民国時代が舞台の見事な武侠映画。物語のネタバレはないけどアクションシーンのネタバレ満載です。ご注意を。
いまさらですが、せっかく日本公開するので残しておきます。
昨年香港での最終日に観ました。午後の回で客は2人、なのにその人が前から3列目というなかなか思い切った席取り、私は7列目でした。どうせなら貸し切りしたかったぜ。
ラウ・チンワン(劉青雲)とエディ・ポン(彭于晏)、そしてウー・ジン(吳京)、ルイス・クー(古天楽)のファンは絶対に観た方がいい。らうちんがとにかくカッコイイ。エディはいつものさわやかをちっぴり減らした感じでしょうか(それでも充分さわやか)。ルイスは『ドラゴン×マッハ!』より、もっと鬼畜な悪役(どんだけ)。似合うなぁ~。
監督はベニー・チャン(陳木勝)、当然のことながら最終的には爆発しまくってますのでご安心を。
時は民国元年。軍閥割拠内戦状態の中国大陸。
町はずれの飯屋で一杯の麺をたくさんの子供達が分け合って食べようとするさなか、強盗が登場。そいつらを簡単にやっつけてみせたのは、鍾馗様のような髭を蓄えたエディ・ポン。軽やかにユーモラスに小悪党をやっつけちゃいます。
アクション監督はサモ・ハン。ワイヤーを使い吹っ飛ぶ男や、子供達が見ながら笑ってしまうような軽妙な動きが、物語の導入としてとても楽しいし、いかにもサモハンという演出。
サモハンは私のお気に入りのアクション監督ですが、この人のアクションは、ありえなさそうな動きでさえ一度見ただけでちゃんと何をやってるか理解させるところが凄い。
特にいつも感心するのが、間に挟まるクローズアップや決めのルーズショットが自然な事。アクション監督によってはそこが取ってつけたように浮いてしまうこともままあるなか、サモハンはそういうことがない。秘訣は一体なんなのでしょうね。ロングショット、ピックアップ、吹っ飛ぶ人間の軌道、リズムを感じるカメラワークと編集がとにかく気持ちいい。大好き。
この辺りはさすが京劇出身者、という気がします。京劇のリズムはとにかく緩急がはっきりしていて、要所要所で必ずタメがある。香港アクション映画の源流が京劇にあることは明らかですが、ここがハリウッドのアクションとも他のアジアアクションとも決定的に違うところですよね。
このファーストシーン。舞台設定、古銭の扱いといい、否応なしにキン・フー(胡金銓)監督、チェン・ペイペイ(鄭佩佩)主演の武侠映画の大傑作『酔大侠』を思い出させてくれます。
エディ・ポンは助けた子供達や引率の美しい女性教師から「大侠(日本の時代劇に例えれば、助けてくれた薄汚い浪人にむかってお侍さまと呼びかけるような響き)」と言われても、涼しい顔のまま目隠しをして馬に自らの行く先を決めさせるような風来坊。音楽もどことなくウェスタン調。
民国期を舞台にしつつ、冒頭だけでこれが武侠映画なのだと観客に伝えている。多分、武侠映画としてギリギリの時代背景。近代だから剣客が空を舞うほどのファンタジーはありませんが、サモハンはアクションでさらりと観客に「これはアクション映画とも功夫映画とも違う武侠映画ですよ」と知らせているわけですね。だから「ありえない動きがあったり、ワイヤーがふんだんに使われていても文句は言いなさんな、文句を言う奴は武侠を知らないという事ですよ」と。
そしてもうひとりのヒーロー、ラウ・チンワンが持つのは鞭、むち、ムチ!!
ひゃ~監督ありがとう!かっこいいい!
その、らうちんの鞭が最大限発揮される舞台が、これまた武侠もの功夫ものにお約束の制約つきのシチュ。竹の尖ったのコワイ。
このシーンではリウ・カイチー(廖啟智)がまたしても不憫な最期。ダンテ・ラムだけでない、香港の監督はみんな彼をいじめるのがお好きなようで。納得です。ここで憎らしい敵として登場するのが、シー・シンユー(釋延能)っす。やたら派手な武器がイカしてた!
かと思えばラストファイトのらうちんは鞭じゃありません。武侠物らしいラストファイトは嬉しくて笑っちゃいます。そしてあの一撃・・・ドニー・イェンファンの私はドラマ精武門を思い出してしまいました。そういやあれのディレクターの1人がベニー・チャンやったわ!
特別出演としてウー・ジンくんも出演していましたが、想像以上に出番多かったよ。ファイトするのはエディポン!この2人の関係と決着がまた武侠らしさに溢れておりました。ウー・ジンファンも必見。本当にいい男になったなぁ、嬉しい。
「コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝」は2017年、6月10日から東京・新宿武蔵野館、大阪・シネマート心斎橋ほか全国で順次公開。
こんにちわ!
この映画、私の去年のアジア映画ベスト1でした。
特に呉京が本当に良かったです。呉京は武打星と
して良い意味で凄味と貫禄がついて来ましたね。
大きなスクリーンで観るのが楽しみです(^_^)。
戦狼とSPL2でブレイクして、ウー・ジンくん今は自信に満ちていますね。俳優にとってブレイクって本当大切なんですね。演技もうまいし今後の作品も期待です。