出演
姜文(チアン・ウェン)
葛優(グォ・ヨウ)
周潤發(チョウ・ユンファ)
劉嘉玲(カリーナ・ラウ)
陳坤(チェン・クン)
音楽
久石譲
昨年の年末に公開されるや、大ヒットとなったチアン・ウェンの新作。
いや、とにかく、おもしろかった。
台詞がいいとか中国の革命後100年を凝縮したとか評論されていたりするのだけれど、そんなことよく分らなくてもおもしろいものは、おもしろいという見本のような映画。
簡単に説明すると、元革命家の匪賊(姜文)と詐欺師(葛優)と権力者(周潤發)の3人の男たちの戦いをユーモアと皮肉たっぷりに描いたエンターティメント映画。
その戦いから透けて見える正義と理想と矛盾と欺瞞と人間臭さ。
スタイリッシュな映像なのにエネルギーに満ちあふれていて、観ている方をグイグイ引っ張る力がある。
それにしても、中国には個性的な俳優がたくさんいるなぁと、つくづく思う。
詐欺師を演じた葛優(グォ・ヨウ)は初見でしたが非常によかった。
(※あとで調べたら、結構彼の出演作観てました。私のボンクラ度もさることながら、さすが名役者、全然風情が違う、ということにさせてください。すんません)
チョウ・ユンファも主役の一人として出演。ユンファは最近食指の動かない作品が多かったので、こういう映画に出てくれて、とても嬉しい。
この2人にチアン・ウェンを加えた3人が酒を酌み交わしながら円卓を囲む場面は、言葉のさっぱりわからない自分にも、腹をさぐりあう緊張感とほかの人間を出しぬこうとする狡猾さにあふれていて見入ってしまう。
それにしても、姜文相手に一歩も引けを取らない葛優とユンファって・・・お金を払った甲斐がある、そう思わせてくれる男たちです。
アクションあり派手な演出あり心理的な駆け引きあり、それだけでも見ていて興奮するうえに、対立構図、キャラクターの分りやすさから透けて見えるシニカルさとアイロニカルは、たとえ言葉がよくわからなくても言葉を超えて伝わってくる。
その部分が伝わると、こう、興奮した気持ちにピシャっと冷水をかけられたような気分になるのだけど、それが不快じゃなく、むしろサウナの水風呂みたいなもので、爽快に感じてしまうから不思議だ。
これで言葉が分ったら、そして肌で現代中国社会を感じていたら、これよりも何倍ももっと面白いわけですよね。すごい。中国で大ヒットしたのも頷ける。
それにしても、チアン・ウェン、彼は本当に素晴らしい。
映画作りはもちろん、この作品で検閲を通ったって意味でも。
そういえば「鬼が来た!」のときも検閲許可を得ないでカンヌに出して、そのうえに修正要請にも応えなかったために長い間、監督させてもらえなかった。そういう部分にも尊敬を集める要因があるんでしょうね。
続編も作られるとかいう噂ですが、もし作られるなら今度はどんな俳優を使うんだろう、姜文とは本当に次作が楽しみな映画人です。
さて、観終わった後に色々情報を調べていたら、おもしろい記事を見つけました。
これによると冒頭とラストに出てくる白馬が引く列車、馬列車(マーリエチュー)は馬列主義(マーリエチューイ)、つまりマルクス・レーニン主義という比喩だったのですねぇ。
ラスト、その馬列車を見送る姜文が寂しそうに見えたのは、そういうことだったのだと理解した次第。ほんと、日本語字幕でもう一度観てみたいものです。
譲子弾飛予告
譲子弾飛最終予告編
さらば復讐の狼たちよ(2010年・香港中国)←のちに日本語字幕で観たレビュー
いやはや、今作でもセクシーだったわ、マジで。