フラメンコ@日比谷野音

先週末、友人のAちゃんが誘ってくれたフラメンコを観に日比谷野音に行ってきました。
実はつい最近、アメリカンバレエシアターの公演を仕事で断念したばかり。んもー絶対に行くんだから!という気合充分。

観に行ったのは小松原庸子(ようこ)スペイン舞踊団第41回公演「真夏の夜のフラメンコ」
小松原庸子さんというと、日本のフラメンコ界の礎を築いた第一人者。
常磐津勝蔵の娘として(兄は俳優菅原謙次さん)幼いころから日本舞踊や三味線に親しみ、クラシックバレエも習ったのちに女優として俳優座に。
そんな小松原さんが伝説のバイラオーラ(女性の踊り手)ピラール・ロペス日本公演に衝撃を受けたのは1959年。その後スペインに渡り、修行を重ねて帰国後、小松原庸子スペイン舞踊研究所そして舞踊団を結成し、以来多くの舞踊手を育ててきました。

今回は東日本大震災復興支援チャリティーフェスティバルと銘打って、クリスティーナ・オヨス、マロノ・マリン、アントニオ・カナレスなどなどフラメンコ界の重鎮ともいえるような豪華な顔ぶれがゲスト。皆、日本のためにとボランティアで来日してくれたのだそう。
(残念ながらアントニオ・マルケスは怪我のため来られず)

それほどフラメンコに明るくなくても、クリスティーナ・オヨスの名を聞いたことのある人は多いでしょう。
あのアントニオ・ガデスという超カリスマバイラオール(男性の踊り手)の長年の相手役であり、カルロス・サウラ監督の映画「血の婚礼」や「カルメン」などにもガデスとともに出演(幸い私は両方とも当時映画館で見ることができました)、バルセロナ五輪の閉会式で堂々と踊りを披露したスペインの宝のおひとりです。

映画「カルメン」より
バルセロナ五輪閉会式でのクリスティーナ・オヨス

お天気大丈夫かなぁ、と心配したものの友人も私も超晴れ女。
未明の雨も上がり「ま、降らんでしょう」と根拠のない自信を持つふたりです。
野音の湿った石のベンチも持参した阪神タイガースと楽天イーグルスのロゴ入り折りたたみクッションで解決。「用意がいい、えらい!」と誉められてえっへん。
こちとら野球観戦で雨の準備は慣れておりますよ。

真夏だというのに、このところ涼しい日が続いていて、野外音楽堂を吹き抜ける風も心地よい。ほんの数日前に申し込んだチケットは割引価格でなんと2000円。当然一番後ろの席でしたが、これくらいのキャパなら別に問題ないし、なによりこのメンバーをそんなお得な価格で見られるなんてビックリするくらいラッキー。

さて、そんななか観たフラメンコは本当に素晴らしかった。
舞踊団のメンバーはもちろんのこと、アントニオ・カナレスのシギリージャでは嘆きの歌声にのせたそのサパテアード(靴音)から怒りや悲しみが強く伝わってきて、こちらもつい、3月11日からの様々なことを思い出し胸がつまってしまいました。

アントニオ・カナレスのシギリージャ

一転、小松原さんが日本人として初めての生徒だったという御大、ロマノ・マリンのアグレリアスには生きる喜びがあふれている。
正確な年齢は存じませんが、一見したところ結構なお歳に思えました。
それ故でしょうか、若い舞踊手と楽しそうに踊る姿には人生に対しての深い愛情と、同時に彼らに対する暖かい眼差しがにじみ出ている気がして心から楽しかった。

1989年のマロノ・マリン

そして終盤では今回のチャリティショーのために彼女自身が振りつけたブラセオ・ボル・ハポンをクリスティーナ・オヨスが披露する。
ハポンはスペイン語で日本、ブラセオとはフラメンコ用語で腕の動きを意味します。

1946年生まれの彼女は、もちろん激しい踊りではありませんでしたが、そのタイトルの通り腕と上半身の動作を中心に、瞬時にして空間すべてを支配してしまいます。
私たちと同じ手の大きさなはずなのに、遠くからでもその手がまるで巨大な何かのように見えてくるから不思議。なんという存在感でしょうか。

1974年のクリスティーナ・オヨスとアントニオ・ガデス

実に楽しくて、気分がよくて、公演中何度も何度もたくさんのスタオベを繰り返してしまいました。

終演後、友人と有楽町で食事をしたのですが、その席で話題になったのは、これだけのゲストを集めることが出来る小松原庸子さんというのは凄いお人なんだな、ということ。
途中、彼女がマイクを持って「このような人達が日本のためにわざわざ来日してくださった、日本を思う気持ちに心から感謝します」と涙交じりに語りました。
調べてみると、ロマノさんのレッスンを受けたことのある日本の舞踊手はとても多いのですね。もちろんオヨスさんも何度も公演で来日しているし、日本でワークショップを開いたりもしている。
一方カナレスさんはこのステージの後、宮城を旅行するとスペインのサイトで読みました。公演で訪れたあの場所にもう一度行きたいのだとか。

日本と縁の深い人達であると同時に、それはやはり小松原さんの実績、そしてお人柄が結実したものだったんでしょうねぇ、というのが私たちふたりのなかでの感想になりました。

さて、帰宅してすぐさま、色々フラメンコの事について調べてしまった凝り性の私(笑)。
ロマノさんのアレグリアスがとても好きになったので、色々な人のアレグリアスを捜してしまいました。せっかくなのでここに少し残しておきます。

ホアキン・グリロ
エバ・ジェルバブエナ
ダニエル・ナバーロ
メルセデス・ルイス
ファルキート
マリオ・マジャ&カルメン・モーラ

 

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