新宿TOHOでIMAX3Dの試写を観ました。ややネタバレ。香港や大陸で何本か中国産3D映画を観てきましたが、さすがハリウッド、間違いなく大陸比でピカイチのVFXと3D。これは絶対IMAX3Dで観た方がいい。
2016年、中国のスクリーン数が米国を抜いて世界トップになったことが報道されました。世界映画市場としても第2位の立場にあり、彼等はどんどん資金を出しハリウッドと合作映画を制作。
昨年はSTXエンターテイメントが8月に中国テンセントと香港PCCWの出資を受けたことを発表。その先駆けとなったのが大連万達グループの米レジェンダリー・ピクチャーズ買収。そのレジェンダリー・ピクチャーズが、中国でハリウッド大作を作りました。主演はマット・デイモン、監督はチャン・イーモウ(張芸謀)。
監督とほとんどのキャストは大陸からですが、脚本カメラ美術衣裳音声などそれぞれの現場トップはハリウッドの映画人で固めております。
物語は、西から爆薬を捜しに来た、顔の識別不能な髭モジャ白人数人が中国大陸で山賊に追われるシーンから始まります。誰が誰だか分らないし、このノリがもっと続くならきついなぁと心配したのもつかの間、謎の怪物に襲われてから展開がぐんぐんスピードアップ。これイケる!と内心大喜び。
そのうえ、あの万里の長城に隠された意味が明らかになり、無数の怪物に応戦する禁軍との戦闘がスペクタクルでね。ここは見どころ。いちいち武器や戦い方が素敵。よもや立体機動装置とか言わないように!おまけに伝令を報せる太鼓はダブルヌンチャクで叩いてるぞ。いや、これはお金払う価値があるかも。
が、アクションがひと段落した中盤のドラマから少々失速気味。このあたりのタルさが中国映画っぽい。しかも後を継ぐ将軍が、あの体幹の弱そうな細っこいお嬢さんとは。とほほ。
砂漠を超え爆薬を手に入れてヒトヤマ当てようと目論む傭兵ゆえか、人を信じないやさぐれマット・デイモンが、彼等の大義にほだされて(強引な展開)自ら武器を手に共に戦い怪獣退治。ここからまた盛り返す。いいぞ派手にもっとやれ。怪獣なかなか可愛い奴だったし、これは絶対2Dでなく3DIMAXで観ることをお勧め。なんといっても104分というコンパクトさがいかしてる。チャン・イーモウは大作も多いので、結構ランタイムが長いというイメージがあったのですが、実は2時間越えはそれほど多くないという事実に調べてみて驚きました。
残念だったのは、アンディ・ラウが文官だったことと(麗しい甲冑姿が見たかった)、監督チャン・イーモウの存在がまったく透けて見えなかったこと。まぁ監督としては、ここらで一発大作を当てておかないと『妻への家路』みたいな地味な秀作が撮れなくなってしまうので仕方ないのでしょうか。
大陸では11億元超えのヒットとなりましたが、それでも狙った半分以下の興収だったそうです。正直私ももっとぶっちぎるのかと思っていました。なんでやと中国映画サイトを覗いてみると「チャン・イーモウは終わった」という意見やキャスティングをはじめオールスター中国キャストを活かしきれなかったことへの苦情が並んでおりました。えー君ら、ワイスピとかトランスフォーマーとか、パシフィックリムとか大好きじゃんかー、なんでチャン・イーモウで長城を舞台にしたらそんなしょっぱい意見になるんだよ!うーん厳しいな中国人。
私としてはジン・ティエン(景甜)ちゃんの役をまるっとチャン・ハンユー(張涵予)に統合して、マット・ディモンとの友情を花咲かせてくれれば、絶賛だったのに!実に惜しい。この2人絶対に似合ったはず。
チャン・ハンユー大好き。彼はチアン・ウェン(姜文)と並ぶ中国セクシーヴォイス俳優のツートップ。その素敵な声だけを聞くなら『孫文の義士団』がお薦め。最後まで顔を見せず声だけで引っ張る孫文を特殊メイクをして演じております。あとはフォン・シャオガン(馮小剛)監督『戦場のレクイエム』とかツイ・ハークの『タイガー・マウンテン 雪原の死闘』もワイルドセクシーでいいぞ~。
そういえば来年2018年公開される『君よ憤怒の河を渉れ』のリメイク『追捕 MANHUNT』(ジョン・ウー監督で日本ロケ撮影)では高倉健さんの役をやっております。実はこの撮影時に監督の広東語通訳としてついたソフィさんこと上川智子さんと昨年ご飯を食べながら、チャン・ハンユーの話などをしたのでした。うふ。「彼、元声優でね、骨董品が趣味なんだって」と彼女に言ったら「そんなネタどこで仕入れてくるの?」と驚いておられました。えへ。
グレートウォールは2017年4月14日、日本全国一斉公開。