キングコング髑髏島の巨神(Kong: Skull Island 2016年・米)

コング先輩すっごくいい人すぎる!こんな奴らは殺っておしまいなさーい。キングコングも怪獣映画もほとんど観たことのない人間のレビュー

えーっと、ほとんど前情報なし。キングコングが主役の怪獣映画だということ、サミュエル・L・ジャクソンとトム・ビルクストン、ジエン・ティエンが出演しているという事しか知らなかったよ。

なので、冒頭いきなりP-5マスタングとゼロ戦が墜落したのにものすっごく驚きました。しかも二機のパイロットは死なず互いにサシで闘いだす。なんと日本兵はMIYAVIじゃないか。と、そこへ巨大な生物の影がゆらりと2人の前に姿を現し驚愕の表情を浮かべる2人。

で、場面が変わるといきなり1973年、ベトナムから米軍の撤退が決まった直後、え、これってベトナム戦争末期なの?とかなり面喰らいました。ぼんやり現代が舞台とばかり思っていたので。

私がこの映画で映像的にまず興奮したのは、嵐渦巻く髑髏島へのヘリアタック。サミュエル隊長がイカロスの話を無線でしながら隊を鼓舞し引っ張るシークエンスはCGや3D効果もよくて非常に見応えあり。

で、なんとか暴風域を抜けると・・・そこには人間を真っ向から拒絶するような密林が広がっておりました。

やおらオープンリールと巨大スピーカーでBlack Sabbath“Paranoid”を大音量で流しながら、ヘリ隊は矢継ぎ早に地質調査と称して爆弾を投下。げええ、ベトナム戦争・・・。この瞬間にうすら寒さと嫌悪感がじわりとくる。

早いとこコングパイセンこんな奴らやっつけちゃってください!という心の叫びが届いたのか、巨大なコングさんが夕日をバックに登場。『地獄の黙示録』のポスターに激似だけど、まず監督はこれを撮りたかったわけです。この夕陽に揺らめくコングのシルエットとヘリが対峙するカットだけで100点満点。

その後はジャングルを破壊するヘリをちぎっては投げ、メッタメタに破壊。いいぞもっとやれ。このシーンがとにかく素晴らしかった。カメラワーク、CG、近年飽き飽きしていた過剰スローモーションでこんなに気に入るものがあるとは思わなかった。最近ではぶっちぎりに好き。一転して皮肉さがあふれる音楽やニクソンのバブルヘッド人形の描写もしびれちゃう。もうね、私にとってはここが間違いなくクライマックス。この数分の映像にサービスデーIMAX3D料金1900円払った価値がありました。

とにかく兵隊だか傭兵だかモナークだか反戦カメラマンか知らないけど皆殺しだ!と登場から応援したくなる作りが上手かった。コング兄貴、ヘリのメインローターで怪我しちゃう~いやだ~とハラハラするくらい、心はすっかり島の守り神の味方でございます。

それは後半ナパーム弾にやられるコング兄さんの姿にあやうく泣きそうになってしまったほど。戦争でイカレて死に場所を求める大佐のせいで可哀そうなのは部下と髑髏島だ、許すまじサミュエル「マザーファッ」ジャクソンめぇぇぇ。

人間はほとんどがあえてモヴキャラクターみたいに(もしくはそれに準ずる記号化として)描かれており、私が名前をしっかり覚えられた登場人物はマーロウとガンペイのみというボンヤリさ。(サミュエルは、パッカード大佐というより安定のサミュエル・L・ジャクソン)

そのなかでマーロウはよかったですね。原住民の中から出てきた時は一瞬この人だれ?と思ったのですが、冒頭に登場した米空軍のパイロットは彼で、命を狙った敵である日本兵とあの後ブラザーになり島を脱出すべく船を作っていた、と語られる。おお、そこには三船敏郎とリー・マービンの『太平洋の地獄』のようなドラマが隠されているわけなのですね。

マーロウが瞬時に口にする日本語や日本刀を手にする姿など、説明過多になることなく、いかに彼等が友情を育んだのかがさりげなく伝わってくるのがよろしかった。しかもガンペイはすでに殺されてしまったという。誰が死んでもおかしくない流れに、ただひとりこのジョン・C・ライリー演じるマーロウだけは生きて返してあげてもいいなと思いました。美味しい役です。

前半の対ヘリ無双に比べると、途中からやや失速気味だった気もしますが、それでも巨大ナナフシにはビクっとしたし、夜間アクションもなく昼間の闘いのCGにお金かけてました。にしても、コング兄貴、最後のコングって設定がちょっと切なすぎる。この先ガールフレンドもいないの?絶滅種なの?

自分は映画で現実的かどうかをとやかく言うタイプではないつもりですが、さすがにブリー・ラーソンとトム・ヒドルストンのジャングルにおけるタンクトップやTシャツ1枚などという軽装には「あっという間に正体不明の虫に刺されて高熱が出そう」と気が気じゃなかった。←蝙蝠みたいな怪獣や蜥蜴ラスボスに人が次々と食われていくなか、そこかよ!

といいつつ、それもあの圧倒的コングのヘリ破壊の前では文字通り小さなことですけどね。あそこだけ永遠に繰り返し眺めたい。

カテゴリー: film, アクション映画 タグ: , , , , , , パーマリンク