観た。アクションがすごいと聞いていたけど、メイキング、アクションシーン抜粋動画も一切見ずに臨んだ自分を褒めてあげたい。最高。
オープニング直後、雑居ビルの狭い廊下を歩く足音。
「なんだ。お前誰だ?」と声をかけた遠くの男へ放たれた銃弾。
なにがいいって、イントロも人間関係のヘッタクレもない。上映即、勝負のゴング。
スクリーンから一気に押し寄せるパッションと狂気。それだけで勝ったも同然。私にはお金を払う価値があります。
『殺人の告白』をヒットさせたチョン・ビョンギル監督は「スタントマン出身」とあちこちのプロフィールにあったけれど、監督のインタビューによると、アクションスクールで6ヶ月かけて履修したものの、スタントマンでもアクション俳優でもない、とのこと。
韓国発のスタイリッシュアクション映画「悪女/AKUJO」の監督を直撃インタビュー
にしても、その才能を買って好きな映画を撮りなさいと出資してもらえたという事情の羨ましさよ。そこで女性が主役のアクション映画を選んでくれて、ビョンギル監督、本当にありがとう。
一番アガったのは、冒頭の一人称から三人称に切り替えたポイント。お見事。
アクション監督クォン・ギドク、そして撮影監督はパク・ジョンフン。
『ハードコア』のレビューで、
「この映像はある意味早い者勝ちでそうそう何度も使える手じゃない、今後も、新たな技術やメディアの交わりにより新しい表現方法は増えるはず。それをワクワクしながら待ちたい」と書きましたが、このポイントとバイクシーンはまさに『ハードコア』から一歩進んだものとして受け取ることができ、めっぽう楽しかった!
あと、ラスト付近スクヒがボンネットに乗り、斧で体を支えながらバスを追いかけるシークエンスね、いや、笑った。オーラスもそのまま斧だし!
斧といえば、昔は香港映画の専売特許でしたが今では見なくなったし現代アクションともなればすっかりスタイリッシュになっちゃったので、韓国でこうして斧、ナタ、ハンマーが活躍しているのを見るのはとても喜ばしい。キム・オクビンのような美女が傷だらけで斧を振り回す、それがこれほど興奮するとは。ごぼう抜きで我が「斧バトルトップ3」に堂々ランクイン。愛してる!
せっかくこんな奇跡のような女性ハードアクション映画が出現したのだから、皆もっとはしゃいでるのかと思いきや、世間ではドラマ部分がダルイとかメロドラマなどという人もいるので驚いちゃった。
私にすればこれくらい、アクション映画に腐るほどある「謎の脱ぎ要員女優」や「主人公のモチベのためのレイプシーン」が突きつけるノイズの比じゃないっすよ!と正直思う。
ただ、ひとつだけ注文をつけるとすれば、今後も様々な国で女性を主人公にするサスペンス映画やアクション映画は製作されるのでしょうから、せめて脚本家に1人でいいから女性を加えて欲しいところ。足りないものは補ったほうがいいに決まってます。
これだけのことをやってのけたキム・オクビンはもちろん賞賛に値します。3ヶ月訓練したそうですが、それにしても彼女の身体能力とそのガッツにはいくら賛辞を送っても、まだ足りない。素晴らしい。
加えて「日本映画界にはアクション俳優がいないからダメ」説をまた覆してくれる証明になったのも痛快。アクションはね、人だけじゃない。時間と予算配分をどれだけかけるか製作トップの覚悟ですよ覚悟。
最後に。
一連のインタビューで一番驚いたのは、アクション撮影の裏話より何よりビョンギル監督が通ったというアクションスクールが合格さえすれば授業料は無料だということ。監督の通ったのは韓国の著名アクション監督チョン・ドゥホンが設立したソウルアクションスクール。
アクション映画に一番必要なスタントマンを養成することへの重要さが分かってる韓国映画界なら、この先もガンガン傑作を生み出すことでしょう。期待。