監督
スサンネ・ビア
出演
ミカエル・パーシュブラント
トリーネ・ディアホルム
ウルリッヒ・トムセン
ヴィリアム・ユンク・ニールセン
マークス・リーゴード
2011年度の、アカデミー賞とゴールデングローブ賞で最優秀外国語映画賞を獲ったデンマーク映画。
ずっと行きたかったのに時間が取れず、最終日の最終回にやっと滑りこむことができました。
本当は同じ新宿武蔵野館で上映している剣雨も一気に観たかったのだけど、いくらなんでもこの作品とは喰い合わせが悪いのではと思い断念。今日はこれ1本に。
前評判を斜め読みしたところ、硬派な社会派ストーリーなのかと想像していたのですが、なんの、非常によく出来たふたつの家族の物語でありました。
自分が映画を観ていて手放しで大好きだと感じる作品は「理由なしに興奮するもの」と「気がつけば、どっぷり感情移入してしまったもの」非常に乱暴に分けるとそういうことになるでしょうか。
この作品は間違いなく後者。
人間はいくら高い理想を持っていても、それを貫くのは本当に困難で、理不尽にも耐え無理解やタイミングの悪さ、そして何より現実とどう向きあうか、常に選択を迫られることに行きあたる。
そんなたくさんのハードルを思うと、日々やり過ごすことが精いっぱいな気がすることがあります。
この映画に出てくる主役たちに誰ひとり悪人はいません。(対比する存在としての悪人は登場しますが)なのに原題のタイトルは「復讐」です。
いわゆる普通の人達が理不尽な出来事や暴力や裏切りにあった時、どうするのか、復讐するのか果たして赦すことができるのか、この人類の永遠の命題に揺れ動く人の心を、映画は丁寧に観客に投げかけてきます。
結論はでません。でるはずなどないでしょう。だからこそ、これは非常に小さなふたつの家族の物語であるのです。
そう思って観ると登場するそれぞれの父親、そして子供たちのその瞬間瞬間の感情の狭間でつい涙が。気がつけば何度も嗚咽を抑えるのに難儀してしまいました。
原題は「復讐」ですが監督自身はインタビューでタイトルは「赦し」でもよかった、と語っています。邦題「未来を生きる君たちへ」というのは自分にとっては、とてもしっくりきたと感じています。
素晴らしい、本当に素晴らしい一本でした。
最後に余談。
主人公の1人、医師アントンを演じたスェーデンの人気俳優、ミカエル・パーシュブラントのわき腹に何やら文字の刺青があり、「これはアフリカの紛争地帯で働く医師として何かあった時に身元が分るように彫ってあるのか?謎だ」と思って観ていたのです。
その答えがパンフレットの中で、キャスティングについての監督の談話にありました。
「(この役に)身体中に元恋人の名前のタトゥーが入っていて、暴力沙汰を起こしたり、意識を失うまで飲んだくれたりすることで知られるミカエル・パーシュブラントを選んだら、まず人はアントンという役柄のポジティブな特徴を排除してしまう危険性があるでしょうね。
でも私にしてみれば、それはとても意図的な決断なの。
ある人の内面に潜む平和主義者を実生活においてあからさまに平和主義者として描くのは、あまり“セクシー”なことではないわ。でも、もしそれがミカエル・パーシュブラントなら、全てがずっとセクシーになる。(以後略)」
大変面白い、そして女性らしい視点だったので、とても印象に残った言葉です。
未来を生きる君たちへ日本公式サイト(予告編あり)
HAEVNEN IMDb
In a Better World (HAEVEN)US DVDオフィシャルサイト