ベイビー・ドライバー(Baby Driver、2017年・英、米)

エドガー・ライトの選曲が今回またまたまた一段と冴えて満点!そこにカーチェイスが加わってもうね、500億点突破!!!!カーチェイスに感じたアクション設計の多様性。最初から最後までワクワクしっぱなし。あっという間の113分。

エドガー・ライトらしく音楽がめっちゃいい。それにカーアクションが加わるとこんな血が沸騰するのか。始まってすぐのカーチェイス。さすがでございますハリウッド。もうね始終ニコニコです。たまらん。

エドガー・ライト監督のやりたいことが詰まってる感がスクリーンからガンガン迫ってきて本当に楽しかった。こういう熱量の高い作品はいい、本当にいい。

冒頭。2006年型、赤のスバル インプレッサ WRXが銀行の前に停車し、そのホイールから覗く赤いブレーキパッドにSUBARUの文字。自分は車の事はまったく分らないドシロートだけど、そのクールさは感じとったぞ。もうここから死ぬほどカッコいい。

ドライバーシートのベイビーが、旧型i-podでThe Jon Spencer Blues Explosion Bellbottomsを選曲する。銀行強盗に向かった3人を待つ間、曲に合わせて歌いリズムをとりワイパーをも踊らせちゃう。

強盗を終えた3人が車に走り込んで、助手席のひとりが「GO!」とばかりに前を指差した瞬間ベイビーはバックで急発進。180度ターンでゲッタウェイ開始。

路地では2台のトラックを挟んだギリギリのところで180度スピンをしながら素早くターンを加えて体制を立て直しすり抜ける、その鮮やかな事。これぞザ・カーチェイス。

世界中には車に魅入られたのがゴマンと存在するけれど、日本にも「走り屋」と呼ばれるストリートレーサーがおり、特徴のひとつとして、山の多い地形のため峠を駆け抜けるドリフト命の人達がいる。そういう国の車だから、かつてその分野は強かったのです。日産のシルビアとかGT-R、180SX、ホンダのシビック、マツダのRX-7など数多くの名車を生み出しました。スポーツカーがあまり売れない時代になっちゃったので、今走り屋の人達は、こういった名車の中古を買う傾向があるそうな。

本作に登場するスバルのインプレッサ、恥ずかしながら私のような車オンチには、そんなすごい車という印象がありません。

そこで、雑誌『ベストカー』編集部にいる弟にコーフン気味に電話したところ、インプレッサはFIA世界ラリー選手権(WRC)において年間チャンピオンであるマニュファクチュアラーズチャンピオン3回(1995年、1996年、1997年の三連覇)、ドライバーズチャンピオン3回(1995年、2001年、2003年)を獲得しているシリーズ車で、ラリー人気の高いヨーロッパで有名だっていうじゃありませんか。すまんかった。

「95年のコリン・マクレーと01年のドライバーズチャンピオンになったリチャード・バーンズは英国人だよ、監督はスバル好きなんじゃないか?」と言っておりました。

撮影で使われたインプレッサは4台あって、どれも違う改造がされたそうです。そのうちの1台はドリフト用に特化したものなんでしょう、後輪駆動に改造。

スタントコーディネーターは『ドライブ』や『ジョン・ウィック』シリーズのセカンドユニットとして経験を積んだダリン・プレスコット(今度ジェラルド・バトラー主演映画の監督をするらしい)。メインのスタントドライバーに『ダークナイト ライジング』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』『ジョン・ウィック』のジェレミー・フライが今回はセカンドユニット・スタンドコーディネーターと兼業で担当。

Bellbottoms の曲とともにきっちり5分12秒で終了するカーチェイスは、それだけでお金を払う価値が充分にありましたよ。めっっっっっっちゃかっこいいい!

しかも、他のシーンでは使用車がアメリカのシボレーに代わったりするので、その特性を活かしたスバルとは全く違うチェイスになっているところが素晴らしい!こっちは壁を走ってダッジ・ラムとバシバシぶつけ合うガチンコ対決っす。車は門外漢な自分だけど、香港アクションや功夫映画に通じる、キャラクターによって動きを変える格闘設計と同じくらいの多様さに唸りました。

30曲に及ぶ選曲はすべて監督エドガー・ライトによるもの。一方、このカーアクションで使った車をどこまで監督が意識して選んだのかは分りません。当然事前のミーティングを綿密にし納得した上での事でしょうが、私個人の想像では、スタントコーディネーター、ダリン・プレスコットやカースタントドライバーのジェレミー・フライらがチェイスに変化をもたらすため意図を持って選んだのではと思っています。

もちろんそれでいい。目玉となるカーチェイスシーンを他人にゆだねても最終的にはちゃんとエドガー・ライト作品に仕上げたすんばらしいセンスが彼の優れた才能の一部。それこそ、ハリウッド映画という舞台でまごうことなく「自分の作品」を作れた「強さ」だと感心した次第です。

参考になった記事
後輪駆動のスバル「WRX」も登場! 映画『ベイビー・ドライバー』のスタントマンが撮影の舞台裏を語る-autoblog.com
2008 WRC rd.1 MONTE CARLO SUBARU IMPREZA
↓どんだけこれがやりたかったんや、エドガー・ライト!という記事
大ヒット『ベイビー・ドライバー』の監督、ミント・ロワイヤルのMVで「予行演習」していた-rockinon.com

映画『ベイビー・ドライバー』予告編

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モーターウェイ(2012年・香港)

前回書いたジョン・ハムのピーキーカットはこの映画のキャラだったのね。先日、プロ野球関係の仕事をした時に、そこの女性スタッフと「最近の選手はツーブロックが多い」という話になりました。特に巨人の坂本選手は、聞いたところを想像するにまんま『ピーキー・ブラインダーズ』の兄、アーサーにそっくりな気がする。野球選手は帽子やヘルメットをかぶっているため、脱いだところを見る機会が少ない。まだ確認できませぬが、見てみたいぞ。

ところで、ベイビー役のアンセル・エルゴートは溺愛するフィギュアスケーター・アレクセイ・ヤグディンの若い時(長野五輪のあたり)に非常に似ておりましたな、と誰も共感できないだろう事を言ってみる。それも好感度が高かったし、なんか違う意味でドキドキしちゃったわ。

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