甲子園の応援はすごい、そんな話をよく聞きます。
けど、選手別ヒッティングマーチが一新されてからは、多分、歌詞がおぼつかない人が多いんでしょう。最近は甲子園球場も声が出なくなった、な~んて言うライトスタンド専門家もいます(笑)。
長年の甲子園観戦のなかで最も鬼気迫る応援だと、私が感じたのは2003年の日本シリーズ、第3戦目。
1戦2戦と福岡でダイエーホークスに簡単にしてやられ、雨で一日流れた翌日の試合です。
この日は試合前から、スタンドは異様な雰囲気に包まれていました。
「プレイボール!」
いつもの甲子園なら試合が開始しても、ざわついた空気が残っているのが普通。
なのにこの日は1球目からしんと静まり返っていて、球審の声がいつになく大きく響いて聞こえたことをはっきりと覚えています。
先発ムーア投手の第一球目は恐ろしいくらいのクソボールでそのままネットに直撃。
普通なら笑いや失笑で空気が変わるところですが、球場がざわめいたのも、ほんの束の間。ツ黴すぐにもとの固唾をのんだ雰囲気に戻ってしまいました。
あのときの空気はまさに「このゲーム、絶対に負けられないっ」と球場中が一丸となっている、そんな風に思えました。 甲子園にいる、いやテレビで応援している人たちも含め、タイガースファンすべての気持ちがぴったりと重なっていたわけでありますね。
しかもそれが10回の裏のサヨナラ犠牲フライの瞬間まで、誰の集中力も衰えなかった、そんな実感が現場にいてありました。
後にも先にも、この試合ほど甲子園の歌声が揃ったのを聞いたことはないでしょう。今もゴツイ歓声と応援だなぁと感じることはたくさんありますが、この夜は本当の意味で特別でした。
ちなみに翌4戦目、今夜もすごいのかと意気込んで球場に行ったら、結構いつもの甲子園だったりして。
「1戦勝ったからちょっぴり安心したな」というのがありあり分かって笑っちゃったこともセットとして記憶に残っています。ほんま、すぐ調子に乗るのが、なんというか実にタイガースファンらしい(笑)。
あれから3年と数ヶ月、ホークスはダイエーからソフトバンクに変わり、100打点カルテットと言われた4人のうち、すでに3人は違うチームに在籍。
タイガースの方も全7戦の先発で残っているのは下柳投手だけ。
「祇園清舎の鐘の声 諸行無常の響きあり…」
ぼんやり今日の大差負けの試合を見ていて、平家物語の冒頭を思い出してしまいました。
いや、ホークスさんはパリーグでも2ゲーム差で2位だから一緒にしちゃ失礼か。
昨日のサヨナラで、今期初めて、タイガースいけるかも!と思いましたが、はてさて、その勘は間違いか否か?答えは、シーズン最後まで待つことにします。