中国の映画は大きく分けて3種類。
中国内地の制作作品と、香港映画、そして中国と香港や台湾との合作映画。
大作になればなるほど、監督と主演クラスの男優を香港から選び、そして大陸のアイドル系男優を脇に置いて、同じく内地の美人女優で花を添え(むこうでは何故かそういう女優を花瓶という言い方をするのね、分るような分んないような)上海や北京のでかいスタジオで撮影、というパターンが、とても目立つ。
合作作品は内地と香港(一部広東省のように広東語を話す地域もある)そして台湾で公開されることが多いので、よく普通話と広東語の音声2バージョンが作られます。
そこで必要になってくるのが吹き替え。
両方を上手に話す俳優もたくさんいますが、なかにはドニー・イェン主演の最新作「武侠」のようにドニーさん広東語、金城君怪しい四川語、タンウエイさん普通話と、現場ではてんでバラバラの言葉で3人が一緒に芝居をしているということも特別不思議な話じゃないのかも(笑)。おもしろいなぁ、一回見てみたい、そんな現場。
いずれにしても役者としては慣れた言葉で演技をするほうがずっといい、ということなんでしょうね。そういうケースになると、本人にせよ他人にせよ、どうせあとで吹き替えるんだし。
さて、そこでドニーさんの吹き替えの話になります。
前回、「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」日本公開が残念ながら広東語バージョンでない、そしてその普通話吹き替えはイップマンシリーズの声優さんじゃなかった、と書きました。
(イップマンシリーズ日本版のDVDやBDは広東語の本人の声と大塚芳忠さんの日本語吹き替えのみで、日本版には普通話バージョンはなし)
やはりできるだけ本人の声で観たいですもん。基本、私、香港映画は広東語音声のある香港版を取り寄せます。当然この映画もソフトを持ってるのですが、普通話にセットアップしたことがない。
そこで何の気なしに夕べ、この映画を自宅でもう一度今度は普通話バージョンで観てみました(笑)。
すると、あれ、このマンダリンって葉問師父と同じ声じゃなかろうか、と、やっと気がついたのです。なんで試写室では違う人に聞こえたんだろう。広東語じゃないショックでそう聞こえたのか?自分。
吹き替えの事を中国語で「配音」声優のことは「配音演員」と書きます。
普通話音声にほとんど設定しないという私ですが、なぜかイップマンシリーズだけは時々観る。
この葉問師父の吹き替えをしている声優がなかなかいいんですわ。
初めてこの配音を聞いた時、実は途中まで、てっきりドニーさん本人の声だと思ってしまったほど雰囲気が(あくまで雰囲気)似てるし、なんといっても元の俳優のニュアンスを汲みとるのが結構うまい。
考えたら、中国に返還される前後までの香港映画自体、同録どころかまったく別人のアフレコが主流だった。
そして白人が登場しようがベトナム、タイ、フィリピンでロケしようが、登場する人間は全員広東語を喋るのがお約束(笑)。
しかもドニーさんなんて、映画のたびに違う声だったし。
急に興味が湧いたので手持ちのソフトを確認してみたこところ、ドニーファンがスクリーンで彼の本当の声を聞いたのは1998年公開の「COOL」が初めてのようで。(それ以前では、TVドラマの場合のみ本人の声)
「この声似てるな」とにかく、そう思ったら最後、普通話の葉問師父と陳真が同じ声なのかどうか、めっちゃ気になって気になって(笑)。
早速、「イップマン序章」と「イップマン」の香港DVDのエンドクレジット確認。なのに、そこには肝心な配音の名前がどこにもない。勿論、「レジェンド・オブ・フィスト」のほうも演員名はなし。
これはひょっとして、配音演員蔑ろ?
そこで最近の作品のクレジットも一通り観てみたけど、唯一クレジットがあったのは凌雲というドニーさんの配音員名が出た「関雲長」のみ。
「最強囍事」にもクレジットはなかったけど、この自分でもわかるくらい葉問とは完全に別の人。「処刑剣14BLADES」のアフレコは似てるようなないような、ちょっと微妙。てか、この映画、予告どころか本編にもドニーさんほとんど長い台詞ないじゃん(笑)。
しかも驚くことに、これらの映画のエンドロール、本来は重要なはずの配音演員など、なかったみたいに忘れられてるものばっかりです。
で、そうかと思えばドライバーとか現場茶水スタッフの名前はしっかりクレジットにあったりするんだぜ!本末転倒と思うのは自分だけか?絶対におかしいでしょ、それ(笑)。
んで、そんなことをチマチマしてるうちにハタと気がついた。目の前の箱は一体何のためにあるのだと(笑)。
さっそく検索してみました。「甄子丹 配音演員」で。
そしたら、あっさり出てきちゃった。イップマンシリーズの配音演員は陳浩(チェン・ハオ)という俳優さん。
そして「レジェンド・オブ・フィスト」もやはり同じ彼が吹き替えていました。この苦労した数時間をどうしてくれようか。とほほ。
しかもニュースによっては「甄子丹御用配音」とか思いっきり書かれてるし。ひ、ひょっとして常識!?
もちろん、甄子丹以外の有名どころも吹き替えてて、話題のゲームなどでも活躍してるお人。記事には陳浩老師なんて書かれる売れっ子人気声優なのでありました。
声とその演技から、ドニーさんより少し若いくらいの年齢なのかと想像していたら、この写真を見て2度驚き。めっさ若いやん!
もうこうなったら意地だ。ほかのドニー作品も調べてやる~。
「セブンソード」甄子丹(後にも先にも1本きり。つか、印象的なシーンはほとんどドニーさんの怪しい韓国語だしな。これって広東語版あるの?)※追記HEROとシャンハイナイトでも少し普通話喋ってました、失礼。
「かちこみ!ドラゴンタイガーゲート」杜燕歌(日本版にはこの普通話配音なし。本人の広東語のみ)
「エンプレス 運命の戦い」章劼(日本版DVDはこれと日本語吹き替えになる)
「画皮」章劼(香港版にもなぜか広東語配音なし。さっきのサイトに陳浩とあるけど、多分間違いじゃないかと。章劼のページを読んだら、彼もまた画皮の甄子丹を担当したとある。聞き比べた結果、エンプレスと同じ人じゃないかと思いました)
「処刑剣14BLADES」徐敏(日本公開したものは、残念ながらこの吹き替えバージョン。よってソフトが日本発売されても広東語バージョンはつかない可能性大)
「最強囍事」桂楠(広東語の方は当然ドニー本人。しかし日本公開ならびにソフト発売は難しそうです)
「関雲長」凌雲(香港版のみ広東語ありそちらも本人。姜文の広東語配音、実はラウ・チンが担当したそうですが姜文のあの迫力にはちと及ばず)
セブンソード以降、あとはみんな陳浩。
だから激しく何なんだって情報(笑)。
ドラゴンタイガーゲート、つーか龍虎門なんか、はるか大昔に買ったDVDなのに今日初めて普通話で観たわぁ~(笑)。こうやって一挙に聞いてみると、やっぱり老師の声がドニーさんに一番合ってると思う、自分は。
さて、注目のドニー・イェン最新作の「武侠」ですが、予告で聞こえてくるあの声も当然ながら陳浩老師。(←最初の数行にその記述あり。記事の中身は配音演員は結構冷遇されてるって可哀そうなネタ)いやぁエエ声ですわ、当然本人の喋る広東語も楽しみですが、それだと金城君の四川語が聞けないので、この普通話版も同じくらいに楽しみです。早くソフト発売にならんかなぁ~。
と、お休みの今日は予期せぬドニー映画普通話配音祭りになってしまいました。
さんざん好きなシーンを陳浩老師の声でマッハ連続上映したからでしょうか、一気に親近感が湧き、にわかに彼のファンになりそうです(笑)。
いっそのこと「関雲長」もこの人に配音してほしかったなぁ。
でも関羽だしなぁ、古装物の演技ができる人がいいと判断されちゃったかな。
6本も吹き替えしてるから相当呼吸は掴んでる気がする。こういうのって大切ですよね。「武侠」では一層ぐっとくる普通話の劉金喜と唐龍が観られますように。
最後にまたまた余談ですが、この件で、ものごっつい久しぶりに「セブンソード」を観たら、レオン・ライから美味しいとこを横取りするまさに直前のシーン。
由龍剣を持った孫紅雷と鎖をつけたまま素手で闘うドニーさんを見ていて、「お、カニばさみくるー?・・・・こねー!」「おい、ここは飛びつき腕十字やろ!はやくはやく」とことごとく、そのタイミングを逃した(SPL以降、古い作品を見るとそう思うことが時々ある)ロン毛の楚昭南に少しイラっときたのはここだけの秘密(笑)。
アクション監督は特別出演もした劉家良師父。武術指導に熊欣欣と董瑋アシスタントが、ものすごい豪華すぎる。さすが大師傅です。
それにしても、私のこの執念と集中力をもう少し仕事とか普段の生活とかに活かせないものでしょうか。ま、楽しんだからいいのか。
また誰にも披露することのない、たとえ披露したところで感心も共感もされない(笑)ウンチクだけがこうして増えてゆくわけでございますね。
おまけ
なんと甄子丹のCMも老師が配音していたりする
一緒に出演しているのは、谷垣さんとともに甄子丹動作導演作のほとんどに参加している シンガポール人の厳華(イム・ワー)さん。
追記:
「孫文の義士団」クレジットにも、どの役かまではなかったけど、名前が載ってました。
甄子丹の声はやはり葉問と同じ陳浩。賭博場のシーンなんかまったく違和感なし!
(日本で発売されたソフトは、この陳浩版普通話と、東地宏樹さんの日本語吹き替えのみ)
時間が経ってからの追記その2:
実はその陳浩さんの珍しく動いてる姿を偶然に見つけました。しかも、かなり魅力的な内容で。
タイトルは「声優陳浩-葉問(甄子丹)とスポンジボブの会話」
この人、なんとアニメのスポンジボブの声も担当してたんですわ。
そこでこのネタ(笑)
配音员陈浩-叶问(甄子丹)和海绵宝宝对话
これは自分的には相当アガる映像。1人2役!しかもルイス・ファンがスポンジボブ。
もし私が彼の友人なら飲み会の度に「葉問やってくれ、ほら、あのあそこの台詞!」って無茶ブリするだろうな。彼もひょっとしたら、そういう失礼な奴にやらされているかもしれません。
耳元で聞いてみたいぞ。
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