甲子園での、タイガース戦デーゲーム。
これは私の<好きなものTOP30>に間違いなくランクインします。
はやる気持ちを抑え、球場の階段を昇り目当てのスタンドへ続く入り口を見やれば、ほの暗い通路に長方形に切りとったように浮かび上がる、明るく輝くグラウンド。
その対比がまるでひとつの絵画のように見事で、それだけで心が沸き立ってくるのです。
試合開始まで15分。
両軍のスターティングメンバーを見上げながらスタンドがざわめいているころ、フィールドでは阪神園芸の皆さんが特大ホースで丁寧に土のグラウンドに水を撒き始めます。
1塁や3塁のベンチそばの前列に座っていると、飛沫が風に乗って、紅潮した顔にやさしく降り注いてくるのが分かるんですよねぇ。
その瞬間のなんともいえない幸せな気持ちったら。
グラウンド整備が終わったら今度は、園芸のベテラン職人が鮮やかな手つきで打席の白線を描いてゆくのが見えるはず。
その一糸乱れぬ直線の美しさには身震いすら覚えるほどであります。
仕上げは1、3塁側のネクストバッターサークル。甲子園のネクストは毎回すべてフリーハンドの白線で出来ていることをご存知ですか?
下書きも印すらないファールグラウンド上に一気に描き上げられる、なんという迷いのない完全無欠の円でしょうか!
やがてライトの方角から「たのむで~!」「がんばれ~!」さざ波のように徐々にファンの声援が近づいてきて、ブルペンでの投球練習を終えたタイガースの先発投手が、ゆっくりと歩いてベンチに向かってきたことが分かるのです。
いよいよ試合が始まる。
期待に満ちた観客の顔ひとつひとつを見ることができる、そんなデーゲームが、私は一番好きです。
昨日私は、その大好きな甲子園のデーゲームを見に行きました。
が、球場をリニューアルしたら、今までと変わってしまったところが二点。
まず、先発投手はグラウンドに出なくてもベンチに行けるようになりました。
そしてもうひとつが一番ショックなのですが、ネクストバッターサークルは、もう書かなくなったようです。ファールグラウンドの人工芝に丸い印が最初からついていました(涙)。
なんでそうなってしまったのか。とてもとても悲しいです。あれほどの素晴らしい技術を持った職人の技を、甲子園球場は、今後継承する気はないということなのでしょうか・・・(涙)
金本選手のサヨナラ打に浮かれたいのに、ちと複雑な気分のイーボシです。