気がつけば香港からいわゆる賀歳片(旧正月コメディ映画)というのが消えてしまった。と、思ったら、しれっとウォン・カーウァイが作ってました。舞台は上海だけど
ネタバレなしのつもりですが、私のことなので要注意。前回に引き続き、地味に金城武祭り状態。これは昨年クリスマスシーズンに公開された作品。
いつの間にか、香港からいわゆる賀歳片(旧正月コメディ映画)というのが消えてしまいました。いや、その時期に公開する大作映画はちゃんとありますが、キャストをオールスターズで固めてカメオ出演者がこれみよがしに豪華で、内容なんかなんもないようなバカバカしいコメディ映画としての賀歳片。
と、思ったら、公開は残念ながら旧正月ではなかったものの、太陽暦の正月向けにしれっと、プロデューサー王家衛(ウォン・カーウァイ)が作っておりました。主演はトニー・レオンと金城武。共演は陳奕迅(イーソン・チャン)、アンジェラ・ベイビー。
数年前、『桃(タオ)さんのしあわせ』『グランド・マスター』『ドラゴン×マッハ!』などでプロデューサーを務めた陳永雄(ジェフリー・チャン)にインタビューした際に、中国で製作される映画の本数があまりに多過ぎて、主役を張る俳優はもちろん、監督から脚本家、作曲家、スタッフ全般、ポスターをデザインするデザイナーに至るまで慢性的に人手不足である現状をうかがいました。
その影響でしょうか。今、気なる新作をつらつら眺めると初監督作品がやたら目につきます。大抵は、助監督、俳優や編集者、カメラマン、もしくはCMディレクターとしてキャリアを積んできた人達なんですが、なかには映像とは無縁だった人の初監督作品というのもあったりします。
その多くが作家で、今作も中国の作家・張嘉佳(チャン・ジャージャー)の同名短編小説を原作者が脚本も担当したという初監督作。しかもプロデューサーはウォン・カーウァイ。
とりあえず、トニー・レオンだしここはやはり広東語で。と思ったら、この広東語バージョンは普通話と会話するタイプでした。というか、ほとんど普通話だった。
映画はヒットしましたが、内容のあまりのバカバカしさに観客は目が点になったようです(笑)。え~、あの、トニー・レオンと金城武にこんなアホな事をさせられる人がいるのがいいじゃあありませんの。さすがカーウァイさん。特に金城くんのキャラはかなりキテる。しばらく「モウモーウ―――!!!」という彼の絶叫が耳から離れませんでしたよ。天下の二枚目ですが、こういうことさせたくなるんだろうな~。昔はヘンテコなことも2人してたよねぇ、と懐かしいやら楽しいやら。
で、この作品の中盤にご機嫌なアクションシーンがあります。アクション監督は谷垣健治さん。ちょっとだけどお手伝いするんだと、やる前は仰ってましたが、案の定、気がつけばガッツリ撮らされたそうで。ですよねー、なんか想像できましたよ。
ウォン・カーウァイに会った?と尋ねたら(興味津津)、アクション撮影に関しては張監督というよりほとんどカーウァイ監督しか見なかったというお言葉。ほんの少しのつもりだったのに「どんどんやっちゃって!」とリクエストされ長くなって・・・と、それも容易に想像がつく(笑)。
さて、そのアクションシーンですが、超派手楽しいそしてタケシー!トニィィィー!エモい!カワイイ!みーんな縦横無尽に暴れ回ってるぞ。特に、このハンサム2人のアップショットがブサカワイイのがよかった。ツインズの時に「アイドルのアクションはアップをブサ可愛く撮るのがポイント」と谷垣さんが言ってたのを思い出しました。うふふ、カテゴリーはアイドル。
途中、トニーと対峙したナース衣裳のお姉さん。彼女の足元のアップもあいまって「お、グランド・マスター?」と脊髄反射したら、お顔もよく似てるぞ?調べたらなんと金樓でトニー葉問と戦った八卦掌の遣い手を演じた周小飛(チョウ・シャオフェイ)その人だったのでした。うお、めっちゃ小技の効いたキャスティング。
彼女、『ソード・オブ・デスティニー』でも、お玉で悪人をシバキ上げた茶店の女将として出演し、劇中ミシェール・ヨーのスタントダブルもつとめました。あの素晴らしい動きです、一度仕事をしたら袁和平(ユエン・ウーピン)もカーウァイ監督ももう一度使いたくなるでしょうね。覚えたっと。
にしても、ジャーマンスープレックスをかますトニー・レオンが見られるとは!一瞬たりとも想像したことなかったよう。ありがとう、谷垣さん!大乱闘では色んな人のブルース・リーもプロレス技も踵落としも無影脚も出てくるよ。んで、なぜか音楽がスラムダンク。なーぜーだー。アニメ、スラムダンクは中国大陸でも人気だったそうなので1980年生まれの張監督にとっては青春の1曲なんでしょうか。いや、アクション監督がニホンジーンだから、なんて身も蓋もない理由だったとしても驚かない、それぐらい昔の香港映画はアホだった(誉めてる)。
多分、谷垣さんが撮ったシーンはかなり使われていそう。楽しかった。けどスラムダンクとアクションのリズムが合ってなかったような気がして残念ですよ・・・。試しにThe Prodigyを適当に流して見てみたらシンクロ感が出て一段とよかったわ。
これ以外にも、作品には多くの香港台湾大陸の有名曲が使われております。そのあたりも香港賀歳片っぽいね、BEYONDも数曲。まったく詳しくないけど、これは絶対古惑仔!と閃いた陳光栄作曲・イーキン・チェン歌の古惑仔シリーズのテーマとか(調べたら、『新・欲望の街Ⅰ 古惑仔 疾風、再び』の 甘心替代你 という主題歌でした)。もちろんイーソンもルハンも歌うよ~。
なかでも、トニーが美女バーテンダーを口説くときにかかる曲がね。そこで使う?みたいな。この口説き方、死ぬほどかわいかったなぁ、まるで90年代のチャウ・シンチー。こんなのも絵になるんですねトニーさん。その口説かれる羨ましい美女はスーパーモデルの杜鵑(杜鹃・ドゥ・ジュアン)素晴らしく綺麗。ラスト近くの2人のショットと彼のナレーションはしびれますから。トニー・レオンファンは絶対に見てください。
一方金城武くんのお相手は台湾美女の張榕容(サンドリーナ・ピンナ)。彼女の事は初めて見たけれど、フランスとのハーフらしいのですがとってもキュートでね、いっぺんで好きになっちゃった。張榮吉(チャン・ロンジー)監督の2011年作『光にふれる』にも出演して賞を獲ったそうです。この金城サンドリーナのカップルがまためっちゃいいの。思わず本気と書いてマジと読むこと間違いなし。
鹿晗(ルハン)、李宇春(クリス・リー)、李璨琛(サム・リー)や台湾の重鎮俳優などゲストも多数。お、そういえば、葉太太の熊黛林(リン・ホン)もアンジェラ・ベイビーの恋敵の役で登場しておりました。葉問以外の彼女はいつもキワモノ扱いでなんだか不憫。『イップ・マン 継承』すごく良かったし、たまにはまともな役をやらせてやってくれ。この2人の女の勝負が酒飲みバトルだったんですが・・・・正直ただお酒を飲むだけなので絵は似てくるし、ラウンド9までやる必要はあっ(略
でも笑いもそういう苦笑も一緒にあるのが賀歳片(私の中ではすっかり賀歳片枠)という気もするから、ま、いっか!武くんの唇も見事に腫れてたしね!
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