の予告編ちょっとフカしすぎ)と言われた実際の武術家達を使った武打シーン。
とにかく南拳と北拳の違いを含め、棍や槍、双刀や剣、縄鏢(じょうひょう)などの武器を使った動作など、少林寺の技や武術の良さと個性を思う存分フイルムに収めたい、という監督の一念で成り立っている映画。
その被写体としては、リンチェイはまさにうってつけだったでしょう。
加えて、脇を固めるメンツも、それぞれが中国武術チャンピオンですからね!
みなさん、動きがキレキレです。船の上や下での闘いなど、隅々まで本当に見ごたえがありました。
さぞコレオグラフは楽しかったに違いない、と思いますわ。
そんななか、なんとなく気になったのはオープニングクレジットで、いつもなら絶対にあるはずの武術指導の名がなく、ぼんやりとエンドロールのみに武術指導「劉家班」とひとまとめで表記されていたところ。
普通に考えて、劉家良が監督ということは当然動作指導も本人のはず。
まして南北少林の武術の違い、などという監督にとってこの上ない題材ですよ、なのにOPクレジットに武術指導として名が出ないなんてありえなくないですか。しかもショウブラなのに。
契約か何かの問題かもしれませんが、なんでだろ~、めっちゃ気になる!
それにしてもこの並み居るチャンピオンの中で、ひとりスバ抜けてリズムが違ってたのが、やはりリンチェイ。さすが世界の大スターになるだけあります。あらためて感心しきり。
そしてもうお一人、ラストバトルで、ユエ・ハイが見せてくれた「北派、蟷螂拳」は椅子からひっくり返るかと思うほど素晴らしかったです!
私的にはこの映画のハイライトのひとつ。
おまけにリンチェイのとダブルで見られたし(そういや彼はドラゴンキングダムでも披露してましたっけ)。
蟷螂拳というと、デビッド・チャンの「激突!蟷螂拳」とか、レオン・カーヤンのヤバい映画「癲螳螂」とかTVドラマ甄子丹版「洪熙官」のン・ティンイップくらいしかパッと思い付かないのだけど、ユエ・ハイのそれは一瞬観ただけで本格的だと分りました。
すんばらしい。やっぱ、すごいんだわ。感激。
彼は今公開中の「新少林寺」にも出演しているんですよね。
これも楽しみですねぇ。
ああ、これ書いてたら思い出した。
毎度甄子丹のことばかりで申し訳ありません。
若かりし頃の彼が武術大会で披露しYouTubeにアップされてる表演も、そういえば蟷螂拳でした。
こんな自分でもすぐに覚えられた蟷螂拳(とうろうけん)。カマキリの名の通り、動きに特徴があります。英語ではMantisと書くそうな。
阿羅漢 南北少林 トレイラー1
阿羅漢 南北少林 トレイラー2
阿羅漢 南北少林 日本版トレイラー
そのユエ・ハイさんの蟷螂拳表演(素晴らしい!)
こっそりおまけ若き甄子丹蟷螂拳表演
ちなみに于海さんと甄子丹は同じ動きをしております。
こうして見較べると、キャリアの差はやはりありますね。
ドニーさん、若い若い(笑)。