レイトオータム(2010年、韓国・香港・米)

『捜査官X』で素晴らしい女優だと感心したのが最初の出会い。その後観れば観るほど好きになるタン・ウェイ主演という事で楽しみにしてたのに公開時は見逃してしまった映画。ネトフリに入ってたのでやっと観賞。

ストーリーとしては別段ひねった所もないと思ったら、実は1966年公開の有名韓国映画のリメイクで、斎藤耕一監督、岸恵子、萩原健一主演の邦画『約束』(1972)もその映画をもとにしているといいます。ショーケンの俳優デビュー作のこちらも観てみたけど、それはまたの機会に。

本作は舞台をアメリカ・シアトルに設定、女を中国系アメリカ人に男を韓国系に変えてある。正直言わせてもらうと、これは女優の演技を愛でる映画に間違いなく、またそう思わせたキム・テヨン監督と彼女は後に結婚までするのだからガチであります。これでタン・ウェイは韓国の百想芸術大賞 映画部門 最優秀女優演技賞を獲得しました。

残念ながら相手役のヒョンビン氏のことを何も知らずに観てしまったのだけれど、最初は無理があると感じた彼のヘアスタイルと人物像も、レストランでの「妻が予約をした」という機転で好感度がぐっと上がり、サッパリわからない中国語で話される女の告白を聞きながら、知ってる「好(いい)」と「坏(悪い)」というたった二言だけで相槌を打つ姿は、当初の違和感を覆すのに充分すぎるほどでした。映画におけるキャラの一発逆転は人間関係を描写するうえで結構難易度が高い。

これは間違いなく監督と俳優ヒョンビンのファインプレー。彼の徐々に変化する姿勢が心温まるからこそ、その後のファンタジーさにも耐えてゆけます。

とはいえ閉鎖された遊園地での遠くに見える男女のやり取りには困ってしまったのが本音。しかし、それをはるかに凌駕する告別式後のタン・ウェイの解放された号泣には、胸がつまりました。観る者にとっては心から彼女が彼に出会えてよかったと思えた瞬間だったのではないでしょうか。

ラストの曖昧さに関しては本作の評価を損なうものではないと自分は思います。映画は本来、すぐ答えが出るように何もかもを判りやすくしなくてもいいはず。

タン・ウェイはこの後、中国映画『北京遇上西雅圖(原題)』でヒロインとしてラブコメに挑戦。ジャンルではかなりのヒットになりました。こちらもシアトルが舞台ですが、性格は本作と正反対で気が強く我慢というのを知らないチャライ妊婦(!)という役柄。わざとなのか偶然なのか、同じシアトルを背景に描きながら真反対の役をあてるというのが、現状の中国映画の景気の良さと余裕を感じます。

『レイトオータム Late Autumn』予告編

関連レビュー
北京ロマン in シアトル(原題・北京遇上西雅圖 2013年・中国)@2013東京/沖縄・中国映画週間

にしてもNetflix、「レイトオータムをご覧になったあなたへ」というお勧め一覧に『ドラゴン危機一発’97』が入ってるのは解せん。それは無理があり過ぎる。

カテゴリー: film タグ: , , , , , , , , パーマリンク