一言でたとえると出前一丁映画。香港で出前一丁が国民食といってもいいほど人気なのは知っていました。が、実は大陸にもその余波が及び、すごい人気となってることまでは知らなかった!ネタバレなし
普通話、簡体字字幕で観賞。かわいい映画でした。ある有名ホテルチェーンの御曹司の金城武。食道楽の彼は食に関して度が過ぎるほどシビア。その彼が買収を目論む上海の高級ホテルで唯一気に入った料理人が周冬雨(チョウ・ドンユイ)。しかしこの2人、すでに最悪の初対面を済ませており・・・というボーイミーツガールもの。
監督は1982年生まれの許宏宇(デレック・ハイー)。業界では編集として経験を積んできました。エディターとして関わったのは『ウォーロード/男たちの誓い』『孫文の義士団』『捜査官X』『カンフー・ジャングル』『スキップ・トレース』『修羅の剣士』など。金像奨や金馬奨でノミネートもされておりますが、監督としては今作が第一作目。
ヒロインは 、デビュー作である張芸謀(チャン・イーモウ)監督『サンザシの樹の下で』で数々の映画新人賞を総ナメにし、 曾国祥(デレク・ツァン)監督の『七月与安生』では台湾金馬奨の主演女優賞に輝いた、いまや若手演技派女優の筆頭である周冬雨(チョウ・ドンユイ)。
サンザシのイメージが先立つとベタな清純派かと思いますが、短いキャリアながらも多くの作品に恵まれ、そのほとんどを違う監督違うタイプの役で渡り歩いてきただけあって、実にそつがない。
普通アイドル的な若手女優なら絶対しないブサ顔も厭わず、勢いでスクリーンの向こうからグイグイ迫ってくる。今後どんな女優になるのかと想像したら、ちょっと空恐ろしいくらいです。
そして、その彼女のお相手となるのが、歳の差18となる我らが金城武。最初この2人のラブコメディと聞き「うーむ」と不安に思ったのですが、そこは金城くんと長いおつきあいのプロデューサー、ピーター・チャン。私のドストライクであるキャラクターをあてました。
高級スーツに身を包んだ髭メガネ男子でやんす。まるで捜査官Xのシュウさんが現代に蘇ったかのような変人キャラが楽しい。これって、まんまシュウさんだよね?ね?ね?大好き。
トランクに大量の出前一丁を隠し持っている彼は、睡眠障害なのか夜中に起きて自らの作り方で出前一丁をこしらえる。
それは、
・100度に沸騰したお湯を沸かし
・麺を色の変わるか変わらないかのアルデンテにゆでる(武は3分ゆでていた)
・その麺を湯切りし素早く冷水で〆る
・水切りした麺をどんぶりにあけ、ネギ粉末のスープの素、オイルを混ぜ、撹拌
・そこに作り方にある八分目の量のお湯を加えふたをして3分待つ。
・コツは絶対に時間を守ること
というこだわりよう。
実は偶然この作品を観る前に、雷に打たれたようにどうしても出前一丁が食べたくなって近所のスーパー2件を回ったのですが、5食パックはあるのにバラ売りはなし。仕方なくなぜか「マルちゃんの3分ゆでて簡単 スープワンタン」を買ったばかりでした。
香港と言えば出前一丁、出前一丁と言えば香港。ご存知の通り、香港でのインスタントラーメンシェア60%を誇るその味は広く親しまれ、茶餐庁で必ずといっていいほどメニューにある。しかし大陸にも数年前からその余波が及び、人気となってることまでは知らなかった。
これだけじゃなく、ヒロインが高級ホテルの料理人というだけあって、目にも鮮やかな料理がふんだんに登場するので確実にお腹が空きます。絶対に夜中に見ちゃだめ。グルメや流行りものを下品にならず上手く取り入れた軽い作風に思わず頬も緩んでしまう。
劇中、高曉松(高晓松、ガオ・シャオソン)という、政治や国際情勢などを辛辣に解説するネット番組で人気の文化人が、トレードマークの扇子を手に登場。彼からインタビューを受ける主人公がぬいぐるみを手に挨拶するショットがあります。中国のインタビュー動画をご覧になる方ならよく目にするだろう光景。なぜか大陸では、番組のキャッチにゲストにマスコットを持たせ挨拶させることが多く、笑ってしまいました。河豚だしね。
とにかく、周冬雨がノリにノッてるオーラ全開でキラキラしておりました。そして震えがくるほど男前武くんの変人ぶりと食べるシーンを同時に堪能することもできたのであります、かわいかったし、金城ファンなら悶絶するほど素敵な台詞やシーンもあるよ!
香港や大陸で大人気の出前一丁、台湾でも人気かと思いきや、当然売ってはいるでしょうけど、そこまででもなさそうな雰囲気。まして香港のように、ちょっとしたお店のメニューとしてあるのは珍しいみたいで、あっても港式のお店で出す程度のようです。
さて、時間をきっちり守り、少しでも超過したら箸もつけない、そんな男は果たしてこの映画で出前一丁を食べることが出来るのか?それは見てのお楽しみ。