映画 少林寺VS忍者(1978年・香港)


監督
劉家良(ラウ・カーリョン)

出演
劉家輝(ラウ・カーフェイ/リー・チャーフィ)
倉田保昭
水野結花
劉家良(ラウ・カーリョン)
八名信夫
袁小田(ユエン・シャオティン)

武術指導
劉家良(ラウ・カーリョン)

やっぱり大好きだ!劉家良。
この映画にもし、気に入らないところがあるとしたら、邦題くらいかな。
え、えーと、少林寺って、一体どこにでてきました?

原題は「中華丈夫」訳すと「中国の夫」

つまり、中国に嫁いで来た日本人の妻(水野結花)が結構な日本武術の達人で、これまた中国武術の達人である夫(劉家輝)と「どっちの国の武術がすぐれているか」と意地を張り合ううちに誤解が誤解を生んで、というのが事の発端。

劉家良。
この人の本質は、恐らくものすごい武術フェチなのだと思います。
ん~武術家にそういういい方も変ですが、10本以上監督作を観てきて、この人の場合、こよなく武術(この場合見せる方の武術ではなく本当の武術という意味)を愛する男が、たまたま映画を撮る大変な才能に恵まれていた、という認識でいい気がしてきました。

この作品のすごいところは、功夫映画でありながら、復讐や遺恨は一切なし、誰ひとりとして死なないどころか、対決して血すら流さないという闘いのシーンに尽きます。
まさに劉家良節を極めた最高峰といってもよろしいのではないでしょうか。

前半は、ひたすら壮絶な夫婦喧嘩。唯一流れる血はここで(笑)。
日本の武術はこうよ、いや、中国はこうだと、突然武器を振り回す、箸を飛ばし皿が舞う、豪邸の窓は割れ家具が破壊される。
とばっちりを受けるのは使用人たちです。まぁ迷惑なことったらない。

と、いっても、これは「ローズ家の戦争」ではないので、本当は憎み合ってるわけじゃない、ただの意地の張り合いなだけ。
ここで監督は観客に見せるわけですよ、どっちの武術が優れているか、そんな争いのアホらしさ愚かさ滑稽さを、ユーモアをこめて思いっきり。

んで、後半はその喰えない夫婦喧嘩を、彼女の日本にいる道場の兄弟子達が何故か喰ってしまい「これはすべての日本武術への挑戦だ!」(嫁は当然そこまで考えていない)と受け取った挙句8人が中国に渡り、劉家輝と1人ずつ闘うという展開に。

しかし、この映画には中国人=善、日本人=悪などという構図は一切ありません。
そこから浮かび上がるのは「うちの義弟に色んな武器を持たせ、本当の日本人キャストが繰り出す日本拳法と闘わせて、両方の拳法の違いを分り易くビジュアル化したい!」という劉家良師父の一念のみ。

登場する日本人武道家達は、たとえば敵が自分のサイを一旦奪えば返してもらっても、それを使わずに1本で闘おうとするし、みんな負ければ潔く負けを認める非常に高潔な人々として描かれています(ま、色々笑えるけど)。
当然、対戦相手の劉家輝にもそんな気持ちは伝わるわけで。

むしろ作中、ひょっとして一番卑怯だったのは、実は劉家輝だったかもしれません(笑)。

出色だったのは、倉田さんの驚愕の忍術、蟹拳法。
人間があんな高速で蟹走りができるとは想像もしませんでした。しかも1度や2度じゃありません。ずっとです!素晴らしい。

そして闘い終わって最後は全員で互いを認め合い大団円。なんという清々しさ。

それもこれも、もともとのきっかけが「ただの」夫婦喧嘩だったから。
よくぞ、こんなパーソナルなことを発端に日中武術合戦に発展するという発想を思い付いたものだと、あらためて師父の底知れぬ才能に敬服いたしました!

とにかく、この作品は劉家良師父の「武術に対する愛」というのが、ビンビンに伝わってくる、まさに傑作中の傑作です。

Heros of ツ黴€the East予告編
中華丈夫予告編

 

 

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